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3回戦の日を迎えた。
対戦相手は赤坂実業高校を破った、東京渡辺高校というチームだ。東京渡辺高校の情報はあまりないが、安室高校ナインにとってそんなことはどうでも良かった。
彼らが心がけるのは、練習の成果を発揮し、いつも通りのプレーを貫き通す事である。
この日も東京都営球場観客席には、多くの一般生徒たちが詰めかけていた。今となってはもう、1年生の今居、小久保に対して懐疑的な目を向ける者など誰1人としていなかった。
この2人はレギュラーとして1回戦、2回戦と戦っていくうちに、段々とチームメイトや一般生徒たちの信頼を掴んだのである。
「頑張れよー、小久保!!」
「今居ー!今日も完封だ!」
応援スタンドからのひとつひとつの声援に、今居はベンチからいちいちぼそぼそと反応する。
「完封完封って、簡単にいうなよな。
俺だから出来る事だけど、本来無茶振りだぜ」
「まぁ良いじゃないか。それくらい、期待されているんだよ、俺たち。1年生の底力を見せてやろうぜ!」
小久保は必死になって今居を鼓舞する。そんな熱い志を促進されようと、今居は熱いねー、と適当に遇らう。なんとも掴み所のない男である。
さあ、そして、3塁側ベンチには対戦相手である東京渡辺高校ナインが姿を見せた。
「おっ。あれが東京渡辺高校か。ガタイもそんな良くなさそうだし、何で赤坂実業に勝てたんだろうな」
「ホンマやな」
チームメイトが少し油断しているようなので、
金串はキャプテンとして1度喝を入れる事にした。
「おいお前ら!いつからそんなに偉い身分になったんだ!俺たちはな、去年の秋、初戦コールド負けを食らっているんだ、ゼロから這い上がる、下克上の精神で挑むんだっ!!!」
「たしかに」
「たしかに、金串の言う通りだな」
「そうだそうだ」
「ウッス!!!」
金串が言う事は自明なほど当たり前な事であるため、誰も異論を唱える者はいなかった。
寧ろ、金串のおかげで皆、気をひきしめ直す事が出来たともいえる。
こうして安室高校ナインは円陣を組んだ。
負ける事が絶対に許されないこの試合において、しっかり気合いを入れて臨めるようにだ。
「いつも通りのプレーな!」
「ウッス!!!!!」
「ワンフォーオール、オールフォーワン!」
「ウッス!!!!!」
「よし、絶対勝つぞぉぉぉ!!!!!」
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
ウッス!!!ウッス!!!ウッス!!!
対戦相手の東京渡辺高校の事など全く眼中にない、相手は自分自身だと言わんばかりだ。
安室高校ナインはこうして、試合前の時間を気合いを入れる時間とし、チームメイトを鼓舞しあった。
やがて試合開始の時間が迫り、後攻の安室高校ナインは守備についた。各ポジションは、1回戦の時から全く変わっていない。
レギュラー陣がそれぞれの守備位置につき、最後に先発ピッチャーの今居がゆっくりと、ピッチャーマウンドに上がる。
すると、応援スタンドからは大歓声が沸き起こった。




