懐かしき転移術式
「で、その『怠惰の武器精製』とやらがあるのがこの洞窟ってわけか…」
「あぁ、だがやはり魔獣の気配はぴんぴんする。用心して行くぞ」
「で、なんで今回は俺が呼ばれたんだ?」
「見ての通り洞窟だ、メーニンと相性は悪いだろう。消去法だよ」
「そうかい」
そういってゴルドンは大きな斧を担ぎ、洞窟の中へ入っていく。
「俺たちも行くか」
「あぁ」
ゴルドンの後に続いて、ヒロタカ、アリステラも入っていく。
今のところは魔獣も現れておらず、ヒロタカのいた世界でもありそうな程度の洞窟だ。
だからこそ…
「怪しいな…」
「ヒロタカもそう思うか…」
「奇妙なまでに何もない、それに一本道…進まされる気がして気持ち悪い」
「ちっ、『怠惰の武器精製』とやらはどこだよ?」
「そう簡単に見つけられるわけないだろ」
「それもそうか…」
カツン、カツンと洞窟内に足音が反響する。
その時だった――――
「――!?術式か!?」
アリステラ、ヒロタカ、ゴルドン、それぞれの足元に術式が描かれる。
「ヒロタ―――」
アリステラの声が途切れ、まばたきする間も無く視界が黒く染まった。
―――――――――――――――――――――――
「――ッ!?」
カッと目を開き辺りを見渡す。そこにはアリステラの影もゴルドンの影もなく、代わりに無数のウルガレムの影に囲まれていた。
「Many a devil dog drive away a human…多勢に無勢だな…」
ウルガレムはこちらを睨み、緊張がはしる。喉仏に汗が垂れるのを感じる。
「いいぜ…かかってこいよ!!」
ヒロタカの言葉を合図にウルガレムが一斉に飛びかかる。
ヒロタカは体制を低くし、ウルガレムらの隙間を通り抜ける。
そして、すぐさま後ろに振り返りウルガレムに斬りかかる。
赤くドス黒いドロドロした液体が辺りに散布する。
「はっ!」
さらに、近くに居たウルガレムを蹴り上げ天井に激突させる。そのウルガレムは動かなくなっていた。
「チッ、まだ二匹かよ…」
じっと辺りを見渡す。動いているのはざっと六匹ほどだ。
ヒロタカは壁を蹴り、宙を舞いウルガレムに狙いを定めて斬りかかる。
そうして、逆手から持ち替え、地を抉る様に踏み込む。
連鎖的にウルガレムを斬り、残りを一気に退治した。
「さて、アリステラさん達と怠惰武器精製探すか」