表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/115

97

4月も後半にさしかかり、あたりには桜が散らばり始めるこの日、都営球場のスタンドには、ベンチ入りを果たせなかった安室高校野球部員や、応援に駆けつけた安室高校一般生徒たちで賑わっていた。

相手チームの少ない応援団と対照的にみると、やはり、強豪安室高校というだけの事はある。

1回戦の相手は豊島高校。ごくごく一般的な公立高校である。特別強い相手ではないが、気を抜く事は決して許されない。












「おい聞いたか?ウチ、スタメンに1年生が2人いるらしいぜ」












「そうらしいな!しかもそのうちの1人は先発ピッチャーだってさ」










「本当大丈夫かねえ......戦力不足かな」











小久保と今居がスターティングメンバーに入った事は、もう既に一般生徒に知れ渡っているようだ。しかしながら一般生徒たちは何やら勘違いをしているらしい。戦力が足りていないからやむを得ずこの2人をスターティングメンバーにかりだしたと思っているようだ。もっとも、それが事実ではないという事は言うまでもない。

安室高校野球部ともなれば、層はとてつもなく厚いのだ。例えば小久保の場合、小久保をスタメンに入れなくても、セカンドを藤井にして、レフトには青山という右の大砲を入れ込む事だってできる。そんな青山をわざわざ押しのけてまでスタメン入れ込むほど、小久保の実力は大したものであるという事だ。





1年生がスタメンに入ることに対して多少の疑念を抱いていた一般生徒たちも、実際に今居の投球練習を目の当たりにすれば、自分たちの心配が甚だ見当違いであったのだということが充分に理解できた。

先発の今居はまるで何処かのファッションショーを闊歩するかの如く堂々とマウンドに向かい、ゆっくりと深呼吸をした後、キャッチャーの大蔵に目配せをして、投球練習を始めた。










..........ズバァァァァァン!!!!!









!!!!!!!









キャッチャーミットはバシッ、と凄まじい音を立てる。一瞬、賑やかだった都営球場が静まり返るほどの豪速球であった。

すかさず大蔵が一旦マスクを外し、大きな声で叫ぶ。












「今居!!投球練習から力入れすぎ!(笑)」












「いや、大丈夫ですよ!ちゃんと50%の力で投げてますから!」










大蔵の忠告に対して、今居はわざと観客席まで聞こえるほどの大声で強がりを言う。勿論、これが50%の力であるわけではないが、今居はとにかく承認欲求の強い男で、他者から一目置かれることにこだわる。

大蔵はやれやれ、と呆れたように呟き、再びマスクを被ってミットを構える。













「お、おい。見たか、今の球」










「うん。しかも50%だって。あれで」











「今年の1年もバケモノじゃん!」










「す、すげえよ!今居?だっけ、頑張れ今居!」










「今居ー頑張れ!」








「頑張れー!」









「頑張れー!」













一般生徒たちはすぐさま掌を返し、マウンド上の今居に声援を送る。

金串はそれを見て感心した。この今居という男もまた、自分と同様、プレーで周りを盛り上げていくタイプであるという事が分かったからだ。

今居は声援に応え、投球練習を楽しそうに行っている。安室高校にとって良いムードの中で、東京都春季大会1回戦、安室高校対豊島高校の試合は幕を開けた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ