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1年生は70人いるので、流石に2班に分かれて、二段階に分けてノックは行われるようだ。
「監督、ピッチャーなんですけど、どうしたら良いですか」
「走っとれ」
「えっ」
「野手は守備力。投手はスタミナ。キャッチャーは今は必要としないから好きな守備についておけ。それぞれの評価基準だ。野手のノックが終わるまでにギブアップしないで走っていられたら、投手は合格だ。おい、御木本、ペースを緩めないよう、見張っといてくれ。」
「はい!」
70人中、25人の投手たちは一斉にグラウンドの周りを走り始めた。
さて、野手のうち、最初の35人のノックが始まろうとしていた。その中には矢澤や金串の姿があった。
石原から説明されたノックのルールは、至って単純なものだ。石原の放つ打球を、捕球し、プレーを成立させる。順番に入れ替わりでポジションに入り、延々と行うのだ。
2回ミスをしたらそこで失格。最後まで残った者がベンチ入りの資格を得ることとなるのだ。
「うわ〜厳しいな。マジで緊張する」
1年生に降りかかる入部以来初の試練に、皆、緊張で胸がいっぱいだ。
っしゃーーーす!!!!!
石原はまず三遊間に力いっぱい、ゴロを打った。
サードの金串と、ショートの1年生は即座に反応し、打球を追う。
やがて金串がなんとか追いつき、そのままの体勢でファーストに送球した。
ちなみにこの時のファーストは矢澤だ。矢澤は左利きであるため、大阪時代は1塁の名手と呼ばれるほどの、守備の達人であった。
「ひぇ〜凄い送球や、さすがは金串やな」
石原は間髪入れずに打球を放つ、またしても三遊間だ。金串と入れ替わったサードの男は横っ飛びで追いつこうとするも、打球はレフトの方へ転がっていった。
「どうしたら。寝てる暇はないぞ」
石原はサードが立ち上がるのを待つでもなく、容赦なく力強いゴロを放つ。慌ててサードは立ち上がり、ボールを追いかけようとするがまたしても転んでしまう。
ここで2失策なので、彼の挑戦はここで終了となる。
「はい、2ミス、次ー!」
淡々と言い放つ。なんとも石原は冷酷だ。すぐに次のターゲットに向かって、打球を放つ。
打球の行方はファーストだった。




