名前
俺が奴に拳をぶつけると、そのまま奴はダウンした。
「ウルガレムを一発で…すごいな…」
「そんな、強いんすか?こいつ?」
「少なくとも一般人では太刀打ち出来ないよ」
ふむ、と1拍おいて彼女は言葉を続ける。
「やはり、君は私たちの村に来てくれ。それと村の中の騎士団に入ってもらいたい。戦力が増えるのはこちらとしてもありがたい」
「それはこっちから願いたい位ですね、戦力…になるかどうかは分かりませんが尽力しますよ」
「そういえば名を名乗ってなかったな、私はアリステラ・ハルトマン・リースだ」
「俺はイチガヤ・ヒロタカです」
「そうか、イチガヤか…いい名前だ」
「え?」
「え?」
あぁ、そうか…そういうことか
「すみません、うちの故郷では家名・名前の順で言うので…」
「そうか、それはすまなかったな…改めてよろしく頼むよヒロタカ」
そうして、アリステラは手を差し出してきた。俺はそれを握り。
「こちらこそよろしくお願いします」
と言ったのだった。
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「さて、村に案内しようと思うのだが…」
とアリステラはそう言うが…
「うん!大丈夫だろう!」
「何がっすか?」
「いや、君はかなり戦えるだろうと思ってな、このままこの辺りの探索を続けてようと思ってな」
「まぁ、分かりました。探索ついでに色々教えて下さい」
「あぁ、いいだろう」
と言ってヒロタカ達は歩き始めた。
さて、何から聞こうか…気になっていることねぇ…
「なんでこんなことになってるんですか?」
「ちょっと待て、分からないの次元が違い過ぎる。君はどこからわからないんだ?」
「どこからって言われたら全部です」
「君は記憶喪失なのか?いやしかし故郷のことは覚えていたし…うーむ…」
アリステラは困惑しているそして…
「まぁ、いっか」
諦めやがった!!
「それで、こんなことになってる理由か…100年前大厄災が起こったとしか…」
「大厄災?」
「あぁ、詳しくはわからないんだ…なんせ100年前だからな」
「まぁ、しょうがないですね当時の記録とか残ってないんですか?」
「厄災前の文献はあるが、厄災についてのものはないな、あまりにも急で犠牲者も多かったんだと思う…後世に伝えるのを忘れるほどに…」
人の言葉でも繫いでいけると思うのだが…深く考えるのはやめにした。
「こんな状況だと食料も大変そうですね」
「実際大変だよ、肉は魔獣の肉があるが…それ以外がな…」
魔獣の肉って食えるのか…え?あいつ食うの?旨いの?
そんなこと言ってる場合ではない位食糧難なんだろうが味が気になってしまう。
「まぁ、こんなもんすかね…後はその時々で…」
「あぁ、分かった――っと…なんだここは?」
ヒロタカの質問が終わり、前を見るとそこにはボロボロの柵があった。
「めちゃくちゃ、腐ってんな…少し触れただすげー崩れるし…」
「ふむ、この先の土は他のとこよりも少し上質だな…畑だったのだろうか…」
「村には…無理か…」
そもそも、畑が作れるほどの土を二人で持ってけるわけもないし、持っていったところで育つかどうかも怪しい…
そう考え、ふと前を見ると少し遠くに四角い石が見える。
すたすたとヒロタカ達はそこまで行き…
「誰かの墓か?」
「うむ…」
文字が読めず誰の墓か分からない。––が、
「『この下を掘れ』?」
と日本語で書かれていた。