81
しばらくの沈黙を経て、ようやく頭の中で考えがまとまった金串は、肘井に向かって語りかける。
「肘井。お前がチームの為に力になってくれようとする力は分かるし、素晴らしい事だと思うよ。俺としても嬉しい限りだしな。だけどさ、ケガしてたらどうにもならないだろ?」
「いやだってさ..........!」
話を遮ろうとする肘井を無視して、金串は続ける。
「ケガが治らないうちから練習してたって、練習の成果は得られない事くらい、お前なら分かるだろ?無理して練習を続ける事は肘井の肘にとっても良くないし、ってことは結果的にチームにとってマイナスになるんだぞ」
「うーん..........」
金串のもっともな意見に、肘井は黙り込んでしまう。
「それにさ肘井、うちの投手陣だって今は肘井がいなくてちょっと弱いけど、みんな頑張ってるからさ。ここはみんなを信じて、ケガを治す事に専念してくれないか?キャプテンの頼みだ。この通り」
金串は深々と頭を下げる。それを見た肘井は、ようやく頭が冷え、冷静になって物事を考える事が出来るようになった。
「金串、ありがとう。俺のことも、チームのことも、そんなに考えてくれて。俺、考えが甘かった。反省するわ。もうケガが治るまで投げ込みは止める。投手陣のサポートに徹するよ」
「おお!ありがとう!肘井!」
肘井が分かってくれた事が嬉しく、つい大声を出してしまった。そんな金串の様子を見た肘井に、笑顔が戻った。
「はははっ!うるっせえな金串は。あ、そうだ。俺医者からランニングは大丈夫って言われたから、ちょっと付き合ってくんね?」
「おう!勿論だとも!」
こうして2人は夜の公園を飛び出し、街中を一緒にランニングした。いちにっいちにっと呟きながら2人並んで走る姿は、夜であるにもかかわらず、とても眩しく見えた。
金串は初めて、自分がキャプテンとしてチームメイトの役に立つ事が出来たと感じ、感慨深いものがあった。みんなが目指すものはチームの勝利。全員が全員で協力しあう。ワンフォーオール、オールフォーワンだ。
みんなが同じ目標のもとに集まったチームの結束力は、非常に強いのである。
想いが通じた事があまりに嬉しく、金串と肘井は夜中まで一所懸命にランニングを続けた。
ひたすら明日に向かって走り続けた。
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!




