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安室高校サイドの大歓声を味方につけた今居は、気迫のこもったピッチングで1回表豊島高校のバッターを三者凡退に打ちとった。
つい最近まで中学生であったとは思えない、堂々たるピッチングであった。
「ナイスピッチング今居!」
「よし、いくぞー!」
今居のピッチングは、安室高校ナインのムードを盛り上げる。
1回裏、安室高校の攻撃はリードオフマンの藤井からだ。
豊島高校の小柄な右ピッチャーは全身を駆使するように、ボールを投げ込む。
カキィーーーーーン!!!!!
センター前ヒット。幸先の良いスタートだ。
続く2番の矢澤はバントの構えをしている。
相手ピッチャーの警戒も虚しく、バントは見事に1塁線に決まる。
ワンナウトとして得点圏にランナーが進んだ。
続く3番の高杉は、チャンスに気後れしたのだろうか、絶好球を引っ掻けてしまい、セカンドゴロに倒れた。しかしランナーは更に進み、ツーアウトランナー3塁にて、バッターは4番の金串だ。
見るからに豊島高校のピッチャーは恐れをなしている。無理もない。相手は全国区の怪物であるからだ。その為、配球も外角一辺倒になる。
2球続けてストライク、ボールと外角に投げ込むのを見逃し、3球目の外角低めのボールを金串は思い切り踏み込んで、フルスイングで叩いた。
バキィィィィィーーーーーーン!!!
打球は光の速さで、弾丸ライナーでレフトスタンドに突き刺さる。ツーランホームランだ。
応援スタンドからは、たちまち大歓声が沸き起こる。
「なんだ今のホームラン!」
「すげえや!さすがキャプテン!」
しかし金串は笑顔を一切見せず、気を引き締めた様子でダイヤモンドを一周する。
ホームランなんか打って当然だと、いわんばかりだった。
金串のホームランにより試合の流れは完全に安室高校に傾き、守りの方でも今居が豊島高校打線を完全に封じ込め、9回4安打無失点と、完封を成し遂げたのであった。
1年生とは思えない快挙である。ナインからその事について褒められると、今居はまたしても得意げになる。
「俺、救世主かな」
それを聞いた櫻井はバーカ、と呟く。
対照的に肘井は、後輩の大活躍を素直に讃えるのであった。
よって、安室高校は東京都春季大会、1回戦の豊島高校戦を難なく勝利した。
キャプテンである金串は2回戦に向けてよりいっそう気を引き締めるため、試合後にチームメイトを集め、円陣を組んだのであった。
「快勝出来たからって気を抜くなよ!
次も頑張ろうぜ!」
「ウッス!!!!!」




