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「ナイスホームラン!」
1年生から、青山に向けて賞賛の声が相次ぐ。
それもそのはず、現状青山の能力を完全に把握している者はいないが、少なくともパワーだけならば金串に匹敵するといっても過言ではないだろう。
続く6、7番は立て続けに凡退し、試合は4-0のまま2回の表、2年生の攻撃を迎えた。
2イニング目の櫻井が最初に対戦する相手は、4番レフト高杉だ。一旦は金串にサードのレギュラーを奪われたが、控えにするにはもったいない打撃力と、どこでも守れる器用さによって、夏の大会ではクリーンアップに浮上した、強打者である。今回の夏の合宿においても、2度とレギュラーを奪われることがないよう、死ぬ気で練習に励む姿は、野球部員全員が見ていた。
様子を見たかった櫻井はとりあえず、低めのスライダーを投げ込み、高杉の狙い球を探ることにした。
..........ボール!!
ピクリとも反応しない。どうやらストレートを待っているようだ。ならば釣られてやろうと、櫻井は敢えてストレートを投げ込む事にした。
しかし相手は強打者高杉だ。外角低めに慎重に投げる事を心がけた。
..........カキィーーーーン!!!
腰を回転させ上手くバットを出し、レフト方向へライナー性の当たりが飛ぶ。
「レフトォ!」
レフトはさっきホームランを放った青山だ。幸い、打球の当たりは強いが追いかければ取れるボールだ。櫻井はほっと肩をなでおろす。
しかしその時だった。守る1年生チームにとって、いやそれだけでなく、打った本人である高杉にとっても予想外の出来事が発生した。
青山は打球の方向を見誤り、なんとイージーライナーを後逸してしまったのだ。
それを見た高杉は慌ててベースを周り、全速力で駆け抜ける。結果はスリーベースヒットとなった。
「青山ァ!しっかりやれや!」
「ウッス」
金串がすかさずゲキを飛ばす。
部員たちは、何故青山が今までレギュラー候補として浮上してこなかったのか、納得した。
守備が酷すぎるのだ。あのようなイージーライナーも取れないような事は、強豪安室高校にとってあってはならない事である。
ピッチャーの櫻井自身も、あんな稚拙な守りのミスによってランナーを出した経験がないため、明らかに動揺している。
混乱した櫻井はこの後、2年生チームから滅多打ちを食い、なんと試合は4-8と、思い切りひっくり返され、最終的には8-12で2年生が勝利した。
「っしゃあした!」
「っしゃあした!」
打撃力が成長した事は分かったが、投手力や守備力など、課題が山積みである事が分かった紅白戦であった。




