絶望の夜明け
『7種の神器』を奪還し、ヒロタカ達は今、帰路に着いていた。
「アリステラさん…奪還した『7種の神器』はどういう効果なんですか?」
「あぁ、『憤怒の種改造』というやつで、種の性質を変えることが出来るらしい」
アリステラはその後、詳しい説明をヒロタカに話す。どうやら品種改良のようなことが出来るらしい。
「つまり、種をこの土に合わせた品種にすれば…」
「あぁ、野菜などを育てることが出来る…!」
アリステラの顔に笑みが浮かぶ。アリステラと過ごしてかなりの時間がたつが笑みを見たのはヒロタカにとって初めてかもしれない。
「早く帰って皆に知らせたいですね」
ヒロタカはそうアリステラに微笑み返す。
「あぁ、そうだな」
心なしかアリステラの足並みが速くなる。ヒロタカや兵士はそのスピードに合わせて歩いていく。
不思議なほどに魔獣には遭遇せず、ヒロタカ達は帰路を歩いていくのだった。
これから起こる絶望を知らずに。
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「――ッ!村の方から魔力の気配…!?」
「メーニン、どういうことだ?」
「そのまんまの意味よ、この量の魔力を使える人は置いてきてない…」
その言葉を聞き、ヒロタカ達は考える前に足が素早く村の方向へ走る。
後ろの騎士達は最初は戸惑っていたがバケツリレー方式で事情が伝わり、我先にと進む。
次第に、村の近くまで着くと村人達の耳を塞ぎたくなる様な悲鳴が聞こえてくる。
下唇を噛み劣等感や怒りを必死に抑える。
そうして、村に着いた途端合図も無しにヒロタカ達は散り散りに村全体に広がった。
ヒロタカは熊や犬、その他諸々の形をした魔獣達を次々と斬り裂いていく。
無事だった人には騎士達の位置を確認し近くの山への道を指示していく。恐らく、ほとんどの人が避難し終えたであろう。
ヒロタカは辺りを見渡し村人と魔獣を探す。
――ッ!アリシア――?
遠くに黒い翼を生やした人型の魔獣に襲われているアリシアが見えた。
「――ッ!アリシア!」
短剣を振りかぶり後ろから奴に斬りかかる。
「あらぁもう、後ろから襲うなんてイケないじゃない」
「知るか、アリシア…大丈夫か?」
「は…はい…大、丈夫…です…」
パッと見、怪我は無さそうだ。アリシアの場合治癒魔法出来るからある程度は大丈夫だろう。
「向こうの山に村の人達を避難させてある。怪我人もいるから治癒してくれ」
「分かりました」
アリシアに耳打ちし、ヒロタカは目の前の女の魔獣を睨む。
「留守中にやってくれたじゃねぇか」
「留守にしてる方が悪いわよぉ、思ってるより早く帰ってきたけどねぇ」
ねっとりとした話し方が鼻につく野郎だ。
ヒロタカは後ろを確認し、アリシアが既に逃げたか確認する。そこにアリシアの姿は無かった。思いっきり暴れられる。
地を蹴り、短剣を振りかぶり奴に斬りかかる。が、その短剣は魔法で作られた赤い槍によって受け止められ、お互いがお互いを睨む。
そうして、「フン!」と鼻を鳴らしながら奴はヒロタカを弾き飛ばした。
ヒロタカの体はしばらくの間宙を舞い、地面に叩きつけられる。なんとか受け身をして勢いを殺しながら慣性を足でブレーキする。
「あらぁ、貴方ぁ…中々やるじゃない?お名前はぁ?」
「ヒロタカだ」
「あらそう、私も名乗って無かったわね。私はスカーレット・イーヴィルよん」
「誰からつけられたんだか…」
そんなやりとりをしていると
「《エマージェンシー・サイクロン》」
突如として風の集まった鉄球の様な球がスカーレット・イーヴィルを襲う。
地に足を着かず、浮遊していたスカーレット・イーヴィルだったが《エマージェンシー・サイクロン》に当たる、地を転がる。
「ぐぎぎ…まぁいいわ目的は果たしたもの…」
そう言い、スカーレット・イーヴィルは翼を広げ、遠くへ飛んで行った。
「あっ…チッ、逃したか」
「ヒロタカ、さっきの奴は?」
メーニンがヒロタカの前に寄り質問をする。やはり《エマージェンシー・サイクロン》を打ったのはメーニンだった。
「スカーレット・イーヴィルと名乗る魔獣…恐らく今回の主犯格」
「成る程ね…怪我は?」
「そんなにあいつと戦ったわけじゃないから大丈夫だ。助かったよ」
だが、スカーレット・イーヴィルの言っていた目的とはなんだったのだろうか…
上る朝日を見て眠気と共に胸にしまった。




