ブランドチョコは大抵海外製だからバレンタイン商戦は資金を海外に流出させる売国行為であり貰う奴も非国民であると主張するこの日限定の愛国主義者、価値に気が付く
「それで、何でも買い取ってくれるって話だったな」
「は、はい、お、お任せください」
「さ、査定にお時間がかかる場合もございますが、ご容赦を」
「そ、それだ!」
「それだ?」
「い、いえ、大切な事なのに言い忘れてしまいまして、つい」
「なるほど」
「価値のあるものほど、査定にはお時間がかかります。数が限られたものは競って購入される場合が多いものでして、時価なども有りますし、一概にこの場では回答出来ないのです」
「そう言うものなんだな」
出来れば早く現金が欲しかったが、そう言う事であるなら仕方が無い。
まあ、全てがそうと言う訳でも無いだろうから、幾つも査定してもらおう。
まずは確実に価値のあるものからだ。
アイテムボックスから取り出したのは宝石が散りばめられた銀の剣。
名称:儀礼剣
分類:剣
等級:最上級(生涯級、レア、第五位階)
鑑定で最上級と出た、文字通り最も価値が有りそうなお宝だ。
儀礼剣を見せると支部長達の目付きも変わる。
所謂プロの目だ。
さっきまでは俺というカリスマビップに圧倒され緊張が前面に出ている事もあったが、今は冷静沈着そのもの。
安心して任せられる。
「ふむ、見事な宝剣です。剣の意匠と宝石の種類からおよそ400年前程前にアドルフリート王国で作られたものですな」
「この側面に飾られた薄い水色のサファイアは400年前のアドルフリート王国で新たに発見されたダンジョンから多く算出された“フルルリートの涙”です。しかし、かのダンジョンは数年後に構造が変わり、この宝石は二度と産出されなくなりました」
「希少な“フルルリートの涙”がセンターではなくサイドストーンとして使われているこの剣は、ほぼ間違いなく400年前のアドルフリート王国で作られた宝剣でしょう」
「刀身は純銀。400年前に作製されたにも関わらず錆が一切無い。宝石に関しても保存状態が極めて良好です」
俺が鑑定した結果に書かれてない事まで次々と述べてゆくが、特にスキルを使っている様子はない。
それとも単純に害獣共の鑑定が下手で分かりやすかっただけか?
「鑑定スキルを使っているのか?」
「残念ながら、鑑定スキル持ちは我々の中にはおりません。商業ギルドでも鑑定持ちは非常に希少なのが現状でして」
「そうなのか」
ただプロの目だけで査定していたらしい。
そして鑑定スキルは実は珍しいときた。
良い事を聞いた。
俺はこの黄金スーツを選んだように物の価値が分かる男だが、その経緯や歴史までは流石に分からない。
だが、ここで鑑定スキルが使える。
鑑定スキルがありふれているのなら、鑑定を使えば鑑定を使ったと悟られる可能性が高く、見つかれば鑑定しなければ物の価値が分からないと言う烙印が押されてしまう。
しかし鑑定スキルが珍しいなら、そもそも鑑定していると言う発想が湧かないからこっそりカンペを読んでもバレない。
上手く使えば物の価値が分かるモテ男一直線である。
「ただ勿論、限定的な鑑定方法はご用意しておりますのでご安心を。魔力の測定をしてもよろしいですか?」
「ああ、構わん」
鑑定スキルに準ずるものがあるのかと思ったら、取り出されたのはルーペ。
道具に頼らなければ鑑定出来ないのであれば俺の敵ではない。
やはり鑑定スキルはカンペとして使える。
「この宝剣は魔力を持っています。しかし纏っているだけの様です。魔法が込められたマジックアイテムの宝剣ではなく、魔法がかけられた宝剣の様ですね。魔力を有していない事からアーティファクトでは無いようです」
「格を測定してもよろしいですか?」
「格って剣の格か?」
「いえ、測らせていただきたいのはアイテムとしての格、アイテム等級です。アイテム等級が高いアイテムである程、儀式魔法等で対価にした時の価値、魔法の効果が変わって来ます。その為、道具としての価値が無い様な物であっても、等級が高いアイテムは魔力源として使えるので高値で取引されます。査定においてはこのアイテム等級によって最低価格保証が決まって来ます」
「そんな使い道があるのか。だったら後で折れた剣やらも見てもらおうか?」
「お任せください。では、アイテム等級を測定してもよろしいですか?」
「じゃんじゃん測ってくれ」
「承知いたしました」
その返事を待っていた黒子が、テーブルの上に天秤の様な道具を置く。
片側の皿には金貨が載っており、もう片側には何も乗っていない。
「では計測を開始します。――金を対価に願い乞う――」
支部長が呪文を唱えると、天秤に載せられた金貨が金色の光を発する。
同時にそこを起点に張り巡らせられていた回路にその光が流れ、光は対の皿へ。
ゆっくりと天秤は平行となり、中心の針が真上を指すと、テーブルの上に金色の魔法陣が現れた。
支部長は宝剣をその魔法陣の中央に載せる。
天秤は空の皿の側に徐々に傾き、やがて止まった。
「結果が出ました。この宝剣は第5位階、最上級に分類されるアイテムです」
「それで価格は?」
「もう少々お待ちを。今回のアイテム等級での最低価格はこの宝剣の希少価値等を下回っています」
「アイテムの等級はあくまでも価値の最低価格を決めるものでしかないと言う事か」
「非常に高位の等級、アーティファクトと呼ばれる域になりますと話は変わって来ますが、基本的にはその認識となります。アイテム等級の評価が物の性能や希少価値、時価等を上回る事は殆どありません」
鑑定で一目で確認できるアイテム等級がそのままアイテムの価値であるなら楽だったが、そこまで単純では無い様だ。
まあ俺は一流が分かる男。
大した問題では無いが。
「刀身も柄も全てが銀であり、400年前に作られたにも関わらず錆の一つも無い。同様に宝石の保存状態も完璧。この状態は400年前の遺物の中でもトップクラスの保存状態と言えるでしょう」
「アドルフリート王家の紋章が彫られている事からおそらくこの宝剣はアドルフリート王国で臣下への褒美として王家から与えられたものです。褒美としての性質から400年前の貴族家が家宝として受け継いだレベルの一品でしょう。歴史的価値が付いた今では当時の価値を上回ります」
「“フルルリートの涙”1つでもこの大きさでは300万フォン以上です。それがサイドストーンとして計8粒。これだけで2400万フォンの価値があります」
「以上の結果から、査定結果をお伝えします。アドルフリート王国の宝剣、その査定価格は4200万フォンとなります」
「ほう、4200万か。悪くはないな」
銀製の剣、おそらく銀食器よりも遥かに実用性が無いただの飾りが4200万で売れるとは、想像以上の結果だ。
しかし、女神様が喜ぶ額はこの程度では無い。
ほぼ国家予算な賠償金と比べたら消費税分も無い微々たる額。
しかし俺が持っている害獣共から拾い上げた戦利品の数からしたら、この宝剣も無数にある内のただ一つに過ぎない。
まだまだある数を売っていけば目標金額にも届く筈だ。
どんどん査定していこう。
「第六位階家宝級、黄金の長杖、作製地域および時代は現時点で不明。柄は全て純金、宝珠は闇属性に染まった水晶。魔力あり。効果は強度維持、闇属性魔法の増強。水晶の劣化具合と特性からおそらくは主が高位アンデッド化した事により変質した副葬品。価格は歴史的経緯を調べれば更に上がる可能性がありますが、分かる範囲では2億フォンです」
「第六位階家宝級、青銅の長杖、保存状態は極めて良好。こちらは材料以外は黄金の長杖と同様です。査定価格は50万フォンとなります」
「第五位階最上級、青銅の剣、意匠からおそらく300年前頃にペルージェ地方で騎士の埋葬品として使われてきた剣です。ペルージェ地方で起きたデュラハン=ラデルジェンの惨劇事件後から騎士の副葬品として遺体が悪霊に乗っ取られるのを防ぐ為に捧げられる様になった護霊剣と呼ばれるものですが、その要となる魔法的効果が失われています。錆等が無く魔法効果以外の保存状態は良好ですが、最も重要な部分が失われている為、その査定額は6000フォンとさせていただきます」
決して、決して純金と青銅の違いが分からず純金だと思って査定に出してしまった訳ではないが、断じて純金と青銅を間違えた訳ではないが、やはり説明にあった様にアイテム等級よりも材質等に価格は左右されるらしい。
それにしても、高級品のみならず価値が無いに等しい青銅の剣についてまで査定できるとは、流石はプロだ。
もしかしたらその手の情報に習熟出来るスキルやらが存在しているのだろうか?
まあ、鑑定が使える俺にはそんなスキルが存在しても大した意味が無いかも知れないが。
試しに鑑定で同じ程度の情報が手に入るか見てみる。
名称:青銅の剣
分類:剣
等級:最上級
効果:なし
説明:かつて護霊剣であった青銅製の剣。ズージェ王国で300年前に作製された。護霊剣としての力は今は無く、通常の青銅の剣と何も変わらない。
うん、大体は査定で言われた事が書いてある。
やはり完璧な俺には目利き能力が備わっていたらしい。
勿論、鑑定が無くとも純金と青銅の違いくらい一目で分かるが、査定結果を確認する為にも一度、軽く鑑定してから査定に出そう。
まずは金ピカのブレスレット。
名称:青銅のブレスレット
分類:腕輪
等級:最上級
次。
金ピカのネックレス。
名称:青銅の首飾り
分類:首飾り
等級:最上級
次。
金ピカの指輪。
名称:冥王の指輪(青銅)
分類:指輪
等級:王宝級
効果:闇属性魔力付与、魔力増幅、透明化、精神汚染、冥王の呼び声、不壊
次。
「おっ、お待ちを! い、今の指輪は?」
「ただの青銅の指輪だが?」
「み、見せていただいても?」
「構わんが」
プロでも青銅と金を間違える事がある様だ。
査定の誤差としてどの程度間違うのか見せて貰おう。
「まずは等級を」
天秤が一気に傾く。
「お、王宝級です!」
「や、やはり、間違いない!」
王宝級とは確か。
創世級(始原級、ワールドレア、第十二位階)
神話級(神代級、ゴッズレア、第十一位階)
英雄級(万年級、ヘロスレア、第十位階)
帝宝級(千年級、レジェンドレア、第九位階)
王宝級(世紀級、アルティメットレア、第八位階)
秘宝級(百年級、ウルトラレア、第七位階)
家宝級(世代級、スーパーレア、第六位階)
最上級(生涯級、レア、第五位階)
秘宝級の下に位置する等級で、最も価値がある最上級から数えて4番目の等級の奴だったな。
青銅製でアイテム等級までも低いとは、救いようが無い無価値アイテムだ。
「間違いありません……。この失われた古代魔王文字、『冥王の指輪は全てを統べ、冥王の指輪は全てを見つけ、冥王の指輪は全てを捕らえて、冥界から逃さない』。伝承と完全に一致します……」
「遥か昔、異界の勇者に追い詰められた冥府の魔王、通称冥王は異界の力で勇者に対抗しようとした。異界において強大な力で地上を闇の世界にしたと言う異界の冥王の力の根源を、再現した。そうして造られたのが“冥王の指輪”。異界の勇者は何とか冥王を討ち倒し、その金の指輪を火の山に沈めた。しかしそれは偽装。真に冥王の力が込められていたのは金ではなく青銅の指輪。見逃されてしまった青銅の指輪は戦利品として当時最も栄えていた王国の国王に献上され、そして国王は汚染された。そして王国は大いに乱れた。周辺諸国全てに宣戦布告し、暴虐の限りを尽くした。まるで、冥王の様な力をもって瞬く間に支配下においた。そして新たな冥王となった。しかし、冥王を倒しても次の冥王が現れ続けた。冥王の力の根源が指輪であると分かった時には、既にその被害は冥府の魔王がもたらした破滅の比では無かったと言います。しかし、そんな指輪を大戦の混乱でいつしか失われてしまった」
「こ、この指輪は、本物です。ど、どこで、これを?」
「大量の害獣を駆除した後のドロップアイテムの1つだからな。何からドロップしたのかは分からん」
よく分からんが、希少なものらしい。
「青銅の指輪に、価値なんてあるのか?」
「ええ、世界を滅ぼしかけた指輪です。その等級も王宝級。危険ですが、厳重管理して魔法の触媒等に使う事で、国力を増強する事も容易いでしょう」
……ちょっと待て。
アイテム等級が高いものほど魔力源に使えるとか言ってなかったか?
……もしかして、最上級が一番上じゃない?
「……参考までに聞くが、アイテム等級の一番上は?」
「位階の数字が大きくなる程、アイテム等級は高く、最も高いものは第十位階、英雄級と言われおります。伝説によると聖剣がその等級であるとか」
……その上の上の第十ニ位階、ゴミだと思って捨てちまったぞ……。
……ヤ、ヤバい……。




