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異世界に誘拐されました。  作者: 自然の輪廻
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たった一人の墓標

 アリシアとの激戦から約一ヶ月ほどが経った。

 毒を盛られたヒロタカの体調も順調に回復し、前線に復帰できるほど治癒出来た。

 皮肉なことに解毒に役立ったのはアリシアがかつてまとめ上げた毒に関するメモだ。それがなければヒロタカは恐らくこの世にいなかっただろう。


 そうして、ヒロタカはアリステラにあることを伝えようと、アリステラを探し、村のはずれにある墓場に訪れた。だが、アリステラは墓地から少し離れたところにいた。


「あ、アリステラさん。ここに居たんですね」


「ヒロタカか…体は大丈夫なのか?」


「はい、見ての通りですよ」


 そう言って、ヒロタカはその場で二回ほどジャンプしてみせる。その体は軽そうに跳ねた。


 アリステラから見てもヒロタカの顔色は良い、そのことにアリステラは安堵する。


「何してるんですか?」


 積もった土と穴を見て、ヒロタカは疑問を投げかける。


「−−アリシアの墓を作ろうと思ってな…」


 皆と同じ場所には置けないが、それでも作りたかった。と寂しそうな表情で語る。


「俺にも拝ませて下さい」


「いいのか?」


「はい」


 裏切る前のアリシアにはお世話になった。何度も怪我をしたヒロタカを治したのはアリシアだ。アリシアが居なかったらここまで来ることが出来なかっただろう。

 だからこそ、裏切ったという事実が胸を締め付ける。


 ある程度のところまで掘り終え、アリステラはアリシアを優しく抱え、穴にそっと置く。

 そうして、掘り起こした土を静かに被せていくのだった。


「これでよし…っと」


 最後に木で作られた簡素な十字架をたてて、アリシアの墓が完成する。

 そうして、ヒロタカはアリステラの隣に立ち、両手を合わせる。


「……」


「……」


 ただ、静かに二人は黙祷を捧げる。

 諮らずも二人は同時に顔をあげた。


「なぁ…ヒロタカ…」


「なんですか…?」


「少し…胸を貸りる…」


 そう言って、アリステラはそっと頭をヒロタカの胸に押し付ける。

 ただ、アリステラのすすり泣く音がヒロタカの耳に入っていた。


 破られた誓いも、守れなかった妹のことを全て涙に乗せて洗い流した。

 そして…アリステラは…


「よし!ありがとう…ヒロタカ。スッキリしたよ」


「それは、よかったです」


 アリステラの寂しそうな目はいつもの、否…いつも以上にかっこいい目をしていた。


「それで、ヒロタカはなんで私を探してたんだ?」


「あぁ…そうだった。忘れるところでした」


 そう、ヒロタカは息をつく。そして…


「『強欲の泉』の場所が割れました。仕掛けますよ」


 またしても、反逆の駒を進めるのだった。

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