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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第3章 再会
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17話 回想録Ⅱ─神官─

ノア・ミィシェーレ視点です

 彼女との出会いは、ある罪人がきっかけだった。


「貴人の塔に護送、ですか?」

「あぁ」


 私はノア・ミィシェーレ。

 リペイズドラン王国の神官だ。


 そして、私の前にいるのが、私の父にし現神殿長のラフェル・ミィシェーレ。

 現王の従兄弟にして、補佐相談役を務め、この国の神官たちのトップであり、王都の神殿の長であり、外交官でもある超人だ。

 帝国や精霊国の狸や狐とも対等以上に渡り合える化物のような方でもある。


 さらさらの銀髪は片口でピシリと切り揃えられている。

 細い瞳には淡い水色が鋭く光っている。

 冷めた瞳と鼻立ちがつくる造形は調和された黄金比だ。


 なお、表情筋は死んでいる模様。

 息子の私をして笑っている顔を見た事はない。

 その冷たい表情は一部の方には人気なのだとか。


 その父が、珍しく、僅かに疲れたような顔をしている。


 父に似ず、癖のある銀髪が視界に入る。

 どうやら無自覚に首を傾げてしまっていたようだ。

 だが、それも仕方ないだろう。

 何故なら、貴人の塔はここ数十年使われた事はないからだ。


「貴人の塔は、王族やそれに連なる要人が元の罪人の方々が入る塔でしたよね?裁判も起きてないですが、一体どなたが?」

「裁判は、王族と、侯爵以上の地位の人間の場合にのみ開かれる」

「そうですが……」


 私を連れて、父はこの牢獄城プリゾンフォールの中央門に向かう。


「今回は特殊なケースだ」


 そう言いながら、父は陸と唯一繋がる橋を見下ろせるバルコニーに立つ。


「囚人の名はメカルト・マール。イザデラ領の領主にしてマール伯爵家の当主でもある、あの化物だ」


 貴方に化物呼ばわりされたくはないと思いますよ、という言葉はギリギリで飲み込んだ。


 囚人が到着した。




───────────────────────




「国へ未報告の税の増減、鎖無しの奴隷保持、及び放逐、現住建造物放火、公文書偽造、印章偽造、信書開封、横領、詐欺、恐喝に脅迫、拷問、賄賂、賭博、暴行、器物破損、窃盗違法物品の闇取引に過剰戦力保持。一体どうしてこれだけの罪状を並べて死刑にならないのですか?」


 王城から送られてきた資料に目を通しながら、素直に疑念を口にする。

 いっそ清々しいほどの犯罪の見本市だ。


「父は建国当時から続くマール家の当主。母は光の高位精霊。600年生き、領主として何世紀にも亘ってイザデラ領を支えてきた存在だ。当然国への影響力も大きい。今の王も先代の王も借りを作っているしな。蓄えられた知識量は下手な小国の図書館を凌ぐ。洪水、干ばつ、飢饉。領主としての経験による災害の記録と助言により国が救われた数は両手でも足りん。国外への影響も当然ある。あれが始めた貿易路も多くある。Sランク冒険者でもあり、戦闘の技術、火力もそれこそ1個師団では束になっても敵わんだろう」

「……っ」

「だからこその特殊、なのだ」

「……この囚人を殺した後を考えたくなくなりますね」

「本人が同意している。脱獄の可能性は限りなく低いが見張りの管理はしっかりしておけ」

「はい」


 貴人の塔は、元要人が入る牢だ。

 したがって、他の牢とは違い、豪勢な造りをしている。

 壁紙や絨毯こそ無いものの、調度品はおいてあるし、囚人も牢の中である程度自由だ。

 衣服は毎日変えられるし、食事も栄養バランスの良いしっかりした物であるし、空調や温度の管理もなされている。


 当然監視はあるが、他の囚人よりも格段に好待遇だ。




「本日より貴方の監視役を務めさせていただきます、ノア・ミィシェーレです」

「そうなのですか。よろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

「ところで、こちらから頼み事はできますか?」

「何なりと」

「……では、ここの鍵を」

「は!?」

「冗談ですよ。ですが、そこは可能な限り、とつけておくべきでしょう」

「はい……」


 にこりとした優しげな表情と丁寧な口調に騙された。

 どうやら、思っていた以上の人物のようだ。


 一般男性に比べたら線が細く、小柄では無いものの、筋骨隆々でもない、優男と言うような容姿ではあるが、600年の月日の分だけ思考は深く、父とも互角以上に渡り合えそうな底が知れない腹黒さを感じる。


「さて、本当の頼み事です」

「はい、()()()()()、お伺いします」

「よくできました。──私物の持ち込みは可能ですか?」

「は?」


 くすくすと笑いながら頼んできたのが、私物?は?


「ここでだらだら過ごすのもなんですしね。ここを出た時に試したい事とかを書き溜めておこうかと」

「……せめて、普通の紙とペンではダメなのでしょうか」

「機密漏洩は嫌ですね。私の私物の紙とペンには、他者には見られないようにする魔法がかかっています」


 え、何か色々と凄そう。

 私も欲しい。


「あ、それ私の自作ですから市販してないですよ」

「市販してたら権力者がこぞって買い漁っていますよ!」

「魔力を奪っていなかったらそれを量産させたのだがな」


 突然後ろから声がしてびくりと反応する。


「し、神殿長!?」

「相変わらずですねぇ」


 因みに、今、メカルト・マールの両手首には魔力操作を妨害する魔術具をつけている。

 普通の囚人では魔道具で事足りるのだが、メカルト・マールには魔術具では意味がないようだ。


「次いでに貴様を鎖で繋いで馬車馬の如く働かせる事ができたら尚良かったのだがな」


 極めて残念そうに言う父。

 やはりサディストですね。

次回の投稿は3/25の予定です

春期特別更新はできなさそうです

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