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安室高校対多摩川高校の練習試合は、7対1で安室高校が勝利した。
改善すべき課題はたくさん残ったものの、安室高校にとってこの1勝は、公式戦にも勝るとも劣らない価値があった。
出場した1年生たちがいずれも爪痕を残したからだ。この日先発として登板した櫻井は7回を投げて1四球、6奪三振、1失点。
1番バッターとして出場した矢澤は3打数1安打、1四球、1盗塁。
7番バッターとして出場した金串は4打数2安打、3打点、1本塁打だ。
肘井はこの日は登板しなかったが、出場した3人はこの試合において安室高校の中核を担ったという事は言うまでもない。
試合後には御木本を中心とするミーティングが部室にて開かれた。
勿論、石原もそこには出席している。
「今日はお疲れ様。特に1年生たちは、良くやったと思う。自分も含め上級生たちはこれに刺激され、負けずに頑張ってほしい!」
「ウッス!!!」
今日は御木本を含め、チーム全体のムードが良かった。盛り上がる部員たちをなだめ、御木本は再び口を開く。
「あと、夏の東京予選大会までついにあと1ヶ月になった。俺たち3年生にとっては泣いても笑ってもこれが最後の大会になる。それまでには、死ぬ気で練習しよう!!!1、2年たちもここはひとつ、我々3年に力を貸していただきたい!」
「ウッス!!」
「っしゃー!気合い入れてくぞ!!」
「ウッス!!!!!」
この時、時刻は15:00を回っていたが、野球部としての練習は22:00まで続いた。そんなに遅くまで練習してもなお、グラウンドに残って自主練習に励む者は今までにも増して多かった。
そんな中、金串はいつものように1人でそそくさと帰宅の準備をして、グラウンドの出口へと向かう。すると、後ろから御木本がついてきた。
御木本はいつも1番遅くまで残って自主練習をしていると聞いている。そんな練習熱心なキャプテンが今日に限って自分と同じ時間に帰宅しようとしている事を不思議に思った金串は、自ら御木本に声を掛けてみることにした。
「キャプテン、お疲れ様です!今日はもう帰りですか」
金串の挨拶に対し、ああ、と返事をした御木本は、金串の隣まで小走りでやってきた。
そして、意外な言葉を放ったのである。
「金串、今日、自主練習付き合ってくれないか?」
「?は、はあ......」
普段ならば絶対にないような、あまりに珍しい御木本の誘いに、金串は雨でも降るのかと心配になった。




