14話 回想録Ⅰ─本気でピンチ─
スバル視点です
明言はしてませんが万人が嫌う黒いアレが出てきます
苦手な方は読み飛ばすことをおすすめします
ダンジョンに潜って24日。
大したイレギュラーもなく、素材をしっかり回収しながら予定通りにダンジョンを降りている。
今いるのは68階層の階段。
次の階が討伐依頼のあったユニーク個体のいる階層。
例の冒険者殺しだね。
フロアボスも問題なく撃破できるし、一応ユニーク個体がどれくらいの強さなのかがイマイチわからないから注意するか。
そういう風に69階層の攻略を考えながら階段を降りる。
長い階段がようやく終わり、69階層の景色が見えてくる。
「デカ」
そのフロアにいたのは地球のどこでも嫌われていた黒くてすばしっこいアレ。
が、2メートルくらいになって。
しかも密集していた。10㎡あたり15匹位いる所も。
うわぁ、飛んだよ。5m位。
「冒険者殺し、かぁ……」
これは精神から殺しに来るやつだ。
虫は平気でもこれは好むやつは普通いないよね。
流石に顔がひきつっているのがわかる。
何?定番なの?ある程度レベルが高いダンジョンでこいつらが出てくるのは。
えぇ~、この中進まなきゃいけないの?
……焼き尽くすか。
「【火炎砲】重ね掛けで【火竜】!」
気持ち良いくらいに奴等が焼けていく。
このまま討伐対象ごと焼き尽くしてしまおう、と一歩足をフロアの中に踏み込ませる。
その瞬間、魔法が消えた。
目の前に、炎の壁ができていたのに、それがさっぱり無くなって、密集していた黒い連中がよく見える。
よく、見える。
しっかり目があってる気がする。
こんにちは。
……じゃない!!
慌てて階段の所まで下がる。
原因がわからない状態では進まない方が良い。
暫く気配を消して、こちらへの注意が薄くなるのを待つ。
さっきの魔法が消える感覚。
トラップの一種?
罠が発動した感じはしないんだけどなぁ。
となるとフロア全体に何かのトラップゾーンが仕込まれてるのかな?
確認をしておこう。
〈鑑定解析〉の“解析”からトラップを探そう。
69階層の床に手を置いて発動すると、頭の中にダンジョンの情報が次々と入ってくる。
う、やっぱり情報量が多い。
こんな時は〈世界の図書館〉から“文書記録”と“閲覧”を起動。
“解析”した情報を“文書記録”に保存して、プラクエみたいなボードに“閲覧”で表示させる。
えーと、広さは……結構狭いな。1k㎡程度?
まぁあそこまで密集されてたらこの広さでも妥当かな。
うん、こっちの方が良い。
立体構造とかはないね。迷路型でもない。
時折小部屋みたいなものがあるけどほぼ一本道だね。
道中にあれがうじゃうじゃいるけど。
あ、トラップゾーンに関するのがあった。
やっぱりアンチマジックエリア。魔法使用不可空間だね。
となるとやっぱり攻略は物理だけかぁ。
階段下のここだったらまだ魔法を使えるからある程度一掃してダッシュでこの階を抜けるか。
あ、それともう1つ。
討伐対象はどこにいるのかな?
このフロアにいるユニーク個体は……んん?
あれ?見間違い?
それとも読み取りミス?
ユニーク個体が二桁越えてるんだけど?
え?このフロア何が起きてるの?
「えぇ~どれが討伐対象?」
ユニーク個体としか言われてないから分かんないな。
となると全部討伐するしかないか。
幸いまとまってるし。
「じゃあ一寸本気で【火炎竜の息】!」
放出系の魔法の中で多分一番威力が強くて遠くに届くやつ。
毒であっちを全滅させるって方法とかもありはするだろうけど、多分僕のMPじゃ無理だろうね。
自分から離れるほど魔法を維持するのに使うMP量が増えるから。
シェイルだったらできるだろうけどね。
さて、道ができたし進もうか。
“韋駄天”“魔闘法”に〈探知〉と“隠密”も一応ね。
正面の通路の奥、下層への階段の前の広場まで直線距離で1㎞弱。
これくらいだったら駆け抜けられるね。
【火炎竜の息】で300m位道が開けてる。
最前列のあれの所まで一瞬で肉薄して、できる限り回避。
邪魔な奴だけ斬って進む事に専念する。
大体500m位進んだ時。
──カチリ
何かを踏んだ音がした。
あ、ヤバ、トラップ?
何が来るかわからないから、取り敢えず足を止めて状況を探ろうとする。
探ろうとした。
探す。
例えば、目で、探す。
何かが飛んでくるとか、何かが迫ってくるとか、罠の内容を見る。
例えば、耳で、探す。
矢の音とか、仕掛けが作動して動く音の方向とか、対応を取るために聞く。
例えば、スキルで、探す。
無味無臭の毒とか、状態異常が自身に起きていないかとか、調べる。
できなかった。
目の前がまともに見えないくらい暗かった。
かさかさと一般的に捉えられる程度の音しか聞こえなかった。
スキルが。
使えなかった。
どういう事?
ステータスを表示しても、〈鑑定解析〉が効かない。
空間自体を“解析”しようとしても発動しない。
いや、どういう事、というのは一種の現実逃避みたいな物だ。
本能的に、何が起きたか解っている。
僕が起動させたトラップは、アンチスキルだ。
スキル使用不可能空間。
ステータスは生きているから、鍛えてきた筋力とかは一応ある。
だけど、スキルとして育ててきた部分が一般人以下になる。
今まで、“暗視”で見えていた薄暗いダンジョンの内部が見えなくなった。
今まで、“聴覚強化”で捉えていた魔物の居場所が分からなくなった。
今まで、頼りにしていた、剣技が使えなくなった。
魔法が使えない。
確実に致命傷を与えられる刀が振れない。
僕の攻撃手段が、もうない。
下層に向かう階段まで後500m。
眼前に立ちふさがる魔物は800を優に越えているだろう。
こちらは認識されている。
今まで通り避けて最短の道を進めない。
確実に屠れない。
背後の攻撃を読めない。
広範囲殲滅はできない。
つまり、詰みだ。
次回の投稿は3/4の予定です
すみません
まだ週一に戻せそうにないです




