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7月も中盤にさしかかり、さんさんと太陽が照りつける中、夏の東京都予選大会、第2回戦が開始されようとしていた。
一方はシード権により自動的に勝ち上がった安室高校、そしてもう一方は一回戦を勝ち抜いた駒込育英高校である。
例年であるならば駒込育英高校もシード権を獲得してもおかしくないところではあるが、春季大会、近衛擁する赤坂実業高校に初戦で敗れ、涙を飲んだ。夏の大会では、その悔しさをバネに優勝を目指す。
対する安室高校は言わずもがな、今大会における優勝候補筆頭の大本命だ。
ここ直近において東京都予選大会を3連覇している安室高校にとって、シードであるため、実質的な初戦を落とすわけにはいかないと、並々ならぬ思いで気を引き締めていた。
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
試合開始まで残り20分を切り、互いのチームはそれぞれ最後のアップを始める。
その様子を、ベンチ入りを果たすことが出来なかった応援席の野球部員と、2回戦とは思えないほどの超満員の観客席は、じっと見つめている。
やがてお互いのナインはベンチに集合し、円陣を組んだ。
「絶対勝つぞぉぉぉ!!!」
「ウッス!!!」
安室高校の声出しに負けじと、駒込育英高校ベンチも気合いの入った円陣で対抗した。
「っしゃーいくぞ!!!」
「よっしゃ!!!」
試合はもう、始まっているのだ。円陣の段階から、相手チームの雰囲気にのまれてはならないという事は、お互いのチームの部員たちは理解しているようだ。
さぁ、お互いのノックが行われ、試合開始の時がやってきた。先行は安室高校。守りについた駒込育英の先発ピッチャーはサウスポーの変則投手であるようだ。
投球練習を見つめながら、先頭バッターである藤井はタイミングを合わせ、素振りを行う。
「バッターラップ!」
審判が呼ぶと、藤井はゆっくりと左のバッターボックスに入る。
「プレイボール!」
遂に、夏の大会、安室高校にとっての初戦が開幕した。
駒込育英高校のピッチャーは、ノーワインドアップから投球を始める。
満員の東京都営球場の全注目が、その一点に集中した。
..........カキーーーン!!!!!
相性の悪い左投手をもろともせず、藤井は上手く腰を回転させ、肩口から入るスライダーをひっぱたいた。
打球は快音を響かせるながら物凄い勢いで飛んでいった。




