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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第3章 再会
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20話 回想録Ⅱ─或る神官の成長─

ちょっと短めです

「あの!この薬はどのように使うものなのですか?」

「それは普通自分で調べるべき事なのだがな」

「う」


 そもそも私はこの効果を知らない。

 一体どういう薬のなだ?

 それを聞いた途端父に痛いところをつかれた。

 だが、解析はあなたが得意なだけだ!私を含め一般的な人は調べようがない!


「まぁ今回は私が勝手に創ってきた物だから、特別に教えるわ。これは疫病の原因の毒素を分解する効果を持っているわ」

「っではこれを!……いや、これで肥料本来の効力が無くなったり、別の毒に侵される可能性はありますか?」


 そう、原因を取り除けたとしても、別の問題があれば意味が無い。


「あら、目の付け所が良いわね」

「効力が失われるとしたらどうする」

「……だとしたら、その薬と、別の肥料を同時提供する必要が出てくると考えます」

「別の毒の場合」

「別の解決策を取るべきです」

「例えば?」

「っ……。…………そうですね、その新しい毒の原因を取り除いた別の物に改良すれば良いでしょう」

「ほぅ」

「成る程ね。安心して、これはそういった副作用はないわ」

「!そうですか。では、従来の肥料にこれを混ぜて、改良された新肥料として売りに出せばどうでしょうか?収穫量が落ちている今、それを回復させられるなら、信用を得られますし、値段の調整も効きます。裏で混ぜるので、毒素に関連する話も表に出す必要がありません」


 シェイルはちらりと父を見る。

 父は溜め息をついて


「及第点といったところか」


と言う。

 それに被せてシェイルが言う。


「初めてにしては良い方じゃない?私の予定通りだし」


 予定通り、という事は、この答えを導き出せなかったら私は一体どうなっていたのだろう。


「問題を指摘するとしたら情報管理のあたりかしら」

「そうだな」

「情報管理?」

「例えば、この薬の信頼性についての追求がなかった。この娘が言った事全てを信じすぎている。嘘であればどうする?

 改良は誰がする?技術者に伝はあるのか?

 裏で作業をするのは誰だ?情報を漏らさない、信頼できる手駒はいるのか?

 この薬の原価も聞いていない。調整できる値段なのか?」

「ぐっ」


 父から容赦の無い評価が来る。

 確かに考え不足なのはあるが、本当に情け容赦ない。


「まぁまぁ、今回は抜き打ちも良いところだったし、これからの意識改革を見ていった方が良いでしょう」


 フォローを入れたシェイルが天使に見える。

 流石巷で白聖女と呼ばれるだけある。


「じゃあ、こっちの方はよろしくね」


 彼女はそう言うと、扉の方に歩いていく。

 ……堂々と帰るらしい。


「シェイル」

「……何?」


 父がその背中に声をかけ、呼び止める。


「会っていかないのか?」


 誰に、とは言わない。

 ただ、恐らくメカルト・マールだろう。


 シェイルは肩をすくめて答える。


「私が牢に入れたのよ?どんな顔で会うのよ?」

「シェイル」


 私が呼び掛けると、シェイルは不思議そうに振り向く。


「メカルト・マールが父に虐められて日々やつれている」

「……」


 呆れたような目でシェイルが父を見る。


 こういう時、どうすれば良い?

 どうすれば、彼女はあいつに会う?

 何が彼女の意思を帰る?


 父の存在。

 その姿。立ち振舞いを思い描く。

 あの人は、辛辣であっても、ドSであっても、私の尊敬する、理想だ。


 顎を引いて、真っ直ぐシェイルを見据える。

 背を伸ばして、堂々と。


「シェイル、どうせだったらあいつに会っていけ」


 言ってて、まるで父だな、と思った。

 やはりどこまで似ていなくても、私はあの人の息子のようだ。


 シェイルが、丸く目を見開く。

 赤い瞳は、それでも綺麗だ。


「ふっ、あははっ。流石っ、ラフェルの子ね。すごい、そっくり……」


 思わず、という風にシェイルは笑いだし、ずっと肩を震わせる。


「そうね、どうせだから、会っていくわ」


 そう言って笑うシェイルに、私は思う。


 ただ、ひたすらに綺麗だ、と。


 そして、尊敬する。


 メカルト・マールのように圧倒的な知識を持ち、父のように恐ろしく頭のキレる彼女を。






 彼の牢の管理をしているのは私だ。

 鍵を持って、彼女を案内する。


 メカルト・マールは驚いた顔をするだろう。

 シェイルは、きっと笑っている気がする。


 秋の近づき始めた光の下、水色の瞳が大きく開かれて、2人は楽しげに談笑をしている。






 そうして、私は彼女と出会った。




───────────────────────




「いや一寸待て。何でシェイルの話なのに神官君視点の話をされてるの?僕」

「……3徹の、時にね、突撃されて、語られたの」

「……うわぁ」

「流石に、殴ろうかと思ったわ」

「うん、皆で必死に止めたね~」


 懐かしい、という風に話す研究員たちに、スバルは密かに戦慄している。

 相手は一応貴族だ。

 シェイルのそばにいるせいで感覚が麻痺しているのかもしれないが、そんなのほほん話す無いようでは間違ってもないだろ、と思っている。

次回の投稿は4/29の予定です

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