7話 再会
特殊能力[魔眼]から[真眼]を開く。
自分で見る事はできないけど、感覚で右瞳の色が変わったのを感じる。
[真眼]の中の、五感強化に準じる力を起動させる。
そして、音だけに集中する。
森へと続く道、風の音、葉の擦れる音、鳥の羽ばたく音、動物が草を踏む音、土を踏みしめる音!
ここから距離500m、街道上!
特定した場所に千里眼をとばす。
入ってきた情報は、騎乗した人影。
着崩れ、ボロボロになった服を着て、必死に馬を駆る複数人の男達。
手に持つのは短剣、棍棒──やはり例の盗賊達のようね。
剣戟の音の原因の人物は──。
その人物を千里眼で視認した私は、くすりと笑う。
「やっぱり引っかけてきたわね」
「何をぉ?」
「盗賊よ、ギルマス。衛兵達を呼んできて。捜索・回収チームと捕縛チームに分けておいて」
「了解だよぉ」
千里眼をとばした時に確認したのは、約20人程度の盗賊達。
確か盗賊団の規模は40人弱だった筈だから、半分くらいになっているわね。
目撃情報があった場所との距離を含めて考えると、身体強化できる人たちがかなり必要ね。
日がもうすぐ暮れるし、日没までに全員回収できるといいわね。
取り敢えず、こちらに来てる残党の回収を先にしましょうか。
被害を出さないように、門の外に出る。
待つこと数分。
千里眼越しで確認した、黒い着物の上から黒マントを羽織った、黒髪黒瞳の、全身黒尽くめの冒険者が肉眼で捉えられる距離に現れた。
向こうもこちらに気付いたのか、馬の速度が上がる。
その後ろに続く盗賊達。
大方、目撃者の冒険者、黒騎士を殺そうとしたのだろうけど逃げられて、追いかけている内にプログレス市に接近してしまったのでしょうね。
彼に見られたのは運が悪かったとしか言いようがないわね。
ご愁傷さま。
同情はしないけど。
数は18人ね。
魔術の構築を静かに始めると、私の周囲に冷気が漂いだし、空気が白くなっていく。
魔法陣を隠すことができても、こういう風に術者の所に魔力が集まってしまうのは改善が必要ね。
黒騎士が隣を通りすぎると同時に、用意しておいた魔術を起動させる。
「氷華園」
氷華、氷の華を咲かせる魔術の広範囲verの魔術よ。
この魔術は一瞬で対象を絶命させる事もできれば、無傷で捕らえる事もできる、優れものだから重宝してるわ。
この魔術1つで一気に捕らえたのは15人。
逃がしたのは3人。
左から1人、右から2人。
左手を開いて正面に突き出し、魔術、氷弾を射つ。
これくらいは無詠唱でできるようになったわ。
この2年間、技術力向上のための研究をしていたけど、魔術の研究もしていたのよ。
スバルが強くなろうと努力しているのに、私が何にもしないのは一寸嫌だったのよね。
研究の片手間に冒険者ギルドに顔を出して、滞りそうな依頼をこなしたり、研究室にある実験室で新しい魔法の構築をしたり、今回みたいに無詠唱とかの戦闘に際して無駄を省いたり、隠密性を高める訓練をしたりしていたわ。
他にも魔術の同時展開とか、恒続的な魔術のMP消費緩和、魔術の術式、魔法陣の簡略化の研究もしたわ。
お陰で魔術の腕は相当上がったと思うわ。
その魔術と同時に右を黒騎士が駆け抜けていく。
一閃。
それだけで、右の2人も片付いたわ。
黒騎士は鞘がついたままの刀を腰に戻して、盗賊達を引きずってこちらに向かってくる。
回収作業を始めさせましょうか。
[真眼]で距離の広がった千里眼を行使して森の中を探る。
街道上に何人かの気絶した盗賊達。
う、3桁を越える盗賊達だったのね。
森の若干拓けたところに数十人の盗賊達がいたわ。
森の奥の方に逃走している影も。
全員の捕縛は難しそうね。
残党の警戒をさせましょう。
「「「きゃぁぁああ!!」」」
「スバル様ぁ!」
「ゲ!?」
「見つけたぞシェイル!」
「あーあ」
森の様子を見ていると突然、後方、門の方から女性の黄色い歓声が響き渡る。
名前を呼ばれた黒騎士、スバルがひきつった顔をする。
新聞を読んだ限り、偽の情報で彼女達を撒こうとしていたようだったのだけど、失敗したのね。
と言うか私ものんびりしていられないわ。
折角こっそり出発しようとしてたのにルーカス達に見つかっちゃったわ。
やっぱりこうなったわね。
静かに出発するのは難しそう。
諦めた様子で、飛び降りた馬を回収した黒騎士と向かい合う。
「久し振り、シェイル」
「久しぶりね、スバル」
平均2500文字目指すと言った次の話が2000文字という……
すみません、次こそは普通の量です
次回の投稿は正月スペシャルで12/31の予定です




