カノジョは会社に行かせてくれない
「ねぇ~、今日も仕事に行くの~?」
丁度、玄関のドアを開けようとした時に彼女がそう言ってくる。
「そりゃあ、そうでしょ。今日は朝から会議なんだから、ちゃんと行かないと。」
「仕事なんていいじゃない。もっとダラダラしよう~。」
「そんなこと言ったって、仕事に行ってお金を稼がないと、一緒に住めなくなるよ?」
「え~、もっとコタツでゴロゴロしようよ~。お金は私が株で稼ぐから~。」
「そんなダメ男製造機みたいなこと言わないの。」
「でも~、でも~。」
「もうー、そんな駄々こねないでよ。」
「君が一日中いないなんて、君成分の欠如で死んでしまうよ~。」
「俺の成分って何だよ!なんか怖いわ!」
「うぇ~、だから行かないでよ~。」
「はぁ、6時になったら帰ってくるから、待っときな。」
「え、午前?」
「午後だよ!午前6時ってもう終わってんじゃねえか。それかブラックだな。」
「むぅ、寂しいな~。」
「いや、君何歳よ。」
「21歳!」
「元気が良いな!立派な大人じゃねえか。良い子で待ってなさいよ。」
そう言い、俺は玄関のドアを開けようとする。
すると、彼女は俺に抱き着いてくる。
「ちょ、ちょっとー、会社に行けなくなるじゃん。もー。」
「じゅ、充電!1日分の君成分の充電だよ!……だから、もう少しだけこうさせて……?」
目をウルウルさせながら、上目遣いでそう言ってくる。
それは反則だろ……
「はぁー、仕方ないな……。少しだけだよ。」
「うん!ありがとう!」
そうして、彼女はギューと優しく、そして強く抱きしめてくる。
数分後
「あのー、そろそろ会社に行きたいんだけど……」
「あっ、ごめんね、引き止めちゃって。お、お仕事頑張ってね……」
そうして、俺は温もりから離れながら、玄関のドアを開ける。
そして、彼女に声を掛けようと後ろを振り向いた時、
「あ、あの、ま、まだ、充電満タンじゃないから、は、早く帰って来てね……?」
今にも泣き出しそうな、彼女がそう言ってくる。
俺はその言葉を受けて、定時になったらちょっぱやで帰ることを心に誓うのだった。
皆さんこんにちわ 御厨カイトです。
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