物価高に贅沢品であるチョコレートや高級菓子を求める行為に愛など有る筈もないのだからホワイトデーの贈り物を贈らされたリア充共は実は哀れなATMだと決めつける自称経済学者、価値に気付かされる
位階が高いアイテムほど価値がある。
最大は曰く第十位階。
しかし、俺は第十ニ位階を見た事がある。
そして、投げ捨てた事がある……。
冷や汗がドバっと吹き出す。
いやいや、とは言っても位階が1変わったところで大きく価値が変動する事は無い筈だ。
取り敢えず、物としての価値は絶対に無いが等級だけは高いアイテムの査定をしてもらい、アイテム等級だけの価値を教えて貰おう。
確か、欠けた剣とかを拾っていた筈だ。
名称:折れた龍断刀アズマフレイ
分類:折れた剣
等級:王宝級(世紀級、アルティメットレア、第八位階)
これも青銅の指輪と同じ王宝級。
しかし、青銅の指輪と違ってこれは折れている剣、つまり普通なら使い途の無いゴミ。
これに高値が付いたら間違いなくアイテムの等級は価値を決める上で重要な物になる。
「これはいくらになる?」
もし一定以上の等級のアイテムの価値がその等級で大幅に変わってくるようであれば、あの十ニ位階アイテムを全力で回収しにいかなければならない。
「こ、これは」
「折れていますが実に見事な」
「濃密な魔力が測るまでもなく感じられます」
「まずは等級を測定させていただきます」
天秤の様な道具から出された魔法陣の中央に折れた剣、ほぼ柄だけの剣が置かれる。
「お、王宝級!」
「何だと!? 折れてもなお、王宝級だと言うのか!?」
ふむ、まずは等級の鑑定が無事に成功した。
俺の鑑定で分かっても道具で判定出来なければ話が進まないから、これで第一関門は突破だ。
「もしや、折れている様に見えて元々この形状の剣なのか?」
「剣であれば“拒絶の鞘”を鍛冶師ギルドが持っていた筈だ。誰か、借りに行ってくれ。いや、私が行く!」
「何を言うか! マスターバーグと最も親交が深いのは同じくドワーフである儂じゃ!」
「個人的な親交が深くとも鍛冶師ギルドとの取引を管轄しているのは私です! ここは私が行きます!」
「いえ、お歴々はここで! この中で一番役職が低い私が遣いに行きます!」
「先輩はここに! 役職が低いって役職定年しただけではありませんか! 実質私が一番立場が下です!」
何故か急に、誰が鍛冶師ギルドに向かうかの争いが勃発した。
笑顔で落ち着いた雰囲気と声のまま、不気味に言い合っている。
「お借りして来ました」
「「「…………、ありがとう………」」」
争いを止めたのは黒子。
優秀だ。
「ええー、失礼致しました。こちらの鞘は“拒絶の鞘”と言いまして、剣であるかどうかを判定出来る魔道具です」
「それが剣として機能する状態なのか、もはや剣とは呼べない修復も極めて困難な状態であるのかを判定出来ます」
「この鞘に剣が全て収まれば、その剣は剣として機能する剣であると分かり、鞘に拒絶され入らなければ剣としての価値はありません」
「なるほど」
鑑定結果では剣ではなく折れた剣と分類されているから答えとしては、もはや剣としての価値は無い、が答えだ。
それを判定する魔道具と言う事か?
「それでは、判定させていただきます」
鞘に折れた剣が差し込まれようとする。
しかし、折れた剣は鞘には挿らない。
鞘が薄く光り、入口に空気の壁のような歪みが出来て侵入を阻んでいる。
バキンっ。
そして、その壁ごと鞘は砕け散った。
「なっ、鞘が壊れた!」
「これはどう言う事だ!」
「も、もしや、剣の力に耐えられなかったのでは?」
「あまりの切れ味に耐え切れなかったとでも言うのか?」
鞘が壊れたのは完全に想定外の事らしいが、結局判定は出来たのだろうか?
「弁償せねば……」
「剣の損傷具合も大まかに分かる需要のある魔道具ですから、確か前回の取引では240万フォンでした」
「240万か……」
判定どころでは無いらしい。
しかし、俺には関係ない。
「それで、判定は出来たのか?」
「し、失礼致しました!」
「鞘に収まる事は無かったので、こちらの剣に剣としての価値はありません」
「つまり、剣としての価値が無いにもかかわらず王宝級と言う事になります。通常、完全なる破損でアイテム等級は下がりますが、こちらの品は折れている事を踏まえても王宝級です。元の等級は少なくとも王宝級以上、間違いなく伝承に遺っているレベルの名剣です」
よく分からんが取り敢えず折れていても価値があるらしい。
そもそも王宝級を前提に言われてもその王宝級とやらにどれ程の価値があるのか知らないが、雰囲気からしてかなり期待出来そうだ。
いや、等級そのものに価値があったらその数段上の代物を投げ捨てた事が大問題になる……。
ここは期待したらダメなのか……。
高額買取を喜べないって何だ……。
「幾らになりそうなんだ?」
モヤモヤが長続きするのを避ける為、もう直球で答えを聞く。
「王宝級というだけでどんなに安くとも数億フォンの価値が付きます。私の知る限りの最低価格は7億8000万フォンです。取引例自体があまりに少ない為、確かな事は言えませんが通常は数十億から数百億の間を推移しているとされています」
最低価格が億後半だと……。
「それで、折れた剣だとどうなんだ?」
「王宝級は何れも国宝とされる程の価値が存在します。その性能は勿論ですが歴史的価値、秘術的価値も測り知れません。歴史に残っていない歴史的価値が存在しないものでも、何れ必ず歴史に名が残るとされています。折れた剣であってもそれは変わりません」
「秘められた力で言えば折れている事を考慮しても、一流の剣士が扱えば戦況を変えるだけの兵器になる力があると考えられます。詳細は各専門家に詳細に調べていただかないと不明ですが、おそらく国家の力や価値そのものを左右する程の価値があるかと」
「国家を左右?」
想定外のワードが出て来た。
王宝級、たかが王宝級で国家の力を左右する、だと?
「はい、王宝級は国家の切り札、事実上通常の国家が入手出来るアイテムの中で最も力ある宝具です」
「一般的に国家の力は一人の英雄の登場で大きく左右されます。例えば高ランクの魔獣、特にランク9以上の魔獣に数の力は通用しません。精強な軍隊がいても意味がなく、千人の騎士よりも一人の英雄が必要となるのです」
「ですが、どの時代にも必ず同じ数の英雄が生まれるとは限りません。高ランクの魔獣が現れその時に魔獣を討滅出来る英雄がいなければ容易くその国家は滅亡を迎えます」
「ですので、いつの時代でも手元にある高等級の武具は非常に大きな価値を有します。その武具が王宝級であれば精鋭を英雄に届かせる事が出来ます。王宝級の武具は国家に常に一人の英雄をもたらすのです」
「な、なるほどな…」
本当に折れた剣にそれだけの力があるのかは分からないが、王宝級が、正確には王宝級の武具がどんな扱いなのかは分かった。
武具と言うよりも戦況を一発で変える兵器。
かつ歴史的価値や美術的価値まである国宝であり国の価値をも左右させる。
……いやいや、まだ諦めてはいけない。
問題なのは捨てた玉がどれ程の価値があったかだ。
王宝級の価値が高くとも、その時点で国家の切り札であるのならば売却価格は既に天井に到達しているかも知れない。
であれば、実質的に数多に拾った王宝級以上のアイテムの内の1つをただ捨てたに過ぎないのだ。
まだ、慌てる必要はない。
王宝級の上は確か帝宝級。
しかしその査定の前に呪われても無く、壊れてもいない王宝級のアイテムで反応を見る。
適当に普通に使える王宝級と念じながらアイテムボックスから物を取り出すと、出て来たのはちょうど比較になりそうな一本の剣。
名称:【山断ち】クラウン・オブ・ヴィオール
分類:刀剣
等級:王宝級(世紀級、アルティメットレア、第八位階)
「これは幾らくらいだ? これも王宝級の筈だ」
「ま、また、お、王宝級……」
「し、失礼致します」
恐る恐る支部長達は剣を受け取るも、すぐに鋭い目つきになり鑑定を始める。
「この刻印はドンヴォール工房の、それも鍛冶貴族ドンヴォールが自ら用いたものだ」
「素材は間違いなくミスリル。ミスリルで剣を造れ、魔刻印を刻める鍛冶師など限られていますから、ドンヴォールの作製した剣に間違いありません」
「今から400年前に活躍したドワーフの名匠ドンヴォールが作製した武具は何れもアーティファクトとして現在でも高い評価を受け現役です。その名匠が造った総ミスリルの剣、これはヴィオール王国の至宝と言われた【山断ち】“クラウン・オブ・ヴィオール”かも知れません」
道具も使わずに見ただけでまたしても答えが当てられた。
やはり、ここの査定能力は高い。
だからこそ、査定結果は重要だ。
「【山断ち】とは確か、ドンヴォールが造ったとされる王宝三振りの1つ。その中で実際に使われ絶大な戦果を上げたドンヴォールの傑作とされる至剣ですね」
「【山の巨人】ドルゥーガを斬り、ヴィオール王国を滅亡の危機から救った逸話が有名ですが、ヴィオール王国は東側諸国、魔王軍の侵攻と共にかの王国は滅び、かの宝剣も共に失われた筈です」
「ですが、かのドンヴォールでも総ミスリルの剣は王宝三振り以外に打っていないと記憶しています。そして二振りの所在は明らかです。“クラウン・オブ・イスタリア”は勇者軍に預けられ、もう一振りの“クラウン・オブ・スカイ”は現在A級冒険者【白銀騎士】ロザエル氏が所持しています」
「となると、これは【山断ち】……、失われた宝剣、と言う事ですか……」
剣の詳細は無事に共有された様だ。
その価値は果たして。
「この剣は王宝級、それも国を守り抜いた実績ある宝剣です」
「この宝剣を欲するのは国家に限りません。魔王軍に侵攻され百年が経過した現在、勇者軍も欲するでしょう」
「加えてこの宝剣は特殊効果に支えられたマジックアイテムではなく、純然たる優れた剣です。おそらく剣士であれば、誰でも扱う事が出来る。これは特定の稀有な才能によって価値が左右されない事を示します」
「ロザエル氏は確か“クラウン・オブ・スカイ”を30億で購入した筈です。売却を行ったのは亡国ジェルエッツェの王家であり、売却条件は購入者の対魔王軍戦線への参戦、加えて王族との婚姻。つまり相当値引いて34億フォンと言う販売価値でした」
「おそらくこの宝剣をオークションに出した場合、34億フォンの3倍以上の価格で取引されるでしょう」
「…………」
大体、100億……。
ま、まあ、女神様が請求した賠償金の消費税分にも全く届かないが……。
それでも、100億……。
冷や汗がツーと流れるのを感じながら、王宝級の上、帝宝級の剣を出す。
名称:魔剣グライヴァ
分類:魔剣
等級:帝宝級
「……これは帝宝級の魔剣、グライヴァだ」
初めから詳細を教え、反応を探る。
「「「て、帝宝級!? ま、魔剣!?」」」
あっ、もう駄目な気がする……。
「「「……………!?」」」
影の様に佇んでいる黒子達からすら驚愕している気配が感じられる。
「こ、この魔力、確かに【山断ち】と比べても、別格です」
「魔剣は世界に八振りあるとされていましたが、現存が確認されているのは六振り、その内人類の手にあるのはたったの三振りです」
世界に三振り……。
・魔剣✕33振
・魔槍✕29条
・魔弓✕11張
・魔矢✕25条
・魔盾✕22帖
・魔銃✕5挺
・魔杖✕35本
・魔鎧✕42領
・魔鎌✕13挺
・魔鎚✕11挺
・魔飛具✕23個
・魔衣✕55着
・魔宝✕236点
何か魔剣、三振りどころか33振有るんだが、そしてそのシリーズらしきものも大量に有るのだが。
「魔剣グライヴァ、その名はどこかで……?」
「もしや、破滅の滅炎剣グライヴァでは? ガレドミリニア地方で語り継がれているあの」
「滅びの竜を討ち倒し、代償に王都を一夜にして灰燼にしたと言うあの伝説か……」
「もしかの伝説の剣であれば、いや帝宝級と言う時点で、その価値は軽く数千億フォン」
「…………」
…………等級が1つ上がって、価格が一桁上がった。
うん、もう駄目だ……。
名称:魔剣セラフスレイ
分類:魔剣
等級:英雄級
ダメ元で同じく魔剣をチラリと出してみる。
そしてボソッと一言。
「英雄級」
「「「「「……………………」」」」」
時間が止まった。
ヒョイと魔剣をしまって俺は笑う。
「ハハハハハッ!!」
眼力を込めて。
「「「「「は、はははははは…」」」」」
うん、何も無かった!
何も起きていない!
……だが、どうにかしてあの穢い玉を回収しなければ……。
本当に等級毎に価値が一桁上がるのだとすれば、賠償金どころでは無い価値となる。
絶対に、回収してやる!!




