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その後、安室高校打線になかなか簡単にはヒットも生まれず、スコアボードの表には0の文字が並び続けた。

しかし、その事が記しているのは決して悪い事ばかりではない。何故ならそれは、安室高校の肘井も、赤坂実業打線を封じ込めているという事でもあるからだ。

それが分かっているからこそ、安室高校サイドは決して試合を諦める事なく、ガムシャラに、前向きに、戦っていた。












「ナイスピッチング!肘井!」











「ウッス!!!」











ついに肘井は、7回までを無四球無失点に抑えた。球数が既に100球を上回っているにもかかわらず、球威やコントロール、そして変化球のキレは一切の衰えをも見せず、赤坂実業高校に絶望を与えた。

この事から、肘井のスタミナは誰もが無限であるとばかり思っていた。しかし球場に1人だけ、当の肘井本人の1人だけは、そうは思っていなかった。












「やべっ...ちょっと疲れたな」












肘井は誰にも聞こえないような声でボソッと呟くが、やがて安室高校の攻撃が始まると、すぐに掻き消された。










「(俺がそんな弱音吐いてる場合じゃないよな)頑張れー!佐々木さん、ホームラン打ってくださいね!」











肘井すぐさまスイッチを切り替え、この回の先頭打者、7番の佐々木の応援ひ躍起になる。

しかし、近衛もやはり流石、肘井に負けず劣らずの強靭なスタミナを持っていた。

近衛の、変化球を時折織り交ぜたストレート主体の投球に、いくら強豪安室高校打線といえども、下位打線では太刀打ち出来ず、たった10球で安室高校の8回表の攻撃は終了した。












「さあ!しゃーない、しゃーない!しっかり守っていこうぜ!」









「ウッス!!!」









「ウッス!!!」








「ウッス!!!」









近衛の前にねじ伏せられようとも、試合自体はまだ同点だ。当然試合を諦めるわけもなく、安室高校ナインはそれぞれかけ声を上げながら、気合いを入れ、守備につく。

それに対して、安室高校応援席から声援が送られる。9回の攻撃が1番からの好打順であるため、この回を守りきれば望みは大いにあると、誰もが考えていた事だろう。しかし、あまりにもあっけなく三者凡退に終わってしまった事によって、肘井は休憩を充分に取る事が出来なかったのである。肘井はとても不安だったが、ここで投げ出す気には到底なれなかった。


その事が8回裏、事件を引き起こす事になるとい事を、この時はまだ、誰も知る由はなかった。




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