チョコレートを売る為に他文化の内容を捻じ曲げる行為は侵略者と変わらないものであり即時停止するべきだと主張する自称国際評論家、再度取り立てに向かう
バレンタインデー投稿です。
盛大に崩れ落ち砂埃を未だに上げる城壁から堂々と街に入る。
カイゼル髭のおっさんが地面を引き飛ばした影響で空から岩石が振り続けているが、それが鬱陶しい下っ端チンピラを盾の内側に縫い止め、邪魔者は少ない。
「止めろぉぉーーー!!」
「舐めるなぁーー!!」
「“ファイアジャベリン”!!」
だが、ゼロでは無いのが残念だ。
「続けぇぇーー!! 民を守れぇーー!!」
「騎士団が失敗した!! 野郎共ぉ、征くぞぉーーー!!」
「報酬は弾む!! 冒険者達よ!! 人々を守れぇーー!!」
加えて、城壁の中には新たな邪魔者達がいた。
チンピラ王子一家が夜逃げしたらどう責任とってくれるのだか。
直属の部下ではないだろう冒険者とかも混ざっているようだが、多分報酬を出すのはチンピラ王子達だろうしこれも賠償金に上乗せしておこう。
と言うか、ここまで失礼な事を重ね続けて俺に賠償金を払い切れるか?
一応、国らしいがあんなチンピラ一家にチンピラ兼ポンコツな部下と失礼な国民しかいないのだから国力もポンコツに違いない。
王城だって全壊しているし。
不動産なら少なくともこの街があるが、その価値はただに等しい可能性だってある。
首都圏の一軒家と田舎の一軒家の価値が大きく違う様に、規模が大きく立派そうな建物であれば高額とは限らない。
寧ろド田舎の屋敷では管理費の方が遥かに負担だと、家より屋敷の方が安い可能性も無くはないだろう。
この国の中では一等地である筈のここも、狂王の凶行のおかげで被害を受けている有様だ。
確実に修理費の方が高い物件も少なくなく、インフラも各地でダメージを受けているので元より地価は下がっているに違いない。
総合的に考えて、残念ながら不動産は期待出来ないさそうだ。
だからといって、どう考えてもポンコツの国で頭を使う必要のある産業が発展している筈が無いし、賠償金として回収する対象が無いかも知れない。
無かったら面倒だが襲って来た奴等の個人資産も回収するとしよう。
うん、いくら国の依頼だからといって俺に危害を加えようとした罪が帳消しになる事は無いのだから、容赦なく取り立てるのが当然だ。
場合によっては、依頼を受け入れた冒険者が所属する冒険者ギルドの責任を追求し毟り取ると言う選択肢もある。
と言うか、世界的な組織らしい冒険者ギルドの方が確実に金を持っている筈だ。
どちらにしろ、後で徴収しに行こう。
他の別口で襲ってくる奴らもいるようだが、賠償金の支払いが難しそうだったら肉体労働でもさせるか。
マグロ漁船にでも放り込めば儲かるかも知れない。いや、この世界だとマグロが売れない、もしくはいない可能性もあるか。
「鉱山で鉱石を掘らせ続ける、何なら臓器売買という手もあるか」
「臓器を売るだと!! やはり人間ではないな!!」
「聖職者を呼べ!! 悪魔の可能性がある!!」
「応援はまだか!!」
攻撃、と言うよりも士気が何故か高くなった。
こちらは態々返済手段まで考えてやったと言うのに、本当に失礼な連中だ。
後で返済計画の立案料も徴収しよう。
「“ロックフォース”!!」「“ジャミングスモッグ”!!」「“バーニングアロー”!!」「“ホーリーソード”!!」「“バスターブレイク”!!」
鎧の大男が盾から引きつける様なオーラを発し、その背から暗殺者風の男と弓使いがそれぞれ煙玉と燃え盛る矢を放ち、横から駆け出して来た剣士が剣に光を受け取りながら剣を振り下ろして来た。
剣の柄を掴んでそのまま剣士ごと大盾に投げつける。
「「「「「なっ!?」」」」」
剣と大盾は衝突しエネルギーは破壊力へと転換。
爆発のような衝撃波を発生させ、五人どころか周辺に居たチンピラ共を散り散りに吹き飛ばす。
激しく壁に激突し、もしくは突き破った幾人かはそのまま気絶。
「【無限の戦英】が一撃で!?」
「王国最強の冒険者パーティーをこんなにも簡単に!?」
「B級冒険者パーティー、五人揃えばA級にも匹敵すると言われていたこの国最強の戦力だぞ!?」
簡単に吹き飛んで行ったが、あれでもこの辺りのチンピラでは最強のグループだったらしい。
やはり、所詮は善人どころか超絶大聖人である俺に襲いかかるほど低能なチンピラでしか無いと言う事か。
「お前達、狼狽えるな!! 怖気づいたところで好転はせん!! 奴も疲弊している筈だ!! 今、倒さねば我らに未来は無い!!」
「冒険者達よ!! お前達は逃げるしか能の無い穀潰しか!? そうで無いと言うならば証明してみせよ!!」
「これだけの脅威だ!! 討ち取れば爵位だって弾んでくれるだろうさ!!」
「爵位か、悪くない!!」
「世界が俺の力を知る時が来たようだな!!」
「奴を倒すのはこの俺だ!!」
最強のチンピラグループが一蹴されたのに寧ろ士気を高めて突っ込んでくる冒険者達。
それは勇敢か蛮勇か。
俺に挑む時点で蛮勇だな。
やはり見どころは欠片もない。
「――封印解除――、――血よ 沸きたて――“魔斧解放”、“地割り”!!」
厳ついおっさんが全身の血管を浮き立たせ禍々しい大斧に力を込めて振り下ろす。
「なっ!?」
俺はその大斧の柄を掴んでおっさんごと反転させ進行方向へ。
大斧の一撃は王城方向に向かい、大地を一直線に抉ってゆく。
「避けろぉーー!!」「守れぇーー!!」「“アイアンウォール”!! がっ!!」「がはっ!!」「“ロックシールド”!! ぐぅぅーーー!!」「“乱打”!! ぬぅぅーーー!!」「ぎぃあっっ!!」「あっ!!」「“バリアストーム”!! くっ!!」「“アイアンウォール”!! はぁぁぁーーーー!!」「やめっ!!」「“迎打”!! あああーーーー!!」「がっ!!」「“ロックシールド”!! ぐぬっ!!」「“ウィンドウォール”!! がっ!!」
石畳は剥がれ、その下の土と共に脇に吹き飛び、通り沿いの建物は衝撃波に圧し折られ、吹き飛ぶ礫に削られた。
道を塞いでいたチンピラ冒険者達はそれぞれ盾を構えたり、その盾使いの後ろに隠れたり、魔術したり迎撃しようと試みるも、土石流の様なその衝撃に呑み込まれ吹き飛ばされ、無事な壁などに激しく衝突してゆく。
中々に役立つ攻撃だ。
まあ、俺の軽い足踏みの二十分の一程度の威力ではあるが。
「はぁはぁ、ギルマスの攻撃を利用するとは……」
「動ける奴は全員出ろ!! 半端な攻撃は効きやしねぇ!!」
「ヒーラーは早く!!」
「まさかここまでとは……。再び住人の避難を!! 街を放棄するのだ!! 責任は私が取る!!」
「勇者軍にも連絡を!!」
何だか知らないが、街を放棄するらしい。
国ぐるみで夜逃げする算段か?
どさくさに紛れてチンピラ王子一家に逃げられでもしたら堪らない。
早々にケリをつけよう。
雑魚チンピラの相手は後だ。
一気に踏み込み、全壊した王城、その近辺で無事な最も立派な建物に飛ぶ。
「がぁぁぁーーー!!」「ぐあっっ!!」「避けろぉぉーーーー!!」「止めろぉぉオーーー!!」「“ロックシールド”、がぁぁーーー!!」「ぎゃがぁぁぁーーーー!!」
俺が飛んだついでに踏み込みの衝撃波で色々と吹っ飛んでいる。
都合の良い誤算だ。
大斧の一撃を防ぐ為に盾持ちが先にダウンしていた影響で、守りが得意なチンピラが不足していたようだ。
ただ踏み込んだだけなのにチンピラの過半数はこれで片付いた。
この調子でチンピラ達の首領もさっさと締め上げよう。
「止まれぇ、がはっ!?」
「ここは通さっ!?」
門番をしていた騎士を端に捨てて、デカイ扉を強引に開く。
すると、そこには予想に反して堂々とチンピラ王子と狂王が待ち構えていた。
「待っていたぞ!! 逆賊!!」
「貴様を死刑に処す!!」
逆賊も何も、一度たりとも従った覚えは無いのだが。
チンピラ王子は当然頭もチンピラらしい。
そんなチンピラの周りにはいつの間にか来たのか、チンピラ王子と一緒に俺の城を傷付けた連中。
「先程は貴様の卑怯な罠により不意を突かれたが、もはや本気になった儂に通用するとは思うなよ!! 儂を本気にさせた事を後悔して死ね!!」
「装備を万全にした我らに死角は無い!!」
「この歴史ある離宮で死ねる事を光栄に思え!!」
不意を突くも何も正面から薙ぎ払ったのだが忘却の彼方らしい。チンピラの頭は御目出度くもあるようだ。
それか正面も見えない全面死角か。
「貴様を殺したら一族皆殺しだ!! 関係者の一人にいたるまでこの世界に居場所があると思うなよ!!」
その時、扉を強引に開けた影響か壁が大きく崩れ落ちた。
見事な崩れ具合で砕けた街がよく見える。
ここまで一直線に薙いだおかげで街の外もきれいに見えた。
「「「なっ………」」」
そんな風景に目を奪われるチンピラ集団。
「しゅ、首都が……」
「世界に誇る大都市が、この、短時間で……」
「エルベンガー将軍がいたのに、無傷だと……」
「野蛮な冒険者共もいたはずだ……」
「い、いや、エルベンガー将軍は将軍の中でも最下級爵位、冒険者共は無爵位。つ、つまり、選ばれし血統の我らより弱い、筈……」
「そ、そうだ、そうに違いない。本気になった我らの足元にも及ばない、筈だ……」
何だこの国、強いほど偉くなれる国なのか?
国家システムまでチンピラ方式だとは。
だとしたら計画変更だ。
「なる程、強ければ強いほど高い地位が得られるのだな。だったらお前らをぶっ飛ばしてこの国を貰ってやろう! はははははっ!!」
国ごと貢げば逆説的に傾国の美女たる女神様も俺に傾く筈だ。
チンピラ国家だが、俺のものになるのならば素晴らしい。
「な、何故そうなる!?」
「そんな野蛮な未開の国家等では無い!!」
地位を奪われるのを恐れてか、そんなチンピラシステムでは無いと口々に言い出しているが、一度口を滑らせているからにはそんな誤魔化しは通用しない。
「自分達で言っていたじゃないか。最低爵位だから最弱だと。つまり、力で奪い去ればこの国の王は合法的に俺、この国は俺のものになるという事だろう? 最高爵位は最強なのだからな! ははははははっ!!」
「そんな訳があるかっ!? どんな超理論だ!!」
「言い訳無用!! 地位が高くなったら強くなるなんて超常現象が起きようがない以上、解釈は一つしか無い!! どんなに言い繕ったところで無駄だ!!」
と言うか、もう一度勝っている。
ここにいるのは敗者たち。
つまり、この国のルールでは既に俺は王だ。
「さあ平伏せ!! 俺はお前達に勝った王!! 弱き下賤な者達はひれ伏せながら賠償金を払うがいい!! 今ならこの無礼、賠償金の増額で許してやろう!!」
「この狂人がっ!! 不敬の限り、断じて許さん!! 陛下、御命令を!!」
寛大な俺に対して、ブチ切れる近衛騎士団長だとかいうおっさん。
「懺悔もなくこれ以上聞き捨てならん!! 速やかに断罪せよ!! この国難に際し、全ての武装の使用を許可する!!」
「「「はっ!!」」」
狂王が命じると同時に、俺の足元に巨大な魔法陣が広がった。
よく見ると、この広間の端には俺を囲む様に台座に乗った紫の球体が六つ。
最初から罠が張られていたらしい。
外側に有る各球体を繋ぐように紫色の壁が現れ、俺を完全に取り囲むと最後は上部にも壁が展開され塞がれた。
どうやら、結界に閉じ込められたようだ。
だが、それで終わらない。
元々この結界の内側に飾りのように置かれていた水晶玉や宝石。
それらが一斉に砕けると、そこから雷や爆炎、闇や光が溢れ出した。
それは結界内を満たし、高密度の破壊を結界内にもたらした。
が、所詮はチンピラの浅知恵。
手で軽く払うと雷や爆炎などは吹き飛び、それが衝突した結界も砕け散った。
「“デモンズフレアバスター”!!」
しかしこれは想定していたのか、結界の外には大量の付与魔術を受けた近衛騎士団長なおっさん。
そのおっさんが前は持っていなかった禍々しい黒い炎を伸ばした様な形状の大剣。
振り下ろされたそこからは魂も焼くような黒き炎の斬撃が飛び出す。
その他、半円状に並んだ連中から魔術などの遠距離攻撃。
前方全てから破滅が迫る。
「この国の力の真髄、受けるがいい!! 貴様の存在など欠片もこの世に残さん!!」
どうやらこれが国家の全力らしい。
しかし所詮はチンピラ国家、束になったところでチンピラだ。
敢えて何もせずに受ける。
「ば、馬鹿な!! 傷一つ負わないだと!?」
「この国の至宝“悪魔剣デビルズスレイ”ですら届かないのか!?」
「宝物庫の魔術をこれだけ使っても無傷だと!?」
「あの結界はこの国を壊滅寸前まで追い詰めた大悪魔が封印されていた宝珠によるものだぞ!? かの大悪魔よりも数段強いとでも言うのか!?」
俺の強さに屈服し、素直に俺を王と認めるがいい。
これでも従わぬと言うのなら、王の権限で反逆罪として裁いてやろう。
「ふん、油断したな!! 貴様には破滅しか道はない!! 潔く死ぬがいい!!」
俺は初めから謀られていたようだ。
切り札はまだ使われていなかったらしい。
俺の後ろ、そこには勇者軍、女神様が到着していた。