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虐めの冤罪を吹っかけられたので本当に虐めてみた

作者: 下菊みこと

虐めの冤罪を吹っかけられたので本当に虐めてみた

「もう私をいじめるのはやめてください!」


「は?」


はじめまして、ご機嫌よう。私、カトリーヌ・タイユフェルと申しますわ。気軽にカティとお呼びくださいませ。公爵令嬢ですの。さて、今私、絶賛混乱中ですわ。理由は目の前にいる珍獣。平民、エミリ・スミュール様…通称ミミ様が何か喚いているからですわ。意味がわからないのですけれども、誰か人の言葉に翻訳してくれないかしら?


「そうだぞカティ。いくら私達が真実の愛で結ばれてしまったからと言って、ミミをいじめるのは間違っている。そもそも私を愛することはない、愛人も持っていいと言ったのは君じゃないか」


この頭の中にお花畑でも広がっていそうなボンクラはメルヴィン・ショワズール。哀しきかな、こんなでも公爵令息ですわ。私はメル様と呼んでおりますの。


「…えーっと。つまりあなた方は、私が嫉妬でおかしくなってミミさんをいじめたとおっしゃるのね?」


あまりにも馬鹿馬鹿しい言い分に、思わず確認を取ってしまう。


「そうだ。何か違うのか?」


「カティ様、ひどいです!」


はあ。そうですか。


「えーっと。ミミさん?私、平民の貴女に愛称を許した覚えはなくてよ?あと、いじめなんて何かの間違いじゃないかしら?」


「ひどいです、カティ様!またそうやって身分で差別して!それにまるで私が悪いみたいにお説教もしてくるし!意地悪です!」


「カティ!ミミをいじめるな!」



ー…







「あらそう…そんなにいじめられたいなら、本気でいじめて差し上げますわ」


「え?」


「は?」


「それではご機嫌よう」


怒り心頭な私は、彼女達の頭に拳を叩きつける前に早々に切り上げて女子寮に帰宅する。


はあ。全く。お花畑共の相手は頭に血が上りますわ。体に悪い。


突然話が変わるのですけれど、私、実は前世の記憶がありますの。そしてこの世界は、前世で日本という国にいた時に遊んだ乙女ゲームの世界と類似しておりますの。そしてそのゲームでの私の役割は悪役令嬢。最終的にヒロイン…ミミさんに男を取られてその腹いせにミミさんをいじめ、修道院送りになりますの。


ですから私、そのフラグを折るために懸命に努力しましたわ。まず婚約者のメルに恋をするのを抑えて、貴方を愛することはない、愛人も持っていいと告げましたわ。そして自分も結婚して跡取りを産んだら愛人を囲う予定でしたの。さらに、ミミさんにもいじめなんてとんでもない。なるべく関わらないようにして、たまにミミさんが無作法を働いた時にはフォローに回り、人のいない所でそっと注意して差し上げましたわ。


…その結果がこれ。


堪忍袋の緒が切れましたわ。もう修道院送りどころか国外追放処分でもいいですわ。徹底的にいじめて差し上げますわ。


ということで早速、いじめレッツスタートですわ!


ー…


ある日の学園生活の中で、ある噂が一気に広がりましたわ。それはミミさんがたくさんの殿方を引っ掛けて遊んでいる淫蕩な女だと言う噂。あらまあ。ミミさんったら心無い噂話に傷ついているそう。いつもなら私のフォローもあり、こんな噂はすぐに立ち消えますが、私、意地悪なのでもうフォローしませんわ。残念ですわね。


ー…


ある日の朝。ミミさんの机の上にたくさんの心無い落書きがされていたそう。しかも机の上には花瓶と菊の花。あらまあ、可哀想に。他にも私物が失くなったり、ぼろぼろの状態にされていたそう。可哀想なミミさん。


ー…


ある日の午後。


「むー!うー!」


「平民風情が調子に乗りやがって!」


「俺たちのマドンナ、カティ様を煩わせた罰だ!」


ミミ様が何故か私の信奉者の高位貴族の皆様に縛り上げられてタコ殴りにされたそうですわ。ああ、可哀想に。その美貌も見る影もありませんわね。


ー…


「カティ!いい加減にしないか!」


「あら、なんの話かしら?」


「近頃ミミへのいじめがエスカレートしている!もうやめろ!」


「そうです…もう、やめてください…」


「あら、私は直接何かをしたことはありませんわ。それにいじめをされた方々も私も高位貴族。平民になにをしようが大した罪には問われませんわ」


…まあ、ゲームでは修道院送りにされていましたけれども。


「くっ…なんて卑劣な!」


「そうそう。私、メル様が婚姻前から浮気した証拠を集めましたの。私、これを理由に婚約破棄させていただきますわ。もちろん慰謝料はふんだくらせていただきます。これで私達の婚約は終わりですわ」


「なっ!?」


「そうですわ。貴方、私の結婚の支度金として預けたお金でミミさんに貢いでいますわよね?それも当然返していただきますわ」


「ちょっと待て!愛人を持っていいと言ったのは君じゃないか!」


「ええ。あなた方があの日、私にいじめの冤罪を吹っかけてこなければ私もなにもする気はなかったんですの。…まあ、せいぜい新しい愛人を囲ってもいいと言ってくれる婚約者を探してくださいな」


「そっ…そんなっ!」


「ひどいです、カティ様!また私達をいじめるなんて!」


「元々いじめの冤罪を吹っかけてきたのはそちらですわ。せいぜい反省してくださいませ。ではご機嫌よう」


こうして私は無事婚約破棄できて、慰謝料もがっぽりといただきましたわ。もちろん修道院送りにもされませんでした。そして、愛人として囲うつもりだった侯爵家次男のダニエル・トゥールーズ様と新たに婚約しましたの。ダニエル様は次男なので侯爵位は継げませんが、ダニエル様のお父様の持つ子爵位は継げますわ。爵位こそ低い家に嫁ぐことにはなりますが、愛のある結婚が出来そうで幸せですわ。


いじめの冤罪を吹っかけられたら徹底的にいじめ返す。それも一つの選択肢ですわ。

結果、むしろ幸せになった

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― 新着の感想 ―
[一言] とってもスッキリとしていて、面白かったです。 この様なお話も楽しいと思いました。 有難うございました。
[一言] いいぞもっとやれ(*´ω`*) 最終的に爵位は下がれど幸せそうで何よりです
[良い点] この公爵令息、暗に平民と結婚できるか!言うとるぞ!
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