朝焼けの逃避
襲いかかってくる魔獣達を次々に倒していく。だが、倒しても倒しても減るどころか次々に集結してきて増えていく一方だ。
「くっそ…キリがねぇ…」
変に生暖かくてドロッとして血が手にべったりとくっつく。気持ち悪い。
手首をスナップさせて、血を振り払う。全ては落とせなかったがさっきよりかはマシだろう。
「––ッ!」
「私が見てるだけだと思うか?」
奴の手はハンマーの様な形に変形しており、短剣で受け止めたが重量に耐えきれず吹き飛ばされる。
着地時点には多種多様な魔獣が待ち構えていた。
「《エマージェンシー・ストーム》」
ヒロタカを中心に風が渦巻き、魔獣達を吹き飛ばす。
「サンキュー、メーニン」
「ま、こんなもんよ」
メーニンが「ふふん」と鳴らし誇らしげにする。
「あいつ…あんな腕してなかったよな…?」
「はっ!あいつ呼ばわりか」
「だって、名前知らねぇし」
「おっと、これは失礼。私はクランスだ…これで知っただろう?ヒロタカ」
「どうやら、俺は名乗る必要無さそうだ」
クランスはフン!と鼻を荒げ、腕を元の形に戻す。
どうやら、それが奴の能力らしい。
「体を変幻自在に変えられるのか…」
ヒロタカは素早く移動し、クランスの間合いに入り込み、短剣で斬りかかる。
だが、それは意図も容易く防がれる。今度は腕を剣の形にしたようだ。
その後、ヒロタカとクランスはお互いに斬り合いをする。金属と金属が甲高い音を鳴らす。
優勢なのはクランスだ。ヒロタカの刃はクランスに届かない。
重い一撃がヒロタカの短剣に伝わり、隙を作る。その間にヒロタカの胸が切り裂かれた。
「がぁぉぁ…!」
「ヒロタカ君…!」
周りの魔獣を退けていたメーニンがヒロタカに駆け寄る。
意識はあるが、血が大量に出血している。このままでは危険だ。
「ヒロタカ君…確認するけど『嫉妬の観察機』が手に入れるために来たのよね?」
「あ、あぁ…そうだ」
「喋らないで!」
なんと理不尽な
「《ウィンド・センド》」
メーニンは魔法で風を起こし、『嫉妬の観察機』を近くに寄せる。そして、ヒロタカを担ぎ上げ、『嫉妬の観察機』を抱える。
「何…する、気だ…?」
「逃げるわよ」
そうして、足に風の魔法をかけてメーニンは素早くその場から立ち去った。
「なっ…!待て!」
「敵に待てと言われて待つ馬鹿がどこにいるのよ!アリステラ!ゴルドン!帰るわよ!」
「――ッ!分かった。すぐ行こう」
アリステラはメーニンの言葉に驚いたがすぐ状況を察知し、行動に移した。ゴルドンも同じだ。
「逃がさないぞ!」
鬼の形相でクランスが追いかけてくる。それも背中をジェットパックのような形に変形させて。
「まずい…このままじゃ追い付かれるぞ!」
「大丈夫、変に変形させたのを後悔させてやるわ!《サイクロンストーム》」
クランスの周りを巨大な風が渦巻く。
地に足を着けず低空飛行をしていたクランスはその渦の思うがままに四方八方へと飛び回る。
そうして、メーニン達はクランスを撒いて村へ戻るのだった。




