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………ストライク!バッターアウト!
ゲームセット!
勝利した。肘井は9回の守りにおいても、東京渡辺高校打線に手も足も出させなかった。
「やった、やった、肘井の復活だ!」
「ヤッホーーーーー!!!」
安室高校応援席からは拍手喝采が起こる。
肘井も大歓声によって安室高校ナインに迎えられる。そして安室高校ナイン全員が、応援席の人たちから拍手で迎えられる。
キャプテンの金串はチームメイトを整列させ、
応援席に向かって挨拶した。
「応援、ありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
ぱちぱちぱちぱちと、これ以上ないほどの大きな拍手を、安室高校ナインは浴びる事となった。
「ナイスピッチング、今居、肘井!」
「ナイスキャプテン!」
興奮した一般生徒たちは口々に叫ぶ。
こうして、3回戦の安室高校対東京渡辺高校の試合は終わった。
そして、エースが帰ってきた安室高校にとって恐れるものは何もなく、続く試合も今居、櫻井とともに投げ抜き、相手打線を封じ込んだ。
打線もそんな投手陣の頑張りに触発され、2試合での得点が20と、大爆発を決めていた。
そして迎えた決勝戦では、赤坂実業などの強豪チームも残っておらず、無名の公立校が相手だった。結果から言うと、安室高校によるコールド勝ちであった。
もはや勝負にならなかった。そのくらい、安室高校には追い風が吹いていたのだ。
肘井が復活し、1年生の新戦力も整った盤石な安室高校は、東京都春季大会において2連覇を果たすこととなり、無事夏の予選におけるシード権を獲得した。
春季大会において見事快勝による優勝を果たした安室高校であったが、試合に勝ったからといって傲る事は決して許されないのだ。
優勝はしたものの、今回の大会では安室高校の因縁の相手、赤坂実業高校と対戦していない。
キャプテンの金串の情報によると、赤坂実業高校のエースピッチャー、近衛は春の選抜甲子園大会における蓄積疲労により登板を避けたらしい。
という事は当然、夏の東京都予選では姿を見せてくるに違いないのだ。そういうわけで、今回の優勝は決して気を緩められるものではないのだ。気を抜いていると、途端に近衛に封じ込められてしまうだろう。しかしその事は、強豪安室高校野球部となれば、部員の内誰もが理解している事である。
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
いちにっ!いちにっ!いちにっ!
勝ったからといって調子に乗る事など一切無く、金串を初めとする部員たちは、今まで通り気を引き締めて練習に励むのであった。




