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御木本と熱の入った話をして以来、金串はより練習に一所懸命に取り組むようになっていた。
また、自分が次期キャプテンになるかどうかという事自体、決めかねており、いつも心の片隅に疼いてなんとなくモヤモヤしていたものの、少なくとも自分がチームを引っ張っていかなければいけないという責任感が芽生えていた。
1年生同士でランニングをする時も先頭に立って音頭をとり、ノックの時も人一倍大声を張り上げた。
そして何より金串の生活にもたらした変化とは、自主練習をする場所である。
今まで、金串は個人練習をする時は1人で、学校外で行なっていたのだが、それではチームメイトの目にはとまらず、背中で皆を引っ張っていくことは出来ないと考えたため、安室高校野球部グラウンドに残って皆と一緒に自主練習を行うようになっていた。
夜、灯りがともる中、薄暗い安室高校野球部グラウンドに金串の姿がある事自体珍しいので、
チームメイトたちは驚いていた。しかし彼らがもっとも驚いたのが、金串の練習量だ。金串は1度バットを振りだしたら、止まらない。
トスバッティングも、投げる方が腕をいわすほど、延々と練習に励むのだ。それも決して手を抜く事はない。
そんな金串の圧倒的な姿を目の当たりにしたレギュラー陣をはじめとするチームメイトたちは、金串に負けまいと夜遅くまで必死に身体を動かすのであった。
そんな雰囲気はチームに心地よい緊張感を与え、何か安室高校野球部が一丸となっている気がした。
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
金串は最近、いつもチームの中心にいる。そんな立派な金串の姿をみて、現キャプテンである御木本は、心の底から感激していた。
「金串のやつ、最近なんだか頼もしいなぁ」
「せやな、なんかリーダーっぽくなったというか」
「ほんとほんと。1年生とは思えない頼もしさだよ!チームに元気を与えてくれる!」
「よし!俺たちも頑張っていこうぜ!」
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
夏の予選大会までついに2週間に迫り、安室高校野球部員たちはいちになく盛り上がっていた。
この日、部室に部員たちが集められた。
監督の石原も同席しているため、自分たちが何のために集められたかは、部員たちが気づくのは容易な事であった。
キャプテンの御木本を中心に、石原の元へと集合している。
皆んなが揃ったのを確認した後、石原は静かに、されど熱い口調で、話を始めた。
「では、夏の大会、ベンチ入りメンバー及びスターティングラインナップを発表する」
「ウッス!!!!!」




