祭日とは文字通り祭りであり神を奉る日であるから祭日を捏造する輩は神に対する叛逆者であるとこの日だけは断じる何故か自称ではない大聖人、女神に国を貢ぐ
「取り敢えず、死にましょうか」
突如現れた女神様。
そして突如繰り出される神の力が込められた拳。
「ぐぼっ!?」
女神様から拳をいただいた俺は床に激突。
床を粉砕し、階を貫き、そして大地を抉る。
貫き破壊したのはいた場所から下なのに、天井が崩れ落ち空が拡がってゆく。
「ちょっと誤解! 誤解だから! まずは話を!」
「聞けばこの都市を破壊したのは貴方の様ですね? 誤解で都市は壊滅しません。そんな事をして、私の名声がどこまで穢されるか。私は貴方の仲間だと誤認されているんですよ? 覚悟は勿論、出来ていますね?」
「いや仲間なのは誤認でも何でもないでしょう! それどころか愛し合っている仲なのに!」
おっと、つい勢いで未来の事を言ってしまった。
「……死では生ぬるい様ですね」
膨れ上がる殺気。
その圧はまだ何もしていない筈なのに比喩抜きで天を鳴し地を動かす。
「あと、都市を壊滅させているのは女神様じゃ?」
「…………」
俺はせいぜいこの城までしか壊していない。
元々愚王のせいで壊れていたりもしたが、それが今や全方面が被害を受けているのが分かる。
と言うか、普通にひび割れた地の裂け目からそれが見える。
きっと、空から見たらクモの巣状にこの都市が割れているだろう。
そう、これは、女神様によって俺が床に叩き込まれた余波だ。
「お止めください御貴婦人!」
「このままではこの都市が!」
一緒に来たらしい勇者軍の戦士達が青い顔で必死に女神様を諌めている。
「……不可抗力です。多少の犠牲、仕方がありません。全ては私の名を穢さぬため。諸悪の根源は、ここで絶えさせましょう」
しかし効果が無い。
既に破壊してしまったのだから、気にしても仕方が無いと割り切っていらっしゃる。
この都市と言うよりも土地を砕きそうな圧倒的覇気が揺らぐことはない。
寧ろ強まる一方だ。
俺も諌めなくては。
ここは女神様に貢ぐ国。
資産価値がこれ以上下がってはたまらない。
「実はここ、女神様に捧げる国なんだ!」
「捧げる? ごほんっ、どうやら誤解があったかも知れません。一先ず、話を聞きましょう」
さっきまでのプレッシャーが幻覚であったかのように霧散。
国を捧げると言う言葉で一瞬で態度が変わった。
流石は女神様だ。
「実は女神様の為に城を買ったんだが、ここの連中にぶち壊されてな。しかも取り上げるとか宣う! 女神様の為に買った城なのに!」
「私の城を、破壊?」
王国の連中にはまだ余所行きの微笑みを浮かべながら、底冷えする美しい声で質す女神様。
「い、いや! 破壊と言っても壁に穴を空けただけで!」
「ほう、壊したと?」
「そもそもあれはアルベーム王国のものだ!」
「三十億払って女神様の為に用意したのに」
「私の三十億に、傷を?」
よし、完全にこちらの味方に出来た。
「覚悟は、出来て、いるの、でしょうね?」
死の気配が、死そのものとすら言える圧倒的ななにかが場を制圧する。
「怒りをお鎮めください!」
「無辜の民に御慈悲を!」
必死に止める勇者軍の面々。
王国の連中は気絶すら許されずただ口をパクパクさせている。
「まあまあ女神様、全部消し飛ばしたら賠償金が取れなくなるから。元々城を破壊された賠償金を回収しに来て、抵抗されてこの有様なんだ。その迷惑料延滞料含めてたっぷりいただこう」
「なる程、そう言う理由でしたか。皆さん、聞きましたね? この国は私の城を収奪しようとし破壊までした。それを咎めた善良なる我が使徒を攻撃し、虚偽で勇者軍を動かした。あまりに罪深い!」
未だに威圧を纏いながら周囲に問う女神様。
さり気なく俺の立場が仲間だと誤認されているから、善良なる使徒へと大幅に格上げされている。
「その様な国、この世に残して置く訳にはいきません。ですよね?」
「い、いえ…」
「ですよね?」
「は、はいっ!」
「勇者の名の下に、この国は消し去るのが当然! それが世界の正義!」
威圧のみで曰く歴戦の猛者らしい勇者軍の面々を屈服させ、未だに一言も発せられないこの国の連中を睥睨する。
女神様劇場からは、もはや何者も逃れる事は出来ない。
「ですが、罪無き民を巻き込むのは本意ではありません」
威圧しつつも慈悲深き笑みを浮かべ、神々しい光を発する女神様。
それはまるで地獄に垂らされた蜘蛛の糸。
驚異の地獄と蜘蛛の糸の同時展開。
しかし、糸を垂らされた側はそれを掴まざるにはいられない。
例えその糸の先が輪っかで、首に引っ掛けるしか無いとしても、それは地獄において紛れも無く救いだ。
「ここは、賠償金で手を打ちましょう」
「は、はいっ!」
巧みな威圧でやっと愚王の発言を許す。
発言を許しても、発して良いワードは一つしか許されていないが。
「私の城は、三十億でしたね?」
「ああ、きっちりピッタリ三十億だ!」
「では、三十億の城の修繕費として三百億」
「「「さ、三百億っ!?」」」
サラッと十倍のふっかけに凄まじい威圧をされていた王国側の人々も含め驚きを顕にする。
「当たり前です。城はアルベーム王国のものと言っていましたが、かつての所有者が居るのであれば中古物件、つまり価値が新築から下がった状態で三十億です。建設費は新築価格であるとすると、城を建てる労力や資材が中古価格である三十億で収まる筈がありません。修繕費も新築価格から推算するべきです。加えて貴方達が城を奪いたい程の価値、歴史的価値も存在しています。歴史的建造物の修理となると、伝統技術が必要になります。その技術が一般的であった築城当時よりも、その技術が珍しいものとなった現在の方がコストがかかるのは当然です。城の修繕には、新しく城を建てるよりも費用が必要な事も珍しくありません。三百億など安いくらいでしょう」
「なるほど、確かに」
俺も三百億は凄まじいふっかけだと思っていたが、そう説明されると納得してしまう。流石は女神様、抜け目が無い。
見れば王国側も勇者軍も押し黙ってしまった。
「次に」
「「「次にっ!?」」」
思わず黙った面々だが、女神様から飛び出してきた言葉に反応せざるを得ない。
「我が善良なる使徒を殺害しようとした賠償金が千億」
「「「せ、千億っ!?」」」
「やはり慈悲をかけ過ぎですね」
「いや、慈悲深くて驚いているのでは無くっ!」
「流石にそれはっ!」
「三千億にしておきましょう」
「「「さっ、三千億っ!?」」」
もはやぼったくり業者も慈善活動家に見えてしまいそうな容赦の無さだ。
「この忠実なる我が使徒は魔王軍の幹部をも討ち倒す世界の希望です」
へぇ〜、そうなんだ。
まあ、それっぽく頷いていよう。
「そうですね」
「は、はいっ!」
「我らは救われましたっ!」
女神様の圧の籠もった問い掛けに勇者軍はそう答えた。
何だか知らないが、俺は勇者軍公認になったらしい。
「救われた命は数知れず、これから守る命も無数にある! 貴方達は、そんな彼を自分達の欲の為に亡き者にしようとした! この際、命の尊さという当たり前の事を説くのは止めましょう。それは自ら知っていなければいけない事で、人が調教された獣ではないように、神からも教えられるべき事ではありませんから」
「そ、そんなつもりは…」
「し、知らずに…」
「貴方達には人の理すらも難しかった様ですね」
命の尊さについて説かないと言いつつも、話の内容を人の道にズラし王国に罪人、いや獣のレッテルを貼り付ける。
なにか言う度に醜い足掻きに変換されるレッテルを。
「もう簡単に、賠償金の話のみにしましょう。一万の人々が一日に生み出す富は幾らになるでしょうか。一日一万の価値を生み出したとして、一億の価値が創出されます。一年で三百六十五億の価値が創出されるのです。我が使徒が守りこれからも守る人々は万では数え切れません。人の命は金銭に変換する事は出来ません。しかし貴方達は罪の指標としてそれだけの事をしたのです。貴方達が罪を償うにはそれだけの対価を支払う必要があります」
「で、ですが、三千億というのは……」
「やはり少な過ぎですよね」
決死とも言える懇願の返信に女神様は笑顔で処刑通知。
「五千億にしておきましょう」
「ひぃっ!!」
「そ、そんな!!」
「やはり安い…」
「黙れお前達!! 払わせていただく!! いや五千億払わせてください!!」
流石の愚かな王も、拒否する毎にどうなるのか気が付いた様だ。
一転して全力で受け容れた。
「次に」
「「「つつつつ次にっっ!!??」」」
女神様は止まらない。
容赦の無い女神様は素敵だ。
「では賠償内容をまとめます。アルベーム王国は賠償金一兆七千三百億フォンを支払う。支払いは分割払い。毎年の支払額はその都度相談。未払いの賠償金の残り額に対して毎年1%の分割猶予料を支払う。土地、各種権利、人を含めた物納も可。賠償金捻出の為の民への増税の禁止。この措置は善良なる市民に対する我らからの慈悲であるとの周知徹底の義務。我らに対する悪評が発生した場合、封殺及び解決する義務。悪評が発生した場合は賠償金残高に対して5%の懲罰金の支払い。襲撃者及び親族の人じt…労役奉仕の義務。労役期間は賠償状況により変動。賠償の第一弾として王権の制限及び一部貸与を行う。その王権貸与分として、国王及び貴族家当主、その国家の職務に従事する者の任命と罷免は我々の許可を必要とする。現国王、現当主、現職の者を罷免させる権利はここに含まれない」
女神様が受け容れさせた賠償内容を読み上げてゆく。
賠償金額は容赦ない脅迫、じゃなくて交渉の結果、一兆七千三百億という訳の分からないレベルの額となった。
しかも、分割払いも出来ると慈悲を見せた体を装いつつ、分割払い中は利息的なものが発生する契約まで飲ませている。
女神様の言い分では、さっさと払う意思を持たせる為と言っていたが、本音では少しでも多く毟り取る為だと思う。
何故なら、支払いの拒否はそもそも女神様が物理的にさせないからだ。
まあ、労役と称して加害者の家族も含めた人質、じゃなくて保険も飲ませたから単純に支払いの意思を持たせる為でもあると思うが。
しかし逃げられない条項を多く飲ませたからこそ、金銭が発生する契約は女神様の性格からして金銭が主目的だと思う。
特に悪評の封じ込め云々は確実に発生するであろう風評被害から搾り取ろうとする魂胆に違いない。
王権の一部も奪っているが、権力に関しては脅迫、じゃなくて交渉の感じからして金銭程には興味が無い様子だった。
そもそも女神様という文字通り別次元の地位があるから王権程度のものは要らないのだろう。
王権の制限等は単純に国王交代等による責任逃れを封じる為だ。
要は勝手に辞めるな、辞めるなら俺達の許可を取れという楔である。
ただ、金額の大きさといい王権の制限及び一部強奪といい、実質的に国家をぶん取ったと言ってもいいと思う。
第三者である筈の勇者軍ですら終始青い顔でいた始末だ。
反対に輝かしいばかりに明るい顔の女神様に話し掛ける。
「俺からの貢物の感想は?」
「今回ばかりは感謝します。良くやりました。良い事も出来るじゃないですか。今後もその調子で」
「よしっ、任せてくれ!」
「「「「「(い、良い事……っっ!? 今後もこの調子……っっ!? 任せてくれ……っっっ!!??)」」」」」
何故か、無言でも場の意志が俺と女神様以外で強固に一致した気がするが、きっと気のせいだろう。
顔色がブルーハワイに近付いているのも気のせいだ。
「では、まず物納から始めましょうか」
「はっ、はいっっ!!」
本当の笑顔のまま、愚王達に凄まじい圧力を与えて命じる。
心の底からの笑顔、この表情が見れて本当に良かった。
これからもこの調子で女神様に貢いでゆこう。
「まずは王太子エーリッヒ、本件の筆頭加害者として奉仕活動を命じます」
物納としてまずは人質…、じゃなくて奴れ…、じゃなくて労役を科すとは流石は女神様だ。
初っ端から容赦が無い。
「お、お待ちを…」
「王太子殿下はこの国の…」
「わ、私を誰だと…」
「何か、異論はありますか?」
「「「ヒィッ!?」」」
女神様は笑顔のまま宇宙が落ちて来るが如くプレッシャーを放つ。
異論はあるかと聞いているのにまるで聞く気がない。
「「「ど、どうぞっっ!!」」」
「貴様等ぁーー!!」
いい気味だ。クソハーレムチンピラ王子に王太子という地位など要らない。
俺達の下僕がお似合いである。
「ん? 主犯だと言うのに拒否だと? 反省が足りて無いんじゃないのか?」
「なる程、そういう事ですか。賠償が不十分かも知れませんね」
俺のフォローに女神様も乗っかる。
「ヒィッ! 愚息は深く反省しているっ! 口が悪いだけなのだ! 遠慮なく酷使してくれ!」
「ち、父上っ!!」
これ以上賠償金を増やされては堪らないと、愚王にまで売り飛ばされるクソハーレムチンピラ王子。
ざまぁ。
「ビシバシこき使ってやるよ。俺の代わりにトイレで俺のケツを拭く仕事、俺の代わりに俺の鼻クソを穿って代わりに食う仕事、特別に重要な仕事を任せてやろう」
「な、何だとっ!?」
「おっと勘違いするな。俺は鼻クソを食わねえからな」
「そこに驚いてるのではないわっ!! 悪魔を越えるなっ!!」
「反抗的だな?」
「や、やめろ!! 誠心誠意働いてやるからそれだけはやめろぉーー!!」
「それはお前の働き次第だな」
まだまだ反抗的だが、一先ずはここら辺で勘弁してやろう。
これ以上は女神様に迷惑がかかる。
「では、服従の証拠として下着一枚になりなさい」
「くっ…」
女神様の屈辱的な支持にももはやクソハーレムチンピラ王子は従う事しか出来なかった。
ざまぁ、はははははっっ!!
「そこの貴方も、そこの貴方も、同じ様について来なさい」
同じ様にして、パンツ一枚の男達が次々と女神様に指名され服従の列へと加わってゆく。
パンツ一枚の各種イケメン達に囲まれた姿は、元々財宝を纏っている事もあって、超絶的なセレブ感が更に増した。
うん? イケメン達?
あ、あれ?