ドラゴンとの契約
ついにドラゴンが!!
俺は光と気配のするほうへ無心で這いつづけた。満身創痍のこの身体が生きるためには進むしかないと言っているようだった。
どれほど進んでいっただろう。数日たっているようなまだ数分しかたっていないようなもうよくわからない。
やがてふと気づくと湖のほとりに出たようだ。時間の感覚がわからなくなっていたが日が暮れているようであたりは真っ暗だった。湖の中心が赤く輝いているような気がするが身体の感覚がもうほとんどない。ここまでなのか・・・
「最後に水を・・・」
カッッ
「何だ・・・?ま、眩しいっ!」
ガアアアアアアアアアァァァァアアアアアアア!!!!
最後の力を振り絞ってせめて喉の渇きを癒そうと湖に近づいた瞬間「それ」は現れた。
「ようやく来たか。待ちわびたぞ。異界の勇者、いや、須藤銀次よ!」
「一体何が・・・ッッ!!??」
身体の内に響くような低い声がして顔をあげると目の前には全長20m程の銀色に輝く体躯、その数倍はあろうかという力強い翼、その巨大な身体の周りにオーラの様な赤い魔力を纏うドラゴンが浮かんでいた。
俺たちの世界でいう東洋風の細長い龍ではなく西洋風の竜、まさにドラゴンだ。
そのドラゴンが内臓がひっくり返りそうなプレッシャーを放っている。
「あ・・・あ・・ド、ドラゴン!!なのか!?」
「いかにも。我が名は‱〷㍵‴〷⊿。む?奪われておるか。まあいい、須藤銀次よ。お前の身体・魂を我にをささげよ。」
な、なに言ってるんだこいつは。なぜ俺の身体を?冗談じゃない!初めはそのプレッシャーにびびってしまったが怒りが上回ってきたぞ!
「ふざけるな!俺はまだ死ぬわけにはいかない!俺の身体をこんなに・・俺を裏切ったやつらに全てを返してやるまでは!」
そうだ。絶対に逆襲してやる。もし俺の身体が奪われて好き放題されるというなら今ここで死んでやる。このボロボロの身体に価値があるとは思えないがな。
「死ぬわけでは無いのだが。ふむ・・・魂に反発されるとあまり意味が無いな・・ならば契約という形でどうだ。お前の目的は復讐、いや逆襲と言ったか。我の目的も似たようなもの。お前の自我を奪う事はなく、力を与えてやろう。」
なんだか譲歩してきたぞ。だが本当に信用していいものかわからないな。
「力だって?それをして俺とお前になんのメリットがある!?・・・ぐっ!」
だめだ。体力と痛みが限界だ。もうそんな事を感じる余裕もないと思ったが最後に苦しいのは嫌だな。
「ああ、お前はあの者共に襲われていたのだったな。今ここで倒れられても困る。話が出来るぐらいには回復しておくか。・・・これでいいか。」
ドラゴンが俺に向けて手をかざすと温かい何かが流れてきて体の痛みが消えた。左腕や左目は無くなったままのようだがこれで死ぬことはないようだ。少なくとも今は。
「さて先程の質問だが、全てだ。我を受け入れるなら力の使い方次第でお前の望む全てが手に入るだろう。あの遺跡にもそう記述したはずだが。」
『異界の勇者降りし時、封印は解かれる。さすれば汝の敵を討ち滅ぼすだろう。』だったか。あれはこいつの記述したものだったのか。だがさっきからこいつが言っている言い方だと勇者なら誰でも良かったという訳ではなさそうだ。
「なぜだ!?なぜ俺なんだ!勇者は他にもいただろう!」
「異界より召喚されしものには能力が発現する者がほとんどだ。スキルと呼ばれていたか。その中でようやく我の器になりうる能力を持つものが現れた。それがお前だ。」
オートMリカバーが?これがなんの役に立つんだ・・・勇人にはあざけ笑われたこのスキルが。
「なんでこれがという顔をしているな。説明しておこう。契約には双方の理解がなくては後々問題になりかねんからな。」
「ああ・・・た、頼む。」
変に現代人じみているな・・・助かるには助かるが・・・
「お前の能力は周囲から自動的に魔力を吸収し自分に還元するというものだ。そもそもお前の魔力量はこの世界の人間、他に異界から来た者達と比べられぬ程の量である事を理解しているか?」
「いや・・・俺にそんな魔力量があったなんて・・・」
ステータスにはゲームでよくあるHPやMPの記載はなかった。魔力量がMPという事なんだろうが。
「この魔力量を増やすことはほとんどできん。例外を除いてな。」
「一応聞くが例外ってなんだ?」
「己の魔力を全放出する事だ。言うは易いが普通の者は寸での所で制御がかかり空にする事はほぼ無理であろう。元々膨大なの魔力量を持つお前が我が数回強制的に放出させてやったおかげもあり相当量の魔力量がお前にはある。」
「は?」
今「我が強制的に」って言ったよな?俺が魔力枯渇状態になったのは魔力訓練の時、後は勇人と立ち会いをした時か。あのときは俺が俺でないような感覚があったがまさか・・・
「ああ。2回目はお前があのようなわけのわからん奴にやられそうだったからな。お前の意識も薄かった事もあり我が少し入ってやったぞ。そのまま奪おうとも思ったがやはり合意なしでは上手くいかぬ。遠隔であったしな。」
「・・・・」
あの赤い魔力はそういう事だったのか・・・魔力を全放出する事により最大魔力量が増えるというのか。確かに仮に魔力を全放出したとしてもリカバーがなければ回復は難しいだろう。
そもそも全放出は難しいとあの王女も言っていたな。
「他にはよいか?無いのなら契約か擲つかこのまま死ぬか選ぶがいい。後者二つは双方の為にも選択してほしくはないがな。」
「あと一つ聞かせてくれ。なぜお前が自分でやらない。俺の目的と似たようなものと言っていたがお前の目的をはっきりさせてくれ。」
そんな力があるなら自分でやればいいのだ。なぜ人の力を借りなければならないのか。こいつは何をしようとしているのか。
「なぜ?我は封印されているからだ。これが見えぬのか?」
そういうドラゴンの手足には何重にもの鎖が巻きつけてありドラゴンを拘束しているようだ。見えぬのか?ってそんなの知らないしそんな所見てる余裕なんてないんだよ!
「我を封印した者共に目にもの見せてくれる!その為にはまず封印を解かねばならぬ。この封印は常に魔力を放出させ続けるモノのようで我も一定以上の力が出せん。この封印は異世界からの来訪者でなければ解くことは出来ぬのだ。」
「お前を封印したやつらって?」
「それに関しては今は話せぬ。だが後に話すことを約束しよう。お前たちにも無関係ではないだろうからな。」
恐らくこのドラゴンは嘘は言っていないだろう。確証はないがなぜかわからないけど確信がある。
「わかった。契約に応じよう。それで何をすればいいんだ?」
「あいわかった。賢明な判断が出来る人間で我も安心した。契約だが我とお前の目的を達成するまで双方協力する事をお前の魂に賭けて誓うか?」
「誓おう。」
「病める時も健やかなる時もだぞ?」
「あ?ああ・・・」
「戯言だ。誓うのなら我に名を付けよ。」
「名前だと?」
「そうだ。我の真名はあるが今は奴らに奪われている。それは別としてドラゴンとの契約はそのドラゴンに契約者が名を付ける事によって完了するのだ。」
名前、か。こういうのは苦手なんだよな。ゲームでも主人公の名前はデフォルトが一番良いと思っている口だし。デフォルトがないゲームはいつも名前にかなり時間がかかってしまう。うーん・・・よし。これでいいかな。
「リ・オウでどうだ?」
「・・・その点は必要なのか?」
「いや、なんとなくだけど・・・じゃあ無しでリオウにしよう。」
「ふむ、リオウ・・・リオウか!気に入ったぞ!銀次!ガアアアアアアアアアァァァァアアアアアアア!!!!」
銀色のドラゴン、リオウが天に向かってとてつもない咆哮をあげている。名前を気に入って貰えたのか嬉しそうにも見える。
「銀次!契約だ!我、リオウの力思う存分使うがいい!これより世界の命運はお前が握る!」
ポウゥン
「ん?おい!リオウ?」
ゴッッッ!!!
「う、うわっ!」
リオウがその巨体を光の粒に変え一気に俺の身体の中へ流れ込んできた。
「こ、これは!なんだ!?力が溢れて・・・!あの時と同じ!いや、それ以上の!」
勇人との立ち合いに負けそうになった時に身体を奪われかけた時以上の力を自分の内側から感じる。
(まずはその失った腕と目を何とかしなくてはな。)
!?こいつ直接脳内に!?
(案ずるな。お前の中に少し間借りするだけだ。お前の非になるような事はない。それより、少し痛むぞ。)
ゴキゴキゴキ! ベキベキゴキベキ!
「ぐ、ぐあああああああ!!」
左腕と左目に強烈な痛みが走った。このドラゴン!やはり俺を裏切りやがったのか!?
(契約を交わしただろう?そんな事する意味も価値もない。)
「はぁ、はぁ、はぁ、こ、これはっ!腕が!・・・それに目も!」
痛みが治まるとそこには東雲、さんに焼かれ勇人に切り飛ばされ無くなった腕が復活していた。若干というか見た目にもわかる程に淡く銀色に光っているが・・・
そして湖に映る自分の顔を見て見るとあの人型外敵のレイピアに突かれ失った左目も復活していた。こちらも本来黒目にあたる部分が銀色になっている。
まぁ色なんてものは大した問題じゃない。俺の目的のために少しでも力をつける必要がある。
やってやる!やってやるぞ!絶対に許さない。あいつもあいつらもあの国も。俺を裏切った事を必ず後悔させてやる!!
「おおおおおおおおお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
ドゴオオォォ!!
俺の決意に呼応するように巨大な深紅の魔力が俺から立ち上り天を突き上げた。
(共にゆこう。この世界への逆襲だ!)




