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練習後、部員たちは部室へと集められ、石原によるミーティングが行われていた。
「今週末、練習試合を行う。相手は多摩川高校だ。夏合宿の成果を思う存分に発揮してほしい」
「ウッス!!!」
もはや相手が多摩川高校である事に対しては、誰も違和感を覚えなかった。
石原は早速、部室の壁にスターティングメンバーの書いた紙を貼り付ける。そしてそれを各自確認しておくようにとだけ伝えて、部室を後にした。
1番 セカンド 藤井
2番 ファースト 矢澤
3番 センター 高杉
4番 サード 金串
5番 ライト 葉山
6番 キャッチャー 大蔵
7番 レフト 青山
8番 ショート 大塚
9番 ピッチャー 櫻井
現状、このメンバーがベストであるようだ。
部員にとって特に衝撃なことはないが、ひとつ意外なことがあるとすれば、青山がスタメンに抜擢された事くらいだろうか。まぁもっとも、青山の規格外のパワーを考慮すれば、それも妥当であるように思えた。
金串は新キャプテンとしての初陣に、期待に胸を躍らせていた。対外試合ももちろん、新体制になって初めてのことだ。
「今度の試合は俺たち新チームにとって初の対外試合試合だ!死ぬ気で挑もうぜ!」
「ウッス!!!」
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
金串たちは気合を入れて円陣を組んで、しばらくしてから解散した。
「あ〜おつかれ、金串に青山。もう帰り?
俺はもう帰るで」
「マジかー、矢澤早いな、俺も帰るけど」
「いや青山は練習せぇよ。次の試合もレフトフライミスったらどつきまわすからなぁ!」
「ひぃ!おっかねえ〜、てか金串どうしたの?」
青山は、上の空で話をまるで聞いていない金串の様子に気づき、堪らず声をかける。
「ん、いや、そう言えばだけどさ、今日の練習、肘井いた?」
予想だにしなかった金串の問いかけに、一瞬2人は目を合わせる。そして首を傾げてから、再び金串の方を向く。
「おらんかったな。今度の試合も出ないみたいやし、どうやら怪我してるっぽいよな...」
「......」
その場が一気に静まり返る。肘井の事は、誰もが心のどこかで気にかけながらも、口には出さなかったのだ。それを今初めて金串が触れた事に、皆は敏感に反応した。
「夏の大会での投げすぎが原因かな?怪我なら仕方ないけど、出来るだけ練習にも顔を見せて、出来ることをやってほしいよな、みんなも気がかりになるし」
金串がそういうと、2人はうんうんと頷いた。やはり皆、肘井の事はずっと心配していたのである。




