所得税の壁を引き上げる事で下がる税収を補填する為にクリスマス増税1000%を提案する自称経済評論家兼政治評論家、ドロップアイテムを整理する
拾った物の中に危険物が紛れ込んでいる事が判明してしまったが、問題はそこだけではない。
名称:魔剣セラフスレイ
分類:魔剣
等級:英雄級
値段に関する記述は全く無かった。
これでは女神様に贈るに相応しい物か判断が出来ない。
後、英雄級ってなに?
態々分けられて表示されているのだから重要な基本情報に思えるが、何を示しているのかが分からない。
等級と書いてあるが、何を示す等級で英雄級とはどの程度の立ち位置なのだろうか。
そう思っていると表示が少し変わった。
名称:魔剣セラフスレイ
分類:魔剣
等級(品質、価値、評価、格付け、入手難度、レア度、位階):英雄級(万年級、ヘロスレア、第十位階)
色々な呼び名が等級のところに出ている。
つまり等級とは品質だのレア度などを総合的に評価したものなのだろう。
ガチャのレア度と考えるのが一番分かり易い。
しかし、結局英雄級がどの程度のものなのかは分からないままだ。
数字が入っている第十位階から考えると、少なくとも他に九段階あり、その十番目だと分かるが、価値の高低は不明だ。
明らかに価値が分かり易い物を鑑定して比較してみよう。
試しに明らかにゴミな折れた剣をアイテムボックスから取り出し鑑定する。
名称:折れた龍断刀アズマフレイ
分類:折れた剣
等級:王宝級(世紀級、アルティメットレア、第八位階)
より一層分からなくなった。
第一位階から始まり等級の数字が高い程レアなのか、大きい数字ほどレア度が低いのかと思っていたが、明らかなゴミである折れた剣で第八位階という中途半端な数字。
今度は絶対に価値の高い物を出してみるか。
確か、害獣集団の中に金ピカローブの骸骨がいた。
そいつが豪華な剣を持っていた筈だ。
それを思い浮かべると、宝石が散りばめられた銀の剣が出て来た。
名称:儀礼剣
分類:剣
等級:最上級(生涯級、レア、第五位階)
おお、最上級。
そして数字は第五位階。
なる程、等級が低い方が価値が高いのか。
考えれば当然か。
折れた剣よりも危険物の方が価値が低くて当然だ。
一応、もう少し確認しておこう。
価値が高いものは芸術点や歴史とかで値段が跳ね上がって俺では区別がつかないから、折れた剣以上に価値の無さそうな物を探すか。
そう言えば、なんかドス黒い禍々しい珠がアイテムボックスに吸い込まれていた気がする。
取り出してみると、ドス黒い何かを発し触手の様に蠢く気色悪い物体だった。
うん、間違いなく価値が低い。
名称:堕ちた創造神アヴディヴァーダの核
分類:不明
等級:創世級(始原級、ワールドレア、第十二位階)
やはり第十二位階、折れた剣よりも上の数字。
俺の想定通り、位階の数字は高いものほど価値が低いらしい。
取り敢えず、こんなものは要らん。
遠くに投げ捨てる。
音速を遥かに超えた速度であっという間に地平線の彼方へと消えてゆく。
後は、実際に等級毎にどの程度の値段で売れるか分かれば完璧だな。
他にも参考までに鑑定してゆくと、等級の順とその名も分かって来た。
創世級(始原級、ワールドレア、第十二位階)
神話級(神代級、ゴッズレア、第十一位階)
英雄級(万年級、ヘロスレア、第十位階)
帝宝級(千年級、レジェンドレア、第九位階)
王宝級(世紀級、アルティメットレア、第八位階)
秘宝級(百年級、ウルトラレア、第七位階)
家宝級(世代級、スーパーレア、第六位階)
最上級(生涯級、レア、第五位階)
あくまでも俺が所持しているアイテムからの分かったものだが、十二から五までの位階が埋まった。
最上級の上も欲しかったが、中身の無いリア充共が所持していなくとも当然といえば当然なのだから仕方が無い。
取り敢えずはこれだけ分かれば十分だ。
売り払う時に最低限の等級が分かっていればちょろまかされる事は無いだろう。
贈るときにも最低限の品質は保証できる。
どうせなら実際に女神様が要らなそうな物を売り払って市場価値を把握しておくか。
何にしても、この大穴と巨大な山が聳え立つ土地から街に戻ろう。
賠償金の徴収もまだ済んでないし。
スンスン。
女神様はあっちだな。
距離にして地球300個分くらいか。
……ここどこ?
俺の女神様センサーが狂った?
いやそんな筈はない。
これまでだって一度であった美人、美少女との距離を誤った事は無いし、その中でも間違いなくトップの女神様の位置が分からなくなる筈はない。
と言う事は、もしやここって別の星?
空にはまだ暗雲があり、月とかの位置で判別は出来ない。
吹き飛ばすか。
空間を突き破らない様に気を付けながら拳を衝き上げる。
暗雲は一瞬で蒸発し、地平線の彼方まで晴れ渡る。
空には八つの月。
いや、七つの月と一つの青い星。
七つの月は目を凝らさなければ分からない程、闇に紛れている。
月のように太陽を反射したりはしないらしい。
と言うか、まだはっきり見た訳ではないがこの世界の月ではない気がする。数も一つだった気がするし。素面の時に見ておけば良かった。
そして青い星、女神様の匂いがするその星は月の満ち欠けの様に半分以上が闇に呑まれていた。
青い部分は三日月程度。
問題はそれが月の満ち欠けのように星の影で生まれたものでは無い事だ。
見たところ、太陽との間に三日月を作るほど遮るものは無かった。
光が届かないと言うよりも光を失っている、もしくは闇そのものに呑まれている。
…………もしかして、この世界って結構終わりかけている?
そもそもこの星も何なのだろうか。
吹き飛ばしてしまったが、草木の様なものが存在していた。
しかし枯れ果てていた。
月とは違い、生命が存在する星。
少しこの星を見てから街に戻るか。
星を駆け抜ける。
一周目、人の気配無し。
二周目、ここまで動物の気配無し。
三周目、ここまで生存している植物無し。
四周目、生物の残骸は数多く有り。
五周目、水の存在無し。
六周目、おそらく風の流れが無い。
七周目、崩れた遺跡発見。
崩れた遺跡はほぼ瓦礫となり崩れているものの、広大な街だった痕跡がある。
建築様式等は俺がこの世界で見てきたものとほぼ同じ。
不思議なの事に植物の侵食は見られない。何となく遺跡は木々に呑み込まれるイメージがあるがここは違うらしい。
これが砂漠とかなら分かるのだが、木々も遺跡としてそこら辺に存在している。
まるで、星が死んだとでも言うべき光景だ。
ジャンプで他の星に飛び駆け抜けてみるが、やはり同じ様な状況。
何もかもが死んでいる。
本当にヤバい世界に来てしまったのかも知れない。
だが、そう言えば花畑を創れた。
別に星そのものが死んでいる訳ではないのか?
単に植樹せずに伐採を続けたとか、そんな管理の問題なのかも知れない。
まあ考えても仕方が無い。
さっさと街に戻ろう。
大気圏に突入し、流星になりながら街を目指す。
「熱熱あっつっっ!!」
死んだ星では熱い空気を振り払って進んでいたが、ここでそれをやったら下に被害が出るから出来ない。
仕方無しに燃えながらの落下だ。
そして無事、街の近くに墜落。
木々を薙ぎ払いクレーターを作る。
場所的に街の門の近くだが、ここは俺への未払い賠償金があるチンピラ王子達の国。
仮に多少全壊させてもまるで問題が無い。
そうだ、ドロップアイテムの市場価値確認の前に賠償金の支払いをさせなくては。
例え相手が王族でも、中身はチンピラ。あいつ等なら国を捨てて夜逃げする可能性もゼロじゃ無い。
逃げられる前にきっちりと徴収しておく必要がある。
「ひぃぃぃっっ!! こっちに来た!!」
「相手は王城の守りを単騎で突破する化け物だ! 出し惜しみはするな! 全武装の使用を許可する! 決してヤツを通すな!! ここで必ず仕留めろ!」
「魔術師団! 攻城魔法の詠唱を開始! 騎士団は魔術師達を守れ!」
「弓兵隊! ヤツを足止めしろ! 魔道矢を使用して構わん!」
やはりチンピラ共は賠償金を支払うつもりが無いらしい。
俺が到着した直後からこの騒ぎ。
いつ夜逃げするか分かったものじゃない。
早々にとっ捕まえて毟り取るとしよう。
「“速射連撃”!」「“五月雨射ち”!」「“一射十撃”!」「“速射連撃”!」「“乱れ射ち”!」「“シャワーアロー”!」「“乱れ射ち”!」「“乱れ射ち”!」「“速射連撃”!」
無数の矢が降り注いでくる。
その数は瞬く間に数百以上。
軍勢に向けるべき数の暴力。
しかしそれは弾幕。
「“閃光射ち”!」「“重撃”!」「“流星落とし”!」「“バーニングアロー”!」「“鋼貫き”!」「“千枚通し”!」
矢の壁の中から数倍の速度で放たれた矢や数倍の破壊力が込められた矢、特殊な鏃を持つ矢が放たれる。
その威力は矢にも関わらず地を穿き、地形も変える程だ。
しかし、リア充害獣共の矢ですら、こんなものでは無かった。
地球であったら特撮でしか有り得ない威力と物量であるが、この世界では駆除対象ですらもっと強力な力を持っていた。
やはり相手はチンピラ王子に仕え、畏れ多くも先の大将軍な俺に襲いかかる様などうかした連中、しかも入り口に立たされる様な下っ端だ。
俺をナメているとしか言いようが無い。
と言う事で、全部向きを掴んで同じ力で投げ返した。
「「「なっ!?」」」「迎撃ぃぃーーーっっ!!」「“グランドウォール”! ぐっ!?」「“アイアンウォール”!」「“ストームヴェール”!」「騎士団前へぇぇぇーーー!!」
「「「“フレイムバリスタ”!!」」」「“スネークライトニング”!」「「「“ホーリーハンマー”!!」」」「「「“ファイヤーカタパルト”!!」」」
少しは褒めるべきか、下っ端チンピラは俺が投げ返した矢を防ぐと共に、準備していた魔法は中止せずに最後まで詠唱しきり放って来た。
一部チンピラは魔法発動の成功に緊張感を緩める。
やはりチンピラの部下はチンピラでしか無いらしい。
そして魔法の威力もリア充害獣共の方が数段上だ。
軽く手の甲で払って蝋燭の火のように打ち消し、掴める程度の強度があるものは投げ返す。
「「「なっ!?」」」「退避ぃぃーーーーっっ!!」「うぉぉぉーーーー“グランドシールド”ぉぉぉーーーー!!」「伏せろぉぉーーー!!」「「「あ゛あ゛ぁぁぁーーーーっっっ!!」」」
駄目だこりゃ。
鎧とか装備だけは立派に見えるカイゼル髭のおっさんが居なければこれだけで全滅していたぞ?
一々相手にするのも面倒くさい。
さっさと門を抉じ開けるか。
地面を強めに踏む。
すると無数の地割れが生じ、それが伝播しながら広がり街の城門へ。
地と同じく城門、城壁は砕け崩れ落ちる。
尚、賠償金源となる街の中は破壊しない様に砕いたのは城壁までだ。
街全体を城と化す高さ数十メートルは有る分厚い壁だけど、不動産として売れないだろうし物納されるとしても流石に城壁は要らない。
地面を砕いたせいで歩き難いな。
他の方法でぶち抜いた方が良かったか?
「止めろぉぉぉーーー!!」「――アルベームの御珠をもって願い乞う アルベームの御霊よ この地に奇跡を 王国に繁栄を 我等に未来を――“グランドブレイク”ぅぅーーーーーッッッ!!!」
カイゼル髭のおっさん、煩いな。
近くで叫ばないで欲しいものだ。
振り下ろされる光る大剣を掴んでおっさんごと遠くに投げ捨てる。
「がぁぁぁぁぁぁーーーーっっっ!!!」
捨てても煩い。
加えておっさんよりも先に着地した大剣の光が刺さった丘を吹き飛ばし、爆発音と地響きを轟かせ、そして噴煙の様な瓦礫の雲と雨を降らせている。
傘、持っていないので勘弁して欲しい。
街が揺れた事で、砂埃も出て来ている。
さっさと城まで行って賠償金を徴収して帰ろう。
そうだ、女神様へのお土産も買わないとな。
まあ兎も角、さっさとチンピラ王子を見つけるとしよう。
どうせなら賠償金の一部は物納させるか。
由緒ある王冠やティアラで貰えば、売っている物でもないし女神様が喜びそうだ。