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白組の投手は淺沼。身長が2メートル近くある大男だ。淺沼はさっきまでの肘井の投球とはうって変わって、闘志溢れる投げっぷりを見せた。

が、しかし、赤組の先頭打者は三遊間に痛烈な打球をひっぱたいた。






かキィーン!!!!!








「よっしゃ!」







打者はヒットを決め込んで、既にオーバーランの為に緩く走っていた。その時だった。











「おけい!」









「うい、ファースト!」






「う、うイ!」







「アウトォー!!!」







?!?!?!?!?!




なんと、サードを守っていたタッパのある金串は、手を伸ばして痛烈な打球をいとも簡単に捕球し、ファーストへめがけ豪速球を投げ、アウトをひとつ、もぎ取ったのだった。






「やっぱり、金串は1年の中でも別格だな」







「こりゃあ、俺たちもうかうかしていられないぜ」









2、3年生までもが口々に金串のプレイを褒め出す。










「うーいワンナウトォーー!!!」









絶対聞こえているであろう2、3年生たちの褒め言葉に浮かれることなく、金串は引き締めた。

幸い、金串のプレイが白組の流れを引き寄せ、

その後は何事も無く攻守交代を迎えた。






2回目のマウンドに立つのは、初回に引き続いて肘井である。4番、5番と、いずれのバッターもストレートで効率的に追い込まれ、最後は外角スライダーで三振を取られてしまう。肘井の投げ込むキレのあるスライダーは、分かっていても打てないらしい。









「じゃあ、行ってくるわ。自信ないけど。」








「おお、頑張れ、矢澤!」









「プレイ!!!」









さて、次のバッターは矢澤だ。身長は170後半くらいと、決して小柄なわけではないが、安室高校野球部の中にいるととても小さく見える。


矢澤は左バッターボックスにゆったりと立ち、真剣な表情で肘井を睨み付けた。その小さく構えたフォームは、ヤクルトスワローズの青木宣親のようだ。





1球目。..........見逃し。ストライク。





2球目。..........空振り。




ここで、矢澤はうん、うん、と頷き、二度三度、バットを振った。何かが掴めたようだ。

金串はこの勝負に注目せずにはいられなかった。何故なら、今回、矢澤が初めての左バッターであるからだ。右バッターには外に逃げるスライダーで三振を取りに行く肘井は、左バッター相手に何を投げ込むか。

きっとこれは、金串だけでなく誰もが注目したことだろう。





さぁ、ツーストライクノーボールから、肘井はゆっくりとノーワインドアップで投球を始めた。

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