暗い洞窟内の取引、上手くは行かず
迷い込んだ洞窟はかなり入り組んでおり、その時々で魔獣が襲いかかる。
「なかなか無いな…怠惰の武器精製…」
そんな簡単に見つけられるようなものでも無いと分かってはいるのだか、かなり洞窟をさ迷っている。見つけれたとしても帰れるかどうか未知数だ。
ヒロタカは歩を進め、土に足の形がくっきりと残る。
そうして、ヒロタカが歩いていると突如として轟音が洞窟内に反響した。
「――ッ!どこかで戦ってるのか?」
音はかなり大きかった。それは激しい戦いを意味している。一刻も早く向かわなければならない。
「音は向こうからしたよな…?」
音のした方へ足を足早に進める。
そうして、一つのドーム型の空洞を見つけた。
「アリステラさん!――ッ」
「ヒロ…タカ…」
そこにはふた回りもでかい二足歩行の黄色い毛並みをした虎がアリステラの首を掴んでいた。
「おぉ、そいつが噂のヒロタカっちゅうやつか…アイントスパイドを倒したと聞いたぜ?」
「いいから、その手を離してくれないか」
「そいつぁ、出来ねぇなぁ…誰が敵の首を離してくれと敵の言うことを聞くんだ?――!いいこと思い付いた」
それはそう、と内心思う。
「で、何を思い付いたってんだ?」
「簡単な話だ、その短剣を寄越せそしたらこいつの命助けてやるよ」
「ヒロタカ…ダメだ…渡…」
「口突っ込むんじゃねぇ…!」
そう言うと、やつは指に力を入れ、アリステラの首をきつく締める。
「グァ………」
「アリステラさん!」
「どうするよ?ボウズ。短剣1本で命一つ助かるんだ。賢い選択をしろよ?」
「――、わかったその話乗ろう」
「ニヒッ!そうこなくっちゃな!ホレ、寄越せ」
そう言ってやつは腕を出す。ヒロタカは一歩前進し近づいていく。
「ヒロ…タカ…」
その時…背筋に悪寒が走った。普通に考えれば武器を失った後にヒロタカを攻撃する。自分かアリステラを選ぶという取引に見える。
だが、ヒロタカは別の予感がしたのだ。
「――!!」
そう思うと、ヒロタカの足は不思議と地を蹴り、奴の手首を切っていた。
「ガッ――」と喉を鳴らし、奴はアリステラを離す。
「テメェ…話が違うじゃねぇか…!」
「トレードする時は自分のものを交換に差し出すんだ。アリステラさんはあんたのものじゃねぇ」
「そうかよ…そっちがその気なら…テメェらまとめてぶっ殺してやるよ…!」