静かな書庫の二人の他愛
【投稿が遅れた理由】面白い小説を見つけて読んでた。
【お知らせ】諸事情により1週間ぐらい投稿出来ない。
「ヒロタカさん、怪我の具合どうですか?」
アリシアはヒロタカの側に寄り、そう尋ねる。
防衛は完了し、死者もゼロ、無論怪我人はいるが重症者はせいぜい2ほど、後遺症も無い。アイントスパイドを倒したのがデカかっただろう。
「あぁ、俺はそんなに怪我して無かったから大丈夫だよ。それより、アリステラさんどこか分かる?」
「お姉ちゃん?多分書庫にいるよ、大体いつもそこにいるし…でもなんで?」
「いや、気になったことが色々と」
メーニンの魔法のことや、どれくらいの頻度で襲いに来るのかとか…あとこれからのことも話したいな。
「じゃ、ちょっち行ってくる」
「動き過ぎないでくださいねー、怪我人なんだから」
――――――――――――――――――――――
「失礼しまーす」
そう言いながら、ヒロタカは扉を開ける。アリシアの言っていた通りそこにはアリステラが椅子に座り、本を読んでいた。
「ヒロタカ?よくここが分かったな」
「アリシアから大体ここに居るって聞いたので」
「そうか、それでなんの様だ?」
「スタンピード後、色々疑問がありましてね」
「あぁ、そういえばヒロタカは記憶喪失だったな」
そんな設定で通したっけ?まぁ、そっちの方が都合が良いか…
いつかボロが出そうだが出たら出たでなんとかなるだろう。裏切ることなど毛頭無いだろうから。
「それで、質問というのは?」
「どれくらいの頻度でスタンピードが起こるのか?それと魔法についてですね…今後のことも話したいです」
「まず、スタンピードの頻度について答えよう…正直、未知数だ。来る時もあれば来ない時もある…それに、村を壊滅させるには数が少ないんだ」
「目的は不明…と」
少々気になるが目的はスタンピードの頻度だったので、ヒロタカはひとまずよしとした。
そして、ヒロタカは次の質問を繰り出す。
「魔法について聞きたいんですが…?」
「あぁ次はそれか、まず魔法の種類は六種類と特別な特殊魔法と言われるものがある」
基本は火、氷、風、閃、闇、治癒の六種類にある特別な者が使える特殊魔法があるらしい。特殊魔法はその名の通りその人一人しか使えない特殊な魔法だ。
メーニンは風の魔法を使い、アリシアは治癒魔法を使う。まぁ、見れば分かるが。
後にこの書庫で調べると分かったことなのだが初めて特殊魔法が観測されたのは魔獣らしい。
「メーニンやアリシアの他に魔法を使う人は?」
「治癒魔法は他に何人かいるが…メーニン以外の魔法使いは全員殺られたよ」
「そう…ですか…」
「向こうとしても鉄を使わずして攻撃出来るのは厄介だと考えたのだろう」
鉄が貴重なアリステラ達にとって魔法を使える人々の戦力はありがたかっただろう。そこを優先的に潰すというのは敵ながらあっぱれという戦略だろう。
「あっ、鉄で思い出した!アリステラさん、この近くで鉄とれるところありませんか?」
ヒロタカはそう発言し、すぐに失言であることに気付いた。そんなものがあるのならとっくにとっているはずだ。
「あ…すみません撤…」
「あるにはある」
「――!でもその言い草だと何かあるんですね?」
「あぁ、鉄が取れる山があるのだがそこには巨大な龍が巣食うっていて近づけないんだ」
なるほど、鉄の採掘場まで封鎖するのか…思っている以上に八方塞がりだ。百年間続いた理由が分かるな…
「なら、龍の気を引いている間に誰かが鉄を取りいくとか…?」
「――ッ!ヒロタカ、言ってる意味が分かっているのか?」
アリステラの目の色、そして、声色が冷たく、冷徹なもののに変わる。ヒロタカはこの世界に来て初めて冷や汗をかいた。
蛇に睨まれた蛙の様なヒロタカがそこにはあった。だが、ヒロタカはそれに物申す。
「それでも、有効な作戦なんじゃないですか?」
「有効かもしれないが…もっと良い作…」
「そうやって何年ここで足踏みするつもりですか?」
「――ッ」
「何か行動を起こさないと、変われません…負けっぱなしのままです。それこそさらに多くの仲間を失いますよ」
この村で過ごしてわかった事がある。それは仲間を失うことを過剰に恐れているのだ。だから行動が起こしずらい。アリステラほどの実力者でなきゃ村から出て探索を出来ないほど…
だからこそ、ヒロタカの言葉はヒットし…
「分かった…考えておこう…」
そう、言わせたのだった。