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「今日の試合、よく打った。けど、点取られすぎ」
試合後のミーティングで、石原が見たまんまの事を指摘した。部員たちもうんうんと頷いている。当然である。バスケットボールの試合じゃあるまいし、まじめにやって14-17というスコア、特に14点を取られた事はかなりの大問題といえる。
「今日から安室高校は守備型のチームにシフトする。よって守備練習中心な。ピッチャーは俺が見てやるから、投球練習も頑張りたまえ」
「ウッス!!!」
石原による今後の方針の発表がなされた後部員たちはグラウンドに集まり、各自練習に入る。
石原はこの日はノックを行わず、投球練習をみるようだ。
「あれ、肘井はいないのか?」
「今日は来てないみたいですね」
「そうか。まあ投げてみろ」
部員たちにとって、肘井の欠席を石原が把握していないという事は意外であったが、石原何らきに留めることもなく、投手陣の練習の指導を始めた。
大田や櫻井など、練習試合で登板したピッチャーたちは投球練習には参加せず、ひたすらグラウンドを走っていたが、そこで肘井の話題が上る。
「なぁ櫻井。肘井最近全然来てないけど、監督も理由を知らないみたいだな。ケガしてるっていうのはきいたけど、サボっているんだったらちゃんと本人に言った方が良くないか?」
「そうですね、大田さんも気づいてましたか。
1度金串に相談してみましょうかね」
「そうだな」
その後、この1件を櫻井は金串に相談した。
「えっ!練習休んでるのって、監督公認じゃなかったの?!」
「うん、らしいよ。石原監督もちょっとだけびっくりしてたし」
うーんと考え込んだ後、金串は何やら思いついたらしく、話を始めた。
「分かった。俺が1度、本人に聞いてみるよ。
あいつもあいつなりに色々あるんだろうけど、
このままみんなが気にしてるのもかえって気が散ってよくないしな」
「頼むわ、キャプテン」
この日、金串は珍しく自主練習を切り上げて、安室高校野球部寮に足を運んだ。肘井と話をするためだ。肘井とはクラスも違うため、話をしようにもここしかないのである。
金串は肘井の部屋まで行き、肘井を呼んだ。
「肘井ー!肘井!いる?肘井ぃ〜」
いくら呼んでも返事はない。すると金串の五月蝿い呼び声に嫌気が指したのか、寮長が廊下から近づいてきた。
「肘井くんなら、さっき外へ出て行ったよ」
「ああ、寮長さんこんばんは。どこに行ったか分かりますか?」
「分からないねぇ、でもここんところいつもこの時間は出かけてるよ。そろそろ帰ってくる頃じゃないかね」
「そうですか、ありがとうございます」
「あいよ〜」
ということで、金串は肘井が帰ってくるのを、野球部寮の廊下にて待つことにした。
それほど、肘井としっかり話がしたかったのだ。




