負けれぬ思いを刻んで
「そうか、『嫉妬の監察機』を使って…」
「はい、『強欲の泉』はここから南の方向です。半日もあれば着く所にあります」
『強欲の泉』自体は王都にあるとの話だったが、範囲が広く、特定も難しかった。加えて、石や木で出来た武器など戦力としても問題があった。
しかし、これらの問題が解消された今『強欲の泉』を奪還せんと動き出す。
「分かった、明後日の朝『強欲の泉』に向けて出発し、明々後日仕掛けよう。出撃者はこちらでリストアップしておく…ヒロタカも今日はゆっくり休みたまえ」
「早いですね」
「あぁ…善は急げだ。それに、『強欲の泉』を奪還出来ればこの荒れた大地も元に戻る。そうすれば作物も育ち、希望も灯る」
「そうですね…準備、しておきます」
「あぁ、頼りにしてるぞヒロタカ」
―――――
夜は明けていき、いよいよ『強欲の泉』を奪還せんと村の兵を集め、目的の場所へと歩みだしていた。
「いつもより多くないですか?」
ぞろぞろと並んで歩く兵を見て、ヒロタカがアリステラに呟く。ヒロタカの呟きはこの兵の数を村から持ってきては村が襲われた時を危惧してのものだ。村の主な実力者であるアリステラ、メーニン、ゴルドン、ヒロタカが全員出陣している。
「あぁ、恐らく今まで我々がいない間に襲撃されていたのは『嫉妬の監察機』による力が大きい。しかし、『嫉妬の監察機』は今や我々の手だ」
アリステラはヒロタカの言葉に冷静に返す。さらに、アリステラは続けて
「『嫉妬の監察機』で確認したところ『強欲の泉』の周りは厳重に守られていた。大事を取って兵を村に残していたが…正直、これでも私は不安だ…」
「そうですか…いや…そこの判断を任せたのは俺です。すみません、生意気言って」
「気にするな、お前の意見は真っ当なものだ」
「『強欲の泉』…奴らにとってそんなに重要なものなのか…」
「そうだな…先ずこの荒れ果てた土が元に戻る。そうすれば、我々も作物などを栽培出来る。ここまではいいな?」
「はい、『強欲の泉』の一番の奪還理由はそこですから」
「あぁ、だがそれに加えて私は奴らに封印された本…それに秘密が隠されていると踏んでいる」
「あの、黒いモヤがかかった…あー、言ってましたねなんとなく覚えてますよ」
かつて、ヒロタカとアリステラが書庫でした会話をヒロタカはぼんやりと思い出す。確か、あの本の封印は『強欲の泉』の力で解除出来たはずだ。
「つまり、あの本にやつらの弱点が…?」
「弱点ではなくとも、奴らにとって隠したい情報なのだろう。『強欲の泉』をここまで厳重に固めている相応の理由があの本にあると思わないか?」
「言われてみれば…確かに…」
アリステラによれば『強欲の泉』は他の7種の神器とは比べ物にならないほど厳重らしい。
それは、荒れた土の修復による食糧問題の解消や回復薬の強化だけでは説明がつかない。
あの本に秘密があるとアリステラとヒロタカは確信した。
そして、この戦いは負けられないものだと、運命を分かつものだと胸に刻み込んだ。
そんな、会話をアリステラとしていると『強欲の泉』がある王都近辺に到着した。予定ではここで1泊野宿をし、明日仕掛ける。
ヒロタカは焚いた火を前に自身の短剣を眺める。ふと、疑問を抱いた。
これを持っていた者は俺に何を託したのだろうか…
と。




