8話 とうぞくがあらわれた!
スバル視点です
馬をただただ駆けさせる。
プログレス市までは後10分程という位のところを今走っている。
逸る気持ちが押さえられなくて急いでるんじゃない。
げ、矢が飛んできた。
はい、矢。
攻撃されてます、現在。
ファンクラブメンバーから隠れてプログレス市に向かっている道中、盗賊に追われています。
……どうしてこうなったんだろう?
ダンジョン都市から馬で道中をかけること4時間程。
馬を休憩させるためにも、僕は馬を降りて並列して歩いて水場を探していた。
休まず強行する事もできるけど、馬への負担が半端ないからね。
あ、小川があった。
じゃあここで小休憩しよう。
馬に水を飲ませ、僕も軽く汗を拭いておく。
あースッキリした。
───イヤァァァアアア!!
…………。
さて、出発しようか。
女性の悲鳴?
何それそんな物なんて聞こえなかった。
……明らかに面倒事が待ち構えている。
関わりたくない。
さっさと馬に跨がり手綱を握る。
シェイルに早く会いたいから、余計な時間なんて食ってられないんだよね。
「はぁっ」
1つ溜め息をついて馬を走らせる。
さっきの悲鳴の方向に。
こんな状況で、ここにいるのがシェイルだったら、さっさと助けに行ってるだろうからね。
川から数十m。
森の若干拓けた所。
今にも殺されそうになっている女性が2人。
貴族の子女とメイドさんかな。
すぐに殺すって事は狙いは金品だけの、切羽詰まっている農民堕ちタイプの盗賊かぁ。
多分ダンジョン都市のクエストボードにあったあの盗賊なんだろうなぁ。
会わないようにしてたのに……。
「さっさと行って!」
馬から飛び蹴りをかまして貴族さんの安全を確保してから、メイドさんにそう言う。
メイドさんは慌てて貴族さんを回収して森の方に消えていった。
農民堕ちの盗賊は、統率なんててんでないから簡単に討伐されるはずなのに、クエストにまでなるって事は、相当優れたリーダーがいる。
もしくは……。
周囲を見渡して敵の数を探る。
もしくは、数がバカみたいに多いか。
確実に後者だよね、コレ。
あ~、やっぱり面倒事だった。
「あ~、金品全部あげるから見逃すってのはダメ?」
「目撃者は殺す」
「だよね」
交渉もダメでした~。
て、そもそもここにある金品は僕のじゃないけどね。
じゃあ、ここからプログレス市にどうやって向かうか考えるか。
1.包囲を突破する
2.馬に乗って森を突っ切る
3.街道に出る
4.プログレス市までダッシュ
うん、凄い簡単。
盗賊は討伐しないのかって?
数が多くて面倒だからイヤ。
じゃあいざ実践。
貴族さんとメイドさんが逃げていった反対方向に向かって走る。
鉢合わせしちゃ危険だもんね。
2、3人に当て身をくらわせて、包囲を楽々突破。
馬に飛び乗って茂みの向こうに駆ける。
そのまま駆け続けて今。
後ろから、同じく馬に乗って追いかけ、攻撃してくる盗賊達。
ウザイ、迷惑。
にしても参ったな。
馬の休憩が中途半端だったからか、速度があんまり出てない。
このままだと追い付かれるな。
仕方ない、一旦止まって迎撃するか。
手綱を引いて馬のスピードを緩める。
向こうはそのまま、さらにスピードを上げて駆けてくる。
先頭の馬が真後ろに来た瞬間、後ろに飛んで刀を振る。
勿論鞘をつけたまま。
彼らも盗賊にならざるを得ない何らかの事情があった筈だしね。
まぁ騎士団に引き渡したらどのみち死刑か犯罪奴隷行きだけど。
鞘が首にクリーンヒットした盗賊が転がり落ちた馬の上に立つ。
右手の盗賊を鞍から叩き落とし、遠心力で体を捻り、手首を返して左手の盗賊も叩き落とす。
序でに馬に鞭を打って走らせ、彼らの足を奪う。
落ちた盗賊達は、鞘で意識を刈り取られるか、地面に強かに身を打ち、その衝撃で気絶する。
馬は四方八方に散っていき、その内の何頭かは後続の連中に突っ込んでいって足止めの役割をしている。
4人、5人と気絶させ、10人程倒したとき。
何かが飛んできたような感じがした。
何?
何か、見られてる?
周囲に人影なんてない。
まるで、遠くから僕を見ているような感覚。
遠く、視る?
あ、もしかしてっ。
自分の馬に跨がり直し、残りの道を駆ける。
木でまだ何も見えないけど、ここからプログレス市までは後500m程のはず。
すぐ答え合わせができる!
森が拓け始め、町の壁が見えてくる。
門の前には数人の人影。
衛兵と、後1人。
騎士の制服を着ず、代わりに白いローブを羽織っている少女。
フードは被っておらず、長く伸びた髪が、夕日を浴びて白く映える。
あぁ、やっぱり。
あ、大きな魔術を準備してるのかな。
魔法陣は見えないけど、魔力感知で魔力の規則的な流れを感じる。
じゃあ後ろはお任せしよう。
馬の速度を上げて、白聖女の横を駆け抜ける。
直後、背後で大きな魔術が展開されたのを感じる。
その存在感のような物は、前よりも強くなってる。
手綱を引いて馬首を右に向け、止めさせる。
馬の足が止まるよりも先に、その鞍から飛び降りて、魔術から逃れた残党の方に駆ける。
右手から2人。
2人の間を走り抜け、すれ違い様に鞘つき刀を振る。
2人とも沈んだのを確認して顔をあげると、もう1人の盗賊も氷に捕まっている。
僕はホッと息をつき。
「「「きゃぁぁああ!!」」」
「スバル様ぁ!」
「ゲ!?」
何でここにいるの!?
確かに置いてきたのに。
嘘でしょう?
僕の苦労は?
あぁ、何か疲れがどっときた。
もう何も考えたくない。
取り敢えず……。
「久し振り、シェイル」
漸く会えたね。
2年前に別れた時の幼さは無く、背は伸び、絶世の美女となり始めたシェイルを見下ろす。
「久しぶりね、スバル」
白い髪の聖女は笑ってそう答えてくれた。
次回の投稿は1/1の予定です




