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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第3章 再会
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13話 回想録Ⅰ─裏で見る者─

ソラニテ(猫耳ギルマス)視点です

「あいつ、普通に行ったのだね……」


 私は、ギルド長室で黒騎士がダンジョン潜ったという報告を受けて溜め息をつく。

 私はソラニテ。

 リペイズドラン王国最大の王都ダンジョン、そのダンジョン都市テュルコワーズの冒険者ギルドマスターをしているのだね。


 ここ十数年、テュルコワーズのダンジョンの先行者は61階層以降に進出していない。

 ここを訪れる冒険者が実力不足、というわけでもない。

 単純に、冒険者ギルドが61階層以降を封鎖しているからなのだね。


 原因は、昆虫階層に大量のユニーク個体が発生しているからだね。

 恐らく最後に確認された69階層のフロアボスがユニーク進化を遂げていた事なのだろうね。

 脅威度(リスク)がSにかかりそうな異常成長した個体なのだね。

 あれのせいで何年その階層以降の攻略が止まっているのか……。


 あの個体は単体でも厄介な能力を持っているが、何より集団を操るのに長けている。

 いっそ軍隊を相手にしているように考えた方が良いのじゃないのかね?

 情報制限をしているとはいえ、黒騎士の無防備さは心配になるね。

 いや、ここで心を折っておいた方が良いのだろうかね……。


「ギルドマスター、お客様です」


 コンコン、と扉が叩かれ、受付嬢の報告が聞こえる。


「誰なのだね?」

「星印商会のシェイル様です」

「成る程、通して良いのだね」

「わかりました」


 暫くすると、扉の向こうから、今黒騎士にならんで話題に上る少女が現れた。


 噂に違わず、雪の色とも違う無機質とも言える白。

 この色は1度見た事があるね。

 神々の住まう天上の住人の特徴。

 瞳の片方、紅も魔獣の瞳と似ているようで違う。

 多分、魔獣に知性を足して磨けばこの輝きになるのだろうね。

 もう片方の青も普通の平民の青とは違う。

 見る人を惹き付ける色彩と容貌の少女だね。


 こんな少女が普通の平民な訳がない。

 過去も全く明るみに出てこないしね。


「こんにちは」


 白聖女は見惚れるような綺麗な所作で礼をする。

 調和された顔でお手本の笑みを浮かべる。

 自分の影響力を理解している人間の顔だね。

 やれやれ、気の抜けない少女を相手にしなきゃいけないようだね。


「急な訪れだけど、どうしたのだね?」


 白聖女を向かいのソファに座らせて単刀直入に聞く。


「ここでしか売れない、だけど、必ず売れる商品の委託をしようかと思って」

「ここだけ?」

「えぇ」


 白聖女がそう言って差し出した少し大きめの袋を手に取る。

 麻袋には、何点かの物が入っていた。


「ポーションに回復珠に、これは包帯?後は……魔道具?」

「確か、69階層は回復薬を使用できないエリアがあったわよね?回復魔法が使えないセーフエリアもあると聞いたわ」

「今は違うね」

「?」

「そのフロア全域で魔法もスキルも使えないのだね」

「……成る程、特殊個体ね」


 白聖女は一瞬目を見開いただけですぐに状況を理解する。

 ただ、この話題が出たという事は。


「回復不能ゾーンの抜け道をみつけたのだね?」

「えぇ。回復薬、回復魔法が使えないのは、そのエリアで魔法を使えないから。軍用されているアンチマジックの原理は知っている?」

「知ってるね。魔法を作用させる魔力。その操作を乱すのが根本だね。魔法は魔力に干渉して操る。その魔力に一定の負荷をかける事によって魔力が散乱してしまう。故に魔法を使えないのだね」

「それであってるわ。ダンジョンのアンチマジックゾーンは全ての魔力に平等の負荷をかけている。アンチマジックの究極の形よ。そうすると、今度は魔力は一定の方向にしか動かなくなる。互いに作用する事ができなくて、魔力を持つもの全てがその効果を成せないの」

「!そうか回復薬もそれを作る過程で魔力を注いでしまっているために使えないのだね」


 良くできました、という風に白聖女が微笑む。

 若干イラッとするけどそれが吹き飛ぶレベルでこの発見はとんでもない。


「じゃあ、商品の説明をしていくわね。この水色の液体が魔力を含んでいないHP回復薬ね。こっちの桃色の液体がMP回復薬。この橙色の液体が傷回復薬よ。ただ、これは下級程度の効果しか再現できなかったわ。この回復珠は傷回復薬と一緒に使って。包帯は止血薬を染み込ませたわ。これも魔力を含んでないわ」

「……とんでもない物を持ってきたのだね」

「大変だったのよ?私普段魔道具を創っているから魔力を使わないで物を創るのは久し振りだったし」

「こっちの魔道具は?」

「それはおまけ。量産する気はないわ。魔術具だもの」

「はぁ!?あ、いや普通に魔術具を創れるんだっけ?白聖女は……」


 魔術具ってのは神話級に高価な物なんだけどね……。

 今現存する魔術具は国が所有する魔剣に、古代文明の遺跡から発掘された遥か過去の物。そして白聖女が創ったもの。

 といっても一般には魔道具として公表してるけどね。


「これ、ダンジョン以前の空間その物に干渉して擬似的なセーフエリアを作り出すものなのよね」

「バカ売れするからね?それ」

「だからおまけよ」

「こんな爆弾みたいなものどうすれば良いのだね……」


 いっそ黒騎士に押し付けてやろうか……。


「ん!?これは使い捨てなのだよね!?」


 執務用の机にべたりと倒れこんでうだうだしていた私は、恐ろしい事に気付いてがばりと顔をあげる。

 白聖女は何も言わずに笑っている。

 その様子に全てを察した私は思いっきり息を吸い


「何て物を創ったのだね~~!!」


全力で叫んだ。


「私も創ったときは一寸やっちゃったかしらと思ったわ」

「だったら何で封印しないのね!?繰り返し使えるセーフエリアを作れる魔術具?国が動くね!こんな物!!何て物を押し付けてくれたのね!!?」

「そこまで荒ぶらなくても……」

「荒ぶるね。絶対普通は荒ぶるね!

 あぁ~!もぅ黒騎士に押し付けてやる……」

「黒騎士?」

「今うちに黒騎士が来ているのだね」


 と言うか知り合いなのかね?

 一瞬見せた驚きの顔は年相応の少女だったね。


「会っていかないのね?」


 知り合いなら普通は会っていくものだろうし、そうじゃなくても黒騎士は良い客になると思うのだね。


「そうね──」




 白聖女はその後値段交渉などをして帰っていった。

 ギルドとしてはレシピの方が欲しいけどそこは向こうもしっかり判っていたのだね。

 購入の方はまぁまぁ安いけど、レシピは馬鹿みたいに高かったね。

 当然と言えば当然で、妥当な値段ではあるけれど。


 白聖女が最初に渡した麻袋を弄びながらポツリと呟く。


「……届けに行ってやるとするか、なのだね」

次回の投稿は2/18の予定です

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