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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第4章 絆
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5話 武闘大会

遅くなって本当にすみません!


シェイル視点です

「一寸アスのところに確認にいってくるわ」

「だ、大丈夫なの?」

「えぇ、お祭りに浮かれてるどこかのダメな領主の目を覚ましてくるだけだから」


 スバルの不安そうな顔に、安心させる事のできる言葉を選ぶ。

 何かを隠すのは得意だから。

 だから、その言葉に私の不安も隠す。


 アスはこういう風に仕事を溜める事もかなりの頻度であったわ。

 だけど1週間も放置するなんて事はなかった。

 きっと武闘大会が楽しみだったのよ。


 そう口に出して言えば、スバルは納得したような顔をする。

 ほら。だからアスが意図的に許可していない、なんて事はない。


「シェイルは武闘大会出るの?」

「私は今回のには出ないわ」

「今回の?」

「えぇ、ミッドストリームの武闘大会は幾つかあるの。

 今回のような年に一回ある小規模な無差別の大会。魔法使い部門の大会。戦士部門の大会。フィールドを野外にして採取とかの非戦闘系の部門とかね。

 あと、数年に1回それを同時開催する物もあるわ」

「成程、シェイルが出るとしたら魔法使い部門の所か」

「そうなるわね。スバルはどうするの?」

「シェイルが出ないんだったら僕も良いや。無差別の方よりは戦士の方が良いし。

 じゃあ、また宿屋で合流しよっか」

「えぇ、後でね」




───────────────────────




「アス」

「……はい」

「何か、私が納得できる理由はあるかしら?」

「ごめんなさいぃ~」

「私が聞いているのは謝罪じゃないわ。だけど、言い訳できる要素は無し、と判断して良いのかしら?」

「はい……」


 にっこりと笑う。

 ヒッと青冷めて体を引くアスに、教育的指導をする。


「靁貫」

「ひえっ。ま、待って。そんな強力な攻撃の──」


 雷を一点集中させて、所謂レーザー光線レベルの物を放つ。

 普段は貫くための攻撃魔術だけど、アスの魔法耐性を考えると麻痺程度だから十分よ。


 想像以上の溜め込まれていた書類の山は、今にも崩れそうね。


 スバルと別れた私はアスのいる領主の館にいた。

 何度も来ているため、顔パスとまではいかないものの、軽い身体検査だけで中に入る。

 良いのかしら、公爵家。


 そのままアスの部屋に向かう。のだけど。


「アトリエス様、シェイル様がお見えです」

「え!?シェイル!?ちょ、ちょっと待って!」

「…………」

「……申し訳ありません」

「貴方の責任じゃないわ」


 彼女の執務室で形式的な面会を申し入れた結果がこれ。

 中からは、何か、重いものを動かし、紙のような物が舞っている音がする。


 アスはスバルに残念領主なんて覚えられているけど、この王国の公爵。

 女性でありながら、公爵家の当主と領主を務めているから、女性の地位向上にも一役買っていて……まぁそれなりに凄い人物なのよ?

 一度ポンコツになると、こうダメではあるけど、ダメではあるけど!


 まぁそれは置いておいて、公爵の執務室に許可なく入るのは不敬だから待機することにしましょう。

 だけど、扉を開けなければ不敬にはならないわよね。


 という訳で、特殊能力の[魔眼]の千里眼を至近距離にとばす。

 透視のような事をしている私を、書記官は止めようとしない。

 ……本当に良いのかしら、公爵家。


 執務室は、二十畳くらいの部屋に机と本棚を置いた、広めの部屋。

 普段なら。


 今の部屋にあるのは、床を白く埋め尽くす書類。

 それも数十枚単位の書類の束が、何十個も。

 そして、それを執務室の椅子の後ろに積み重ねるようにして隠すアスの姿。


 みるみる積み上がっていき、扉、つまり正面から見える範囲の床には書類は消えた。

 高くなった分、積み上げられたものが見えるのだけどね。


「どうぞ!」

「失礼するわ」

「それで、急に訪れるなんて珍しいわね。どのような用件かしら?」

「……」


 取り繕ったような調子で、対外の言葉遣いと出迎えをするアス。

 書類のタワーをバックに背負いながら。

 見えてるわよ、と指で指し示す。


 あっと慌てた風に後ろを向き、再び私の方に向き直る。

 やらかした自覚はあるようね。

 視線を合わせようとしないもの。


 そして、先程の会話。


「シェイル容赦がない~」

「大丈夫よ、アスだもの」

「それ免罪符になりもしないよ?あ、それで何の用件なの?」

「冒険者の本登録をしているのだけど、貴女の許可が降りてないらしいから確認に来たの」

「え……?」


 スッと後ろの書類の山に目をやるアス。

 この中に紛れているのね。


「……缶詰」

「それは止めて!」


 ポツリとアイディアの1つを呟くとアスが悲鳴をあげた。

 アスを缶詰にすれば本登録の申請はすぐに済むと思うのだけど。


「それで?どのくらいで片が付きそうなの?」

「えっと……大会が3日後だから、1週間後くらいだと思うよ?」

「……」

「……。ごめんなさい」

「全く、宿代も安くないのよ?」

(ここ)に泊まれば良いよ!」

「〝領主含む、王国の全ての貴族家に、黒騎士、もしくは白聖女は留めてはならない〟

 パワーバランスの決まりを破ったらダメでしょ」

「む~、シェイルが有名人になったのが悪い~」

「……私が悪いのね」

「こんな御触れ出した王様も悪い」

「こらこらこら」


 取り敢えず1週間後には必ず許可を出すように確約させて、私は宿に戻る。

 今回の許可遅延の原因は書類の行方不明、と。


 それにしても、どうして基本的に領主、貴族の鑑、なんてい言われているのに、こうも私の前だとポンコツになるのかしら。

 友人に気を許してくれているというのだったら、確かに嬉しいもの……ね。


 今まで、面だって私の容姿がどうこう言われるというのは無かった。

 だけど、スバルをはじめとするような、私の色彩が綺麗だと言ってくれる人も少ない。

 だから、アスは私の数少ない、心を許せる大切な友人。


 そう考えて、私は唐突に思い出した。

 友情なんて物が、決して恒久的な物なんかじゃないという例が、すぐ近くにあった事を。


 思い出した途端、私の心の片隅で蠢いていた不安が、大きくなった気がした。

 大丈夫よ。さっきアスに会った時だって、特に変わった様子はなかったじゃない。

 アスがお祭りにのめり込むのはいつもの事。


 今回の大会は、大規模なものではない。

 なのに申請書をあそこまで溜めるという事は、何か大きな企画でもしてるのかしら?

 それを楽しみにしておきましょう。




 でも、私は解っていた。

 空元気は、虚勢は、いつまでも保てない。

次回は……一応7/22を目指します

もう少しで武闘大会です

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