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やがてグラウンドに出てランニングをしていると、石原が現れ、昨年と同様、新入部員たちに向けて一言二言挨拶を行なった。

そして例年通り上級生は守備練習、新入部員はボール拾いを行うよう、金串は指示を出す。










「よし、じゃあとりかかれ!」










「ウッス!!!」










1年生たちは張り切って返事をし、きびきびとボール拾いに取り掛かる。しかし、その1年生の集団からひとり、はみ出すとまではいかないが、少し動きが鈍いものがいた。











「(ボール拾いなんかする為に野球部入ったんじゃねえよ、練習させろや)」










その新入部員はボソッと、少し離れたところにいる金串に聞こえるかどうかくらいの声で呟いた。そしてそれを、地獄耳である金串は聞き逃さなかった。












「おい、今なんていっ.....」











金串がそう言いかけた時、同じく1年生の集団からもうひとりはみ出し、文句を垂れた者に向かっていった。















「キャプテンがやるって言ったらやるんだよ!

1年生みんなやる事なんだぞ?!毎年毎年こうらしいんだ!お前ひとりがチームの輪を乱すな!」











金串は度肝を抜かれた。まだ入部初日にして、そのような事を同級生な向けてはっきりと言い放つ者がいるとは。

かなり真面目な者なんだろうと思わずにはいられなかった。さっき文句を垂れた者はこのせいで部員全員からの注目を浴びる事になり、バツが悪そうに口をもごもごと動かしながら1年生たちの輪の中に戻っていった。

凄い1年生だ。両方とも。











「よく言ったね、君、なんていうの?」













「あ、ハイ。小久保です。よろしくお願いします!」











小久保。忘れるわけにはいかないと思った。

そしてしばらく上級生は守備練習、新入部員はボール拾いを行なっていると、ひとくぎりついたところで、石原から学年問わず集合がかかった。











「これから、1年生の紅白戦を行う」












「ウッス!!!」











1年生たちは訳もわからず返事をしているが、上級生たちは驚きを隠せなかった。たしかに石原は毎年4月に1年生による紅白戦を行うが、流石に入部初日に行った事はない。それが安室高校野球部員にとって、衝撃的な事であるのだ。

しかしそれはやむを得ない事情がある事も、部員たちはしっかり理解していた。

肘井のケガが長期化したことにより投手不足は未だに改善されず、守備難の青山が外野を守るなど、懸念材料も多いのだ。

それらを考慮に入れると、たしかに出来るだけ早く新戦力を見つけようとする姿勢には合点がゆく。

1年生は2チームに分かれ、それぞれが自分のポジションに嬉しそうについた。それもそのはず、1年生にとって、こんなにも早くアピールのチャンスが訪れるのは流石に想定していなかったであろう。1年生にとっては嬉しい誤算だ。

石原という監督は、こういう男なのである。

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