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その後、安室高校は破竹の快進撃を見せ、順当に東京都春季大会を勝ち進み、遂には赤坂実業高校との決勝戦を迎えていた。
初戦において、思うような結果が残せなかったものの、金串は2回戦、3回戦と、決勝に至るまでに打ちに打ちまくり、11打数7安打2本塁打という、まさにバケモノのような暴れっぷりを見せていた。
新星金串の登場は、安室高校一般生徒2、3年生にも衝撃を与え、もはや校内において"金串巌"
という男を認知しない者などいなくなっていた。
東京都営球場は、相変わらず満員であり、決勝戦だという事もあってか、この日は特にスタンドが熱気に包まれている。無論、それは戦う張本人であるレギュラー陣も同じ事だ。
「おい、みんな。今日は決勝戦だ。今日の試合に勝てば、夏の東京都予選においてのシード権が獲得できる。少しでも我々の投手陣に楽をさせてやるために、今日は何としても勝つぞ!」
「ウッス!!!!!」
試合前のシートノックの準備をしながら、安室高校ナインは相手の赤坂高校のノックを眺めていた。その時、金串はある事に気付いた。
「あ、近衛だ」
「あ?何だ、金串、知らなかったのか?」
御木本がすかさず反応する。
「は、はい。僕、中学時代のチームメイトがどこにいったかなんて全く知らないんですよ。
でも全国優勝のエースが相手とは、今日は厳しい戦いになりそうですね」
「まぁ、やつが試合に出ればそうだな。でも見る限りだと、少なくとも先発ではなさそうだ。
お前くらいだぞ。春季大会からレギュラーで出場する1年生は」
はあ、と気のない返事をしながら、金串はかつてのチームメイトを見つめていた。
キャプテンの御木本はあのような事を言っていたが、近衛ほどの男をベンチで温めておくのは勿体なさすぎる気がした。
ノックを受ける近衛の姿を見ていると、自然と中学時代の想い出が頭に浮かんでくるのであった。
近衛篤弘という男は、金串と同じクラブチームのエースピッチャーであり、全国大会の決勝戦では、
7イニングを無失点に抑え、三振を10つ奪うという、圧巻の投球を見せつけ、チームを優勝に導いた。
打っては金串、投げては近衛が、というような感じでチームの中核を担っていた2人が、再び、今度は対戦相手という形で対峙しているという事実に、深い感銘を受けていた。
そうこうしているうちに、安室高校のシートノックの時間が訪れた。
まずはキャプテンの御木本が大きな声を張り上げる。
「っしゃー!!!しまっていくぞーー!!!」
「ウッス!!!!!」
他のチームメイトに負けじと、また、スタンドの熱狂に掻き消されないよう、自分も精一杯の声を張り上げ、金串はサードの守備位置に向かって走っていった。




