異世界の龍伝説
「ほぉ…ここが例の山か…」
そう言い、ヒロタカは山を見上げる。
すると、一匹の黒い龍が空を飛んでいるのが見えた。
「うおー、あいつが龍か」
「怖じ気づいたの?」
メーニンがそう、からかうように言う。
「んーや、そうでもない」
と言うか、厨二心くすぐられてワクワクしてる自分がいる。治っとけってこっち来る前に。
「ヒロタカ、ホントに私なのか?」
「しょうがないでしょ、ジャンケンで負けたんですから」
「だが…」
「大丈夫、死にませんよ」
「不安だ」
ジャンケンで負けたアリステラは鉄回収係だ。まぁ、ヒロタカは素早く動けるし、メーニンは魔法で遠くから攻撃できるため適任だとは思うが。
「さて、いくか…」
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山に足を踏み入れ、土に足跡をつけていく。
その土は思っているより柔らかく、足が呑まれていくような感覚だ。
「じゃあ…私はこっちだから…」
「はい、回収し終えたらその花火ぶっぱなして下さい」
「あぁ、気を付けてくれ」
「まかせろり」
そうして、アリステラは木々の間に消える。
「さて、反逆の一歩目と洒落込みますか」
そう言って、ヒロタカは迫り来る龍を睨む。
龍は大口を開け、ヒロタカに襲い掛かる。
「うおっ!」
龍の突進を寸前で体が引っ張られ宙を舞い避ける。
「やっぱ慣れないな、もっと優しく出来ないの?」
「わがまま言わないの!だったら自分で飛びなさい」
「すみませんでした」
飛び上がった体を翻し、龍の体に短剣を当てる。
すると、カキンと固い音がする。
「鱗か…」
かなり固い、傷をつけることはこの鱗を何とかしないと難しそうだ。
龍から距離を取り、地面に着地する。
「うーむ、手厳しい」
「ヒロタカ君、倒すのが目的じゃなくて気を引くのが目的よ」
「それもそうか…おらぁ!かかってこいよぉ!!免許持ってのか?!?」
「そういうことじゃない――ってぇぇぇ!」
すると、龍は怒ったのか口に炎を溜め込み、黒炎を吐き出す。
「やっべ!?」
ヒロタカはメーニンを抱え、横に飛び出し、木々に飛び込む。
「大丈夫か?メーニン?」
「なんとかね、助かったわ」
と、龍の黒炎が通った場所を見る。
そこは地面が黒く焦げ、抉れている。
「うわぁ、ひでぇ…こりゃ喰らったら一溜りもないな」
「そうねぇ…」
そんなことを言い、ヒロタカ達はまた龍の攻撃に備えるのだった。