18話 回想録Ⅱ─彼女─
この話も気付いたら90話
あと10話で三桁いきます
ブクマ30件を励みに今後も執筆を続けていこうと思います
「……本当に相変わらずですね」
思わずという風に真顔に戻っているメカルト・マールが呟く。
どうやら彼は父のこういった面も知っているようだ。
「久しいな、妖精」
「……お久しぶりですね、ラフェル。
……こちらが先なのでは?」
妖精、はスルーですか?メカルト・マール。
「貴様にそんな物など要らんだろう」
「いえ、人間からしたら10年は長いと思いますが」
確かに長いですね。
え、そんなに会ってないのですか?お二人は。
「妖精族から見たら4ヶ月程度だろう、マール公?」
「……ぞっとします。妖精呼びの方がいいですね」
「ではマール公」
「……」
ひきつった顔をするメカルト・マール。
顔色が悪いです。
可笑しいですね、この部屋の空調管理はしっかりしているはずなのに。
「それともルトの方が良いか?」
「断固拒否します。今すぐ止めなさいラフェル」
「顔色が悪いな気分が悪いのか?ルト」
「ひっ」
「いい弱みを握れたな」
父の背中から黒い何かを感じます。
メカルト・マールの顔色は真っ青です。
まだ春のはじめですから寒いのでしょうか。
暖を取るものを取ってきましょう。取り敢えず逃げろ!
「それを呼ぶのはケンゴとスバルとミワ嬢で十分です!」
「ほう、スバルにミワ嬢、と。大分仲良くなったんだな、ルト」
「やめて!本当にやめてください鳥肌が立つ!」
「彼女が気を許すとは思わなかったな、妖精」
「漸くやめましたね……。
まぁスバルがその辺りを気にしなかったからでしょうね」
「彼女のストッパーになるとでも言うのか?」
「どうでしょうね。ストッパーには成り得ますが、同調の可能性が高そうです。寧ろ逆に暴走するかもしれませんね」
「目下の悩みだな、全く……」
父がすごく嬉しそうに(でもほぼ無表情で)彼を虐めにかかっている。
食事の好みは把握しておこう。父が申し訳ない。
──彼女とは誰だ?
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ルトが日に日にやつれていっている。
原因は言わずもがな父である。
良い玩具を見つけたと言わんばかりに、ほぼ毎日遊びに来るのだ。暇なのか?あの人は。
「そう言えばラフェル。面会の融通──」
「させるわけないだろう」
「やはりダメですか……」
「彼女に言い渡した罰を破れば、二度と会えない可能性があるぞ、妖精」
「ミワ嬢の事ですからあり得そうなのが嫌なんですよね。あぁ、そう言えば、そろそろグラン地方で疫病が流行りますよ。それから国内外に広まりますね」
「ほう、詳しく話せ」
あぁ……今日も今日とて国家を左右させる話題を……。
グラン地方と言えばこの国の食糧庫。
そんな所で疫病が流行れば、国へのダメージが考えるのも恐ろしい程です!
「判った。彼女に調べさせておく」
「そうですね、それが一番確実でしょうね」
はぁ。
「メカルト・マール。彼女とは誰ですか?」
父が執務室に帰った後、食事を渡していた時に、私はそう聞いた。
今回の庫とに限らず、今までの父とメカルト・マールの会話には、よく〝彼女〟と言う単語を耳にした。
それらは、全て国の要事の話の時だった。
「……。
そうですね。3日後、ラフェルの部屋にいってみると良いと思いますよ。きっと解るはずです
それと、1つだけヒントを。彼女、とは、最初の日に名前の出ていたミワ嬢の事ですよ」
少し考えて、メカルト・マールは笑いながらそう言った。
中々に意地悪と言うか、茶目っ気のある人だとでも言うべきだろうか。
───────────────────────
──3日後
父は珍しく、一日中執務室にこもっていた。
この人はどれだけメカルト・マールの所に入り浸っていたのだろう。
「────報告は以上に成ります」
「そうか、判った。ご苦労だった。戻れ」
「……」
「どうした」
退出を言われたが、私は聞きたい事がある。
メカルト・マールは、今日解ると言っていた。
だから、今日、ここで聞かなければいけないのだ。
「神殿長、〝彼女〟とは誰ですか?」
「……」
「囚人メカルト・マール、及びあなたに深く関わる事のできる女性とは、一体誰ですか?何より、国の機密の調査を任せられる、ミワ嬢、とは」
神殿長の冷たい視線が突き刺さる。
気圧される。が、ここで退いては知る事はできない。
国の命運がかかっている事の調査を依頼される人物〝ミワ嬢〟について。
「あいつが喋ったか」
神殿長は1つ、溜め息をつく。
銀髪がさらりと落ちて隠した目元には、疲れが感じられた。
一体、どういう人物なのだろう。
私が何も答えられないでいると、それだけで察した父が、もう一度息をつく。
「あのお喋り妖精が。まぁ良い。お前も知っておいた方が良いかもしれん。あいつもそう判断したのだろう。
〝彼女〟=〝ミワ嬢〟とまでは判っているんだな?」
「はい」
「彼女は旧姓シェイル・ステラ。今は戸籍上亡くなったとされる、ステラ家の一人娘にして、転生者。魔術の扱いに長けていて、ついている二つ名で最も有名だったのが、氷雷の戦姫だったな」
「あのステラ家の!?彼女は転生者だったのですか!?いえ、でしたら納得できる部分も多いですね」
シェイル・ステラ。
彼女はメカルト・マールと因縁深い少女だ。
亡くなった原因は、間接的に彼だと聞いているが、まだ存命だったと言うことか?
しかし、ステラ家の動向はこの国のみならず、世界中が知りたがっている事。
隠蔽し通せるのか?
「あぁ。そして、現在は白聖女として名の通る、平民シェイルとしてラート領のプログレス市に居る」
「!星印商会の!?……確かに彼女も魔法の扱いに長けていましたね。ですが、シェイル・ステラは金髪青瞳の少女ではありませんでしたか?」
「あぁ、だが本来は、忌み嫌われる白の髪に青と赤のオッドアイだ。寧ろ同じ名だと言うのに何故同一人物と結びつけられないのか不思議で仕方ない」
言えていますね。
シェイル・ステラ=シェイルと気付けば、共通点は山程見つかるが、その可能性を考えたことはなかった。
やはり、彼女の二人と無い特殊な容姿がイコールで繋ぐことを前提的に拒否させているのだろうか。
「星印商会の会長の経歴であれば知っているだろう。
あれほどの物を大量に再現できる記憶力、商会を大きくさせた頭脳、様々な噂を収集できる情報網、それから正解だけを抜き取れる推眼、情報をうまく操作できる計算高さ。
魔法による直接戦闘能力、交渉術。
精霊との結び付きも強く、天使や神とコンタクトをとる事すらできるそうだ。
あの妖精を牢にぶちこんだのも彼女だよ」
「な!?」
「そう言う、ある種の化け物だ」
「あのねぇ、何で皆して私を1人の少女として見ないの?至るところで化け物扱いされたら、私だって傷つくわよ」
次回の投稿は4/1の予定です




