夜風が心地よいから
優しい夜風がヒロタカの頭をやわらかに撫でる。
「はぁ…なーんにも出来なかった。それどころか、足を引っ張ってしまった…」
そんなことを一人呟きあてもなくただ歩いて行く。村の建物がつらつらと並んでいて、村の広さを改めて実感する。そういえばあまり村を歩いていなかったな。
「へぇ…この世界からも星は見えるんだな」
空を見上げると無数の星がゴミ箱をぶち撒けたかのように広がっていた。ヒロタカはそれに見惚れ、ただ呆然と眺めていた。
そうか、街灯とかが無いとこんなに星って綺麗なんだ…
「あれ?ヒロタカさん?どうしてこんなところに?」
「あぁ、アリシアか…少し寝れなくてな…夜風に当たって少し考え事を…」
「そうですか…怪我は大丈夫そうですか?」
「腕が痛むくらいかな…これ折れてるの?」
「はい、折れてました」
ヒロタカの質問にアリシアが正直に答える。やはり折れていたようだ。
「すまんな、迷惑かけて…」
「迷惑なんて思ってませんよ。お姉ちゃんとゴルドンさんが駆け込んできた時は流石に驚きましたが」
「ゴルドンが…?」
「はい、あんな感じなので誤解されやすいですが。誰にも負けないくらい仲間思いですよ。あのことも関係していると思いますが」
「あのこと…?」
ゴルドンの過去に何かあったのだろうか?
「ゴルドンさんは昔、奥さんを亡くしてるんですよ。左腕と一緒に…あの時は驚きましたよ、子供と女の人抱えた片腕で血まみれでしたし」
「子供もいるのか…」
「はい、ソフィアちゃんって言うんです。かわいいですよ。確か今年で5歳だったかな」
あのゴルドンに子供がいるなんて驚きだ。それに、そんな過去があった事も。
「死ぬんじゃねぇぞ」と言ってきたのも納得だ。
思えば、ヒロタカはアリステラやアリシアの事でさえも知らなかった。
「なぁ…答えたくなかったら無視してもらって構わないんだが…」
「––?何です?」
「何で、アリステラさんには間に『ハルトマン』が付いて、アリシアには付いて無いんだ?」
「簡単に言えばお姉ちゃんの方が『優秀』だからです」
戦ってる場所が違うのに、アリステラさんの方が優秀…ねぇ…
「私達リース家は代々『ハルトマン』という名を名前に受け継いでいました。きょうだいがいた場合はより優秀な方に…」
「それで、アリステラさんの方に受け継がれたと…」
「ん、そういうこと」
形に残る様にどちらが優秀か残ると辛いよな…
「残酷な事をするもんだな」
「ま、気にしていても仕方ないしね。くよくよせず自分のやるべきことをやるわ。だから、ヒロタカさんも」
「気付いてたか」
「体だけでなく心も治療できるのよん。それは、魔法じゃなくてね。それじゃ、私はもう寝ますね。おやすみなさい、ヒロタカさん」
「あぁ、おやすみ」
アリシアはヒロタカに背中を見せて、自部屋に戻ろうとする。
「アリシア…!」
「––?」
「ありがとうな」
ヒロタカのモヤモヤが晴れ、今夜はぐっすり眠れそうだと心地良い夜風が語りかけていた。
骨折れたことないから折れた時の表現が分からんから適当に書いてます。




