8話 許可
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「だ、だって、だって、シェイルが心配だったから……」
「言い訳など聞いておりません」
「さすがに見苦しいですわ。あなた」
執務室、つまりシェイルの父の部屋で、その部屋の主であるシェイルの父──ヴィクター・ステラ──が小さく言葉を漏らす。
その言葉を、シェイルは冷たく切って捨てる。
その言葉に被せるように言ったのは、透明で淡い金髪を長く腰まで下ろし、軽く束ねた女性。
白い白磁の肌に、綺麗に整った目鼻立ち、翡翠のような緑色の瞳をもったその女性は、アリス・ステラ。
シェイルの母である。
当主さん、ヴィクターの髪は整った銀髪で、紫水晶のような瞳を持っている。
奥さん、アリスと並べると、対のような2人だ。
ただ、この2人を見ると、シェイルの容姿は、どこから遺伝しているのだろう?と思ってしまう。
金髪や銀髪と白髪は色が違いすぎる。
瞳の色もだ。
隔世遺伝とかもこの世界にあるのかな?と呑気に考えるスバル。
その容姿は、この世界では地雷だということも知らずに。
アリスは、ヴィクターが帰ってきた、と聞いてこの部屋に訪れたのだ。
そこに、ヴィクターに連れられた……正確には、ヴィクターを連れたシェイルと、彼女について来たスバルを合わせた4人が、今執務室にいる顔ぶれだ。
「君に入室を許した覚えはないのだが?」
「当然でしょう。私が許可したのですから」
「シェイルぅ~」
なんとか取り繕って、キリリとスバルに対してもの申すヴィクター。
直後シェイルにスパッと否定され、一瞬にして泣き顔になる。
『当主さんは親バカなんだね』
コソッとシェイルと話すスバル。
今、彼の目の前では、アリスの言葉の刃にズタボロとなっているヴィクターがいる。
『そうね。これが通常なのだけれどね……』
スバルの隣に座っているシェイルは、呆れたような顔で答える。
革張りのふかふかのソファに背をあずけたスバルは続ける。
『にしても、奥さんは強いね』
アリスはニッコリと微笑みながら、夫のヴィクターを言葉の刃で攻撃し続けている。
その様子を見ながらポツリと漏らすと
『ステラ邸の女性陣は強いわよ』
という答えが帰ってきた。
ステラ家ではないことに気づいたスバル。
『ステラ邸ってことは……』
『ここのメイドは少数精鋭よ』
『怖~』
思わず肩をすくめるスバル。
執務室に来る前にすれ違ったメイドさんが全員、無双する姿を思い描いてしまったのだ。
そうこうしている内に、話が終わったのか、アリスがシェイルの隣にやって来る。
「お説教はここまでにしてシェイルの話を聞きましょうか」
お説教だったんだ……と思うスバル。
お説教です、と頷くシェイル。
ヴィクターは、灰になりながら「そうしよう」と答える。
一方的に話を捏造していたのだ。同情の余地はないのだが、とても哀れに見えた。
「では、単刀直入に入らさせていただきます。彼は私と同じ異世界人で、転移者です。“彼”に関しては恐らく未接触。この世界について説明するために数ヵ月程度この家に滞在させたいです。そのための許可をいただきに来ました」
私と同じということは、この2人は転生の事等を知っている。
この家に滞在する許可がもらえるかは不明。
“彼”という存在が不明。
先程までの会話でここまでの事を考えるスバル。
「ふむ」
「異世界人ですか」
真剣な声を出す2人。
ここで許可をもらえなかったら、行く宛もないスバルは、緊張して答えを待つ。
「アキヤ・スバル」
『は、はい。なんでしょうか』
「君は異世界から来て何日目だ?」
『今日の昼に来たばかりです』
「今日の昼に来たばかりと言っているわ」
日本語は通じない事を忘れて答えるスバル。
すぐにシェイルが訳してくれたが。
「そうか。……ふむ、嘘は言っていないようだな。……ならば許可しよう」
許可が降りる。
この日、スバルのステラ邸での滞在がきまり、異世界での生活が始まった。
そして、次回は新章に入ります
最初の事件が起きます!




