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その後もヒットを1本打たれて1点を失ったが、なんとか失点を3に留め、裏の攻撃を迎えた。
藤井高校の先発ピッチャーは左。球速もさほど速くない。
安室高校先頭打者の藤井がバッターボックスに入りプレイの合図がなされると、相手ピッチャーはゆったりとしたフォームから投球を開始した。
..........バン!ストライク!
初球は念のため見逃す藤井。ゆったりとしたフォームからビュッと放たれるストレートは、大分タイミングが取りづらいようだ。
2球目..........ファールボール!
外角に逃げていく変化球を思わず追ってしまう。そして、次は何を投げてくるかと考える間も無いほど、ピッチャーはテンポよく球を投げ込んできた。
3球目..........ファールボール!
デジャヴだ。またしても全く同じ球に手を出してしまった。
しかしピッチャーはしつこく同じ球を投げ続けてきた。
4球目..........ボール!
もう意識が外角のあたりにいっているので、藤井は注意して見逃す事が出来た。
少し余裕が出てきた、その時だった。
..........ストライク!バッターアウト!
インコースに思わぬ直球が、それもストライクゾーンギリギリに鋭く投げ込まれた。
藤井はそれに思わず手が出なかったのだ。
「ピッチャー、コントロール良いな」
「ああ、緩急も上手い」
「矢澤!頑張れよ!」
矢澤はベンチの応援に背中を押されながら、バッターボックスに入り、小さくバットを振り構える。
当然ピッチャーにとっては投げづらい構えであるが、相手ピッチャーはさほど気にする素振りも見せず、投球を行なった。
..........ストライク!
初球は外角低めいっぱいのストレートだ。
素晴らしいコントロールである。
流石に初球からこんな難しい球に手を出すはずもなく、矢澤はボールを見送った。
2球目........ストライク!
内角高めに、勢いのあるストレートが投げ込まれる。ストライクゾーンではないがあまりに身体に近かったので、矢澤は思わずバットを出しかけてしまった。
その後、内角に来ることを気にした矢澤は踏み込んで打てなくなり、外角の球に手が出ず、あっけなく三振した。
「配球エグいて。うち、そとに上手くなげわけてきよる。コントロールもええし」
ベンチに戻ってきた矢澤は言う。
矢澤がベンチに戻り、水分補給を取る間、すぐに高杉は初球を打たされて凡退していた。
「簡単には点取れる相手じゃないな。よし失点を出来るだけ押さえて1点ずつしっかりとっていくぞ!」
「ウッス!!!」
キャプテンの金串を中心に、安室高校ナインは気合いを入れなおすのであった。




