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金串は苛立っていた。肘井がいつになっても戻って来なかったからだ。たしかに、単に肘井が戻って来ないというだけならばここまで苛立つ事も無かったであろうが、寮長の"もうすぐ戻ってくる頃"という言葉に踊らされ、予想外の長丁場に苛立ちが募っていた。

さらに2時間ほどが経過し、夜も11時を過ぎた頃、ようやく肘井は寮に帰ってきた。













「あ、金串じゃんおつかれっす」










肘井はただそれだけを言い残して、自室に入ろうとした。何時間も野球部寮の廊下で待機した挙句の果てにそれだけで終わりというのには流石に納得がいかず、金串は感情を剥き出しにしながら肘井を呼び止めた。













「おい待てよ肘井。こんな時間まで何やってたんだよ」












「ん、あ別に」









なんとも人を食ったような肘井の態度に完全にカチンときた金串は、何時間も廊下で溜めておいた疑問をまくしたてるようにぶつけた。













「別にじゃねえよ。俺、ここで何時間も待ってたんだぞ。大体最近練習にも参加しないで何やってんだ?ていうか、肘大丈夫か?」









ついに核心をついた。











「別に、ケガしててやることないから。サボってるだけ。俺もう野球部やめるから。ケガしたんじゃ仕方ないよね。その辺ぷらぷら遊んでた方がマシ〜」












「お、おい冗談だろ?(笑)」











「冗談なんかじゃないよ?だからもう俺の事はほっといてさ、チームの事、考えてなよ、キャプテン」











「お、おいちょま....」









肘井は自分の言いたい事だけ吐き捨てるように言い放ち、自室にこもってしまった。その後いくら金串が呼んでも、取り合う事はなかった。



次の日、金串は櫻井から肘井の事について聞かれる。











「金串、肘井と話せた?なんかいってた?」










「うん、えーとね...」








一瞬迷ったが、やはり昨日の一件は他言しない方が良いと思った。金串にはあれがどうも肘井の本心であるとは思えなかったからだ。













「ちょっと体調が悪いだけだってさ。すぐに練習に参加するようになるよ、きっと」










櫻井を安心させたいあまり、嘘をついてしまった。











「あ〜なんだ、よかった!肘井のやつ、夏バテかな?(笑)」










金串は心が痛かった。なんとなくモヤモヤしたまま、その日の練習を終え、自主練習に取り組んでいたが、なかなか練習に身が入らず、金串は2日連続で、自主練習を早めに切り上げた。


そして、気分転換にこの日はいつもと違う道を走って帰ることにした。

いくらバケモノといわれる金串であっても、気分転換は必要だ。心を落ち着かせれば、肘井についても良い考えが浮かぶかもしれないと思った。

いつもと違う街並み、いつもと違う風景に心をリラックスさせていると、小さいが練習するのになかなか良さそうな公園を見つけた。

壁もあるので、壁当てでもしようかと足を止めたその時だった。


金串はは衝撃の光景を目の当たりにするのであった。



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