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なぜアラジンが魔法のランプと出会ったのか

《アラジンと魔法のランプ》の《前王と王の兄弟編(1)》

第1話 日の沈む国、アバブワートの王

昔々、日の沈む豊かな国『アバブワート』に、この国を統治している『ハーメッド王』がいました。


ハーメッド王は、父『ザックレート前王』の意思を受け継ぎ、アバブワートの人々の暮らしを豊かにするために、治安維持、農地改革などで、食糧の生産量を上げ、金、銀、宝石などの鉱脈の発掘を積極的に行いました。

そして、ハーメッド王は、安定した豊かな国を継続するため、神に感謝し、祈りを捧げていました。

この神への感謝と祈りは、歴代の王に倣って神聖に行いました。


ハーメッド王は『シーナス』を第一皇妃として妻に迎え、翌年に女の子『イフラース』を産み、翌々年に男の子『ディクタス』が産まれました。


ディクタス皇子の1歳の誕生のお祝いが終わると、シーナス皇妃とイフラース姫とディクタス皇子は、教育係の大臣『ジャーフス』に連れられて、別の街で暮らすことになりました。


そしてディクタス皇子は、政治、剣術、芸術など、さまざまな分野について教育されました。


別の街で暮らすことは、後継者として甘えをなくし、生きていく強さを学び、裏切りや反乱を未然に防ぐため、昔からの伝統でもありました。


ハーメッド王には、5人の皇妃と5人の息子がいました。

ディクタス皇子と同様に、他の皇子にも皇妃と大臣がついて、別々の街で暮らすのです。


兄弟が会えるのは、年に一度、ハーメッド王の誕生を祝う日だけでした。

皇子達は、自分の誕生を祝う日にも、ハーメッド王に会いに行く事が出来ました。


数年後、イフラース姫とディクタス皇子の母であるシーナス皇妃は、ジャーフス大臣に言い寄られて、親密な関係になります。


そして、男の子を授かったのですが、ジャーフス大臣の側近に預けて隠し続けます。

男の子は、『ガシム』と名付けられました。


そうして10年が経ち、皇子達は、賢く逞しく、誰が後継者になっても良いぐらい成長していました。


この年のハーメッド王の誕生を祝う日に、兄弟が集まると、ハーメッド王は重い病にかかっていました。


病床の中、皇子の教育係の大臣を集め、後継者を選ぶための会議を行いました。

ディクタス皇子の教育係であったジャーフス大臣が、大臣の中では1番の権力者であり、

発言力もあったために、全員の賛成で、ディクタス皇子が王を継承する事に決まりました。


後継者の決定を知って安心したのか、ハーメッド王はその夜に亡くなりました。


ハーメッド王の為、3日間、喪に服した後、ディクタス皇子が王に就く事になりました。


ジャーフス大臣は、第二皇子だった『ヌールデン』と第三皇子だった『ノーチス』が、野心を持っていた事を知っていました。


歴代の王に倣い、ディクタス王の誕生に合わせて、裏切りや反乱が起きないように、他の4皇子を処刑か流刑する事を進言しましたが、ディクタス王は拒絶し、兄弟がお互いに協力して国を守っていく事にしました。


ジャーフス大臣は諦め、「この兄弟を、いずれガシムと自分の為に利用しよう。」と考えました。


翌年、ジャーフス大臣は、ディクタス王の姉、イフラースを妻に迎え、更に大きな力を持つようになります。

しかしジャーフス大臣は、イフラースよりシーナスとガシムの方を愛していました。

イフラースには子供は出来ませんでした。


数年が経ち、アバブワートが飢饉に襲われてしまいます。


ディクタス王が、ハーメッド前王が勧めていた、アバブワートの人々の暮らしを豊かにするための努力と、ジャーフス大臣の悪い影響で、政治、治安、農地改革を大臣達に任せっきりになり、優雅な暮らしを続けて、神への感謝と祈りを怠った為でもありました。


雨が長く降らず、河川も乾き、アバブワートの多くの人々が苦しんでいました。


ジャーフス大臣は、「ディクタス王が、歴代の王に倣い、兄弟を処刑か流刑にしなかった事で、歴代の王の怒りをかった災いだ。」と言い出します。


ディクタス王は、成人していた、ヌールデンとノーチスを呼び出し相談します。

しかし、その事を察知していたジャーフス大臣は、ディクタス王が相談する前に、ヌールデンとノーチスに「東の隣国『アシュラド』の食料を奪う事を助言しろ。」と脅すように進言します。


野心を持っていた二人は、「アバブワート」の人々の為、アシュラドを侵略、略奪しましょう。」と提案します。

ディクタス王は、「飢餓に耐え兼ねている人々の為なら仕方あるまい。」と、許可、命令します。


それを聞いた、第四皇子だった『マジード』と第五皇子だった『アキール』は、反対します。

マジードとアキールはアシュラドの近くの街で育ち、アシュラドを統治していた王『サルマン』とも親交があった為、「飢餓を乗り越えるために助けを乞う事にしましょう。」と主張します。


ジャーフス大臣は、ヌールデンとノーチスと共謀し、「アシュラドが河川の水を止めているため、アバブワートに被害が出ている。」とまで言い出した為、ディクタス王は怒り、もう止めることができなくなりました。


兵士と武器を集め、侵略の準備が直ぐに整ったのは、「アバブワートの飢饉はアシュラドが水を止めた為だ。」と言う噂が、アバブワート中に広がったのと、兵士になれば食べ物が受け取れる事が、人々の協力を得られたからでした。


マジードとアキールはこの侵略を止めるため、ひっそりとアシュラドに入国しました。しかしアシュラドの人々は、真剣に聞いてくれません。

そうしているうちに、侵略が始まってしまいました。


マジードとアキールは、サルマン王にスパイと思われ、捕らえられてしまいます。


アシュラドはアバブワートの侵略を止められず、混乱していきます。

そしてサルマン王は、側近達と城を脱出し、東へと逃げて行きました。


マジードとアキールも、侵略があると話した人々に助けられ、脱出に成功します。


マジードとアキールは、アバブワートに帰ることなく、二人を助けてくれた多くの人々と、日の登る方へ逃げていきました。


アシュラドから国を渡ること5つ目に、東の果て、日の登る豊かな国『ルシャイマ』があります。


ルシャイマは海に面している国で、田畑も多く、魚も多く取れ、貧困や飢餓には無縁のようでした。

ルシャイマの人々は、快く受け入れてくれて、仕事や食料、家まで用意してくれました。

但し、マジードとアキールが、アバブワートの皇子だった事は、言いませんでした。


暫くして、ルシャイマに馴染まなかった一部の人々は、アシュラドに戻っていきました。


その頃、ヌールデンとノーチスは更に東へ侵略を進めます。


ディクタス王とジャーフス大臣の為、アバブワートの人々の為、と言いながら、略奪と侵略を、進めていました。侵略した土地で、従わない者には、見せしめの為、処刑まで行いました。


侵略後は、アバブワートを豊かにするため、ヌールデンの教育係だった『ムータイ大臣』とノーチスの教育係だった『マージー大臣』が、国家を統一、法律の制定、職業の決定、税金の徴収、などを担当し、マジードの教育係だった『カスーラ大臣』と、アキールの教育係だった『ワーフル大臣』は、国家の安定の為に、人々の不満を解消する制度や、河川の整備、農地改革など食糧の生産効率を上げ、金、銀、宝石などの鉱脈の発掘を担当していました。


人々の不満を聞いていた、カスーラ大臣とワーフル大臣は、マジードとアキールの行き先を知ります。

不満を聞くために集まった人々の中に、ルシャイマからアシュラドに戻った人が居たのです。

カスーラ大臣とワーフル大臣は、その人に固く口止めをします。

そして二人の大臣は、この事を秘密にします。


暫くして、アバブワートは飢饉の前以上に豊かな国になっていきます。


ある日のこと、ハーメッド前王の病気は、食事係が着服していた事に気付いたジャーフス大臣が、弱みに付込んで「ハーメッド前王の食事に毒薬を少量づつ混ぜ込ませていた。」との噂が流れ始めます。

食事係りが身内に話してしまったことから広まったのです。


更に、シーナス妃とジャーフス大臣の関係の噂も出始めます。

ジャーフス大臣が私腹を肥やし、秘密を守る為に、側近を含め、周りの人々を苦しめていた為でした。


噂を聞いたディクタス王は、ジャーフス大臣を問い詰めますが、「どちらでも良いではないですか。あなたは王に、私は王を支える大臣になったのですから。」と開き直って答えました。


知られてしまったジャーフス大臣は、ディクタス王を暗殺し、ハーメッド前王の一族を処刑する事を計画します。


ディクタス王は、信頼できそうな、カスーラ大臣とワーフル大臣を、ジャーフス大臣に気付かれないように呼び寄せます。


ジャーフス大臣の側近が、母のシーナスとジャーフス大臣の子供を育てている事、マジードとアキールの行き先を知ります。既に非常に深刻な状態で、身の危険があると感じました。


ディクタス王は、ジャーフス大臣の力を考えれば、「もう逃げられない。」と判断します。

ディクタス王は、カスーラ大臣とワーフル大臣に「兄弟達を頼む。ジャーフス大臣に気付かれないよう、無事に戻れ。全ての人々の為に働くのだ。」と言って、職務地に帰らせました。


ディクタス王は、ジャーフス大臣に気付かれないよう、洞窟に財宝を隠し、ヌールデンとノーチスに、ジャーフス大臣の裏切りがあったことを書いた書簡と、洞窟と財宝の在処をマジードとアキールに知らせる為に書いた地図と書簡を、信頼できる使者『リーガイ』に託したのでした。


ディクタス王に忠誠を尽くすリーガイは、ディクタス王からジャーフス大臣の裏切りの話しを聞き、「残って王を守りたい。」と言いましたが、ディクタス王は、「気持ちは嬉しいが、この書簡を届ける事が、最大の忠誠である。」と言われ、引き下がるしかありませんでした。そしてリーガイは、誰にも何も告げず、アバブワートを出ました。


ディクタス王は、人々の暮らしを豊かにする努力どころか、隣国を侵略し多くの人々を苦しめた事を悔いて、神に懺悔をします。


神はハーメッド前王の行いを認めていたので、その罪を償わせるため、「あなたが死ぬ前に、魂を洞窟の中に閉じ込めよう。洞窟には、ハーメッド前王の血を引く者にしか入れないように守る事。洞窟の財宝は人々のために使う事。その財宝が正しく使われて、人々に感謝された時に、いずれ自由が与えられるであろう。」と言いました。


神の言葉を聞いたディクタス王は、神に感謝し、今までの責任を感じて、自害してしまいます。


その頃、リーガイからディクタス王の書簡を受け取って、今までの経緯を知った、ヌールデンとノーチスは、ジャーフス大臣にのせられて、残虐な侵略を続けていたことを悔い、ムータイ大臣とマージー大臣に「侵略を止め、治安維持を優先せよ。後は任せる。」と言い残し、アバブワートに戻って行きました。


ジャーフス大臣は、ディクタス王が自害した事をで、自分のした事をなすり付けます。

「ディクタス王が、ハーメッド前王の食事に、毒薬を少量づつ混ぜ込ませていた。」

「歴代の王に倣わず、怒りをかった。過去の飢饉はそのために起きた。再建できたのは私の力によるものだ。」と王の一族を批判し、アバブワートの再建は自分の手柄だと、人々に発表しました。


帰ってきたヌールデンとノーチスは、ジャーフス大臣の命令により捕らえられました。


そして、ハーメッド前王の一族は幽閉されてしまいました。この中にシーナスはいませんでした。

マジードとアキールは、アルシャイマにいて助かりました。


幽閉中にヌールデンとノーチスは、侵略や虐殺を悔いて神に懺悔をします。神はその罪を償わせるため、「あなたがたが死ぬ前に、ヌールデンの魂はランプの中に、ノーチスの魂は指輪の石に閉じ込めよう。良き行いをすれば、いずれ自由が与えられるであろう。」と言いました。


ランプと指輪は、神によって、ディクタス王が財宝を隠した洞窟に置かれました。


ジャーフス大臣は幽閉した王一族を処刑してしまいます。


そして、ジャーフス大臣は、ガシムが正当な血を引く王であると発表します。

他の大臣たちは、恐れて反論できないでいます。


ジャーフス大臣は、希望であった最高の権威を全て手に入れました。


ガシムが王になって、ジャーフス大臣は今まで以上に優雅な暮らしをしています。

城や像を造り、珍しい動物を飼い、金がなくなると、多くの税を取るようになります。

そんな暮らしは当然の事ながら長くは続きません。


2年も経たないうちに、苦しんでいた人々や不満を持っていた人々が、大きな反乱を起こします。

反乱を鎮圧できないでいるジャーフス大臣は、頭を悩ませています。そんな時、金や食料を配れば鎮圧できると、側近達が話しているのを聞いてしまいます。


ジャーフス大臣は、さらに重税をアシュラドの人々にかせようとしますが、大臣達の猛反対にあいます。

なぜなら、アシュラドの人々が既に負担できないぐらいの重税で困っている事を知っていたからです。


そんな時に、ジャーフス大臣は、「ディクタス王が、残した財産があまりにも少な過ぎる。ディクタス王が財宝を隠したか、王族に近い誰かが持ち去ったか。」という話しを、税の管理をしていた者から聞きました。

ジャフス大臣は、「マジードとアキールに違いない。」と考え、二人を探させます。


その頃、ルシャイマでマジードは漁師となり、漁師の娘『サルマ』と結婚し、2人の娘と暮らしています。


アキールは農家になり、河川の治水と綿花、麦などを育て、機織り師の娘『ジャム』と結婚し、1人の息子と1人の娘と暮らしていました。


マジードとアキールは、サルマとジャムに、ルシャイマに来る前は、アバブワート皇子だった事を伝えていました。二人はあまり驚かず、「話し方からそんな感じがした。」と笑っていました。


ある日の事、マジードは、ルシャイマからアシュラドに戻っていった、『ペドラ』という名の男を見かけたので、話しかけました。


ペドラから「アシュラドが完全に侵略されて、サルマン王が未だに逃げている。」事と、「ディクタス王の使いがマジードを探しに来ている。」と聞きました。


マジードは、直ぐに家に帰り、アキールを呼び出します。

アキールと家族に説明し、後の事をアキールに任せて、ディクタス王の使いを探しに行きました。


ルシャイマの西の国『アーマンド』との国境で、アバブワートの東の隣国、アシュラドから逃れて来たという、いろいろな人から、アバブワートの現在の話を聞いて、驚き、悲しみました。


そこでディクタス王の使いらしい人を見つけましたが、捉えられる不安があり話しかけられません。


暫くすると、心配になったペドラが様子を見に来てくれて、「あの人が、ディクタス王の使いです。」と教えてくれました。


マジードは話しかけました。「私が、マジードだ。用は何だ。」


ディクタス王の使い、リーガイは、マジードを知っていたので、頭を下げました。

「私の名は、リーガイと申します。ディクタス王の命令で、地図と書簡をマジード様に渡すように、預かってきました。」と言い、「ディクタス王を守る事ができなくて、申し訳ありません。」と伝えました。


マジードは、「リーガイ、あなたはもう自由です。今までありがとう。」と言いました。

リーガイは、深々と頭を下げ、アバブワートへ帰っていきました。


マジードはペドラと共に戻り、アバブワートの事を聞いた内容を話し、アキールと家族と共に書簡と地図を開けました。


マジードとアキールは、困惑します。アバブワート、周辺の国々の事を考えると、戻って人々を守りたい。しかし、失敗すれば、ジャーフス大臣の思うがまま、人々は救われません。


数日後、マジードは決心します。地図と書簡は燃やし、今後の事はアキールと家族に託そうと。


アキールは反対します。そしてペドラに、マジードを見張るように頼みます。


マジードは「私がディクタス王に託された事である。アキール、あとは頼む。」とだけ書き置きして、アバブワートに向かったのです。



また明晩。

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