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ついに、今年も春季大会のメンバー発表の時がやってきた。
高杉ら3年生や金串ら2年生は既に経験している事なので、昨年までよりも落ち着きを放っている。緊張するとすれば、新戦力としての期待がかかっている今居と小久保の2人であるはずだが、意外にもこの2人もさほど緊張した面持ちは見せていない。
小久保はキリッとした表情を見せており、大会に向けて既に自分はベンチ入りが決まっているかのような気の引き締めようだ。今居の方はというと、やはり自信のある様子、というより、余裕しゃくしゃくといった様子である。
さて、部室に野球部員全員が集合し、しばらく待機していると、石原がスタスタと入ってきた。相変わらず無表情ではあるが、その機敏な動きから推測するに、早く自分の決定したメンバーを発表したくて仕方がないようだ。
石原は例年と同じく、自分の口からではなくにベンチ入り及びスターティングメンバーが書かれた紙を壁に貼る事によって、部員たちに発表した。
ベンチ入りメンバーに関しては、目立った変動はなかった。初めてのベンチ入りを果たしたのは3年生の大田、2年生の大蔵、青山、そして1年生の小久保、今居くらいのものである。
部員たちが気になるのは、ベンチ入りよりもスターティングメンバーである。
続いて、スターティングオーダーが書かれた大きな紙が、部室の壁に大々的に貼り出された。
1番ライト 藤井
2番 ファースト 矢澤
3番 センター 高杉
4番 サード 金串
5番 レフト 葉山
6番 キャッチャー 大蔵
7番 ショート 大塚
8番 セカンド 小久保
9番ピッチャー 今居
紙を貼り終えると、石原はよろしく、とだけ言い放ち、部室を後にした。相変わらずである。
それにしてもこれは安室高校野球部にとって、衝撃的なオーダーである事は間違いなかった。何故なら、1年生が2人もスターティングオーダー入りを果たしたからである。さらに、先発ピッチャーは今まで、当日発表であったにもかかわらず、今回安室高校野球部史上初であろう、事前に発表されたのだ。
これには部員たちも驚きを隠せず、部室内はざわめきの声で賑やかになっていた。
勿論これは安室高校野球部創設以来初めての事であり、選ばれたた1年生たちにとっては快挙という事になる。
「あ〜あ、やっぱり1年にレギュラーとられた。
小久保くん守備うまいもんな」
レフトのスタメンを小久保に奪われた青山は、悔しさを滲ませる。それを聞いた金串が練習頑張れ、と励ますと青山はウン、と前向きに答えた。
「肘井さん。ベンチ入り出来て良かったですね」
また今居は肘井の事をからかう。しかし肘井は毅然として大人な対応を心がける。
「よかったよ〜。まっ、エースの君には勝てねえけどな(笑)」
肘井におだてられ、今居は得意気な様子を見せる。相変わらず櫻井ら他の投手陣たちはムスッとしながらそれを聞いている。
しかしいくら睨みつけられようと、今居という男はそんな事は全く気にしないのである。
その図太さは基本的に上級生には嫌われるが、キャプテンの金串は今居のこの図太さを買っていた。
金串はこのメンタルが試合できっと役に立つはずであると、期待している。
約1ヶ月後に控えた春季大会が待ち遠しく、いってもたってもいられなくなり、金串はチームメイトたちを呼んで円陣を組む事にした。
「絶対勝つぞぉぉぉ!!!!!」
「ウッス!!!!!」




