54話 対話
領主さん視点です
じゃ、今度こそ行ってくるぜ。と言ってケンゴがこの部屋から出ていきます。
……その後に続いてスバルが半ば睨むように。
すっかりこの家の者と同じような反応をするようになりましたね。
同じ事を思っていたのか、ミワ嬢も呆れた顔をしておられます。
ただ、迷惑と思っているわけではないんでしょうね。
若干嬉しそうにしているのを感じます。
「さて、人払いはしたし、込み入った話の方をしましょうか」
「そうですね」
「じゃあ、そちらの方からの質問に先に答えるわ。その後、こちらね」
「はい」
当事者同士しかできない話。
まぁ、当事者の1人のスバルはいませんが。
これはこってり絞られそうですね。
「では、多くの者も抱いている疑問ですが、何故私達を蘇生させたのですか?」
「理由は大きく分けて2つあるわ。1つ。今後の処理をしていく上で、妖精の守人の手が必要だったから。どうせこの街を破壊し尽くしたでしょう?私とおばあちゃんで殆ど直せるけど、精神面や、活気の事を考えれば、人手は欲しいわ」
ごもっともですね。
彼等も今後こういう風に人々と接触できるのは良い経験になるでしょう。
私の側にずっといたため、偏った知識しかついてませんからね。
「2つ。私が蘇生させたかったから。これでも私は善良な日本人なのよ」
「ニホンジン、ですか。確か異世界人の何人かは」
「ええ。まぁ、こちらの都合上、日本人の魂は世界を渡りやすいわ。平和すぎる世界で生きてきた日本人は、良くも悪くも影響はゼロになるのよ。だから貴方の知る異世界人には日本人が多くいるわ。
……話を戻しましょうか。さっきの話は忘れて」
ミワ嬢の都合上。
明らかに私も知り得ない、世界の根本に近い都合ですね。
全く。
2ヶ月ほど前の私は馬鹿ですね。
このような存在を、私個人の手中に納められるわけがないですからね。
「話が大きすぎますね。私は何も聞きませんでしたよ。
日本人が平和的な感覚の持ち主で、それ故簡単に人が死ぬのを良しとしない。その感覚は貴女も同じ。そういう事ですね」
「そうよ。単純に、生きて欲しい。私の願いであり、貴方の小飼の願いであり、ここの住民達の願いでもあるわ。
忘れないで」
「はい」
忘れませんよ。
長い時を1人で生きていれば、自己の存在意義など不明瞭なものになってしまう。
私は終わりを探していました。
でも、もう終わりは求めません。
別れを乗り越えてでも、人と接する方が、人間的感受性を失わなくてすみますからね。
「じゃあこちらからの質問ね。……どうやって異世界人を見つけたの?」
「探さずとも、彼らはこの街に現れます。然程間を置かず」
「となると門が──」
異世界人、主に転生者は、この街に生まれたり、最終的にこの街にやって来る割合が多いです。
転移者の場合は、中央門の先に広がる平原に転移してくる事が多いそうです。
ケンゴもそうでしたからね。
「じゃあ次は──」
数十分後、一般人には聞かせられない機密事項が盛りだくさんの質疑応答が終わりました。
どうやら随分と異世界人の動向を気にしてるみたいですね。
「ありがとう。大分把握できたわ」
「お役に立てて光栄ですよ」
「じゃあ、あとはこの街、任せたわ」
「はい」
失礼しますと退室する。
扉から出入りできるというのはやはり落ち着きますね。
ペコリとお辞儀をして扉を閉める。
廊下の方を振り返り、反対側の壁に寄りかかって立つスバルと目が合う。
「やあ、こっちも良いよね?」
それ、疑問形ですけど強制ですよね。
構いませんが。
「ここで立ち話をするのもなんだし、場所変えよっか」
「どちらにしますか?」
「僕の部屋で良いでしょ」
「僕の……」
「いや、もう馴染んだだけで客室だからね!」
「本当にスバルの、にならなくて残念でしたね」
「それは本当に……違う!違わないけど違う!
全く……さすがコント集団の頂点」
コント集団。
十中八九私の小飼の事ですね。
しかし、コントですか。
何か可笑しい事でもしてたのでしょうか。
「その顔……無自覚か」
呆れ顔のスバル。
良くわかりませんが、今後気をつけるとしましょうか。
取り敢えず場所を移します。
ミワ嬢は事務的な物に近い質問でしたが、スバルのは違うでしょう。
しっかり覚悟をしておくべきでしょう。
「僕はね、毒気が抜かれた気分なだけで、万事を許せる程やられたことを消化はできてないんだ」
客し……スバルの部屋にあるソファに、向かい合って腰掛けながら、対話し始める。
「それが普通でしょうね。寧ろこんな形の今後が用意されて、私の方が変な気分ですよ」
紛れもない私の本心です。
人を殺しかけておきながら、下された罰は死刑でも残酷刑でもなく、3年の幽閉。
その後は解放され、領主の責務を全うする。
驚くほど軽い処罰です。
「シェイルが許したんだ。死んだ人達も今は生きている。僕が怒る理由はない。
……それでも、胸の中で何かが燻ってて気持ち悪いんだ」
「理由はあるでしょう?命を狙われるというのは、歴戦の人であっても精神を削り取られますから。自覚がなくても相当追い詰められているのではないですか?」
「あ~、そうかもね」
深くソファに腰掛け、天井を見上げるスバル。
本人も何を言いたいかは決められていないんでしょうね。
「何か、燻ってる。でも、その何かが何なのかもわかんないんだ」
「……」
こういう時はどういう風に話しかければ良いんでしょうか。
下手に話しかけたら話が逸れそうですね。
「あぁ~、もう良くわかんない。取り敢えず何か言わせて」
「はぁ」
スバルはスゥと息を吸うと、怒濤の勢いで言葉を私にぶつけ始めました。
「大体さ、何なの?長い時を一人ぼっちて。そんなに辛いんだったら人と関わるの止めちゃえば良いじゃん。そこで止めないんだから馬鹿だよね!
母がいなくなって寂しい?そりゃ唯一の肉親だもんね。だったら探せばよかったじゃん!
人が感じるものがわからない?だから人で試す?違うでしょ!他の人に聞かなきゃ知らない物も理解できない物もわかるわけないじゃん!自分でやんなきゃダメでしょ!
暇だったので小飼集めてみました?暇だったら偽善的な事でもしときゃよかったじゃん!
自分が領主に戻って人を治められるのかって?本っ当シェイルにそっくりだね。君が人を苦しめた分、君に救われた人もいるんだよ!」
「いや待ってください。何でその事を」
「スッゴい解りやすい顔してる!」
「!!?
……貴方も良くミワ嬢に似ていますよ」
「え、本当!──じゃない!
あ~、続けるよ?
人と交流持っても置いて逝かれるだけ?じゃあ長寿種の知り合い作れば良かったじゃん!
自分が小飼の人を縛り続けたから、解放させる事ができて良かったて?何アホな事考えてるの?あのコント集団達に言ってみなよ。ショックで阿鼻叫喚になるよ!
あの人達はトップがルトだからずっと側にいたんだよ!」
「!」
そのような事、考えたこともありませんでした。
彼らが、そのように考えていたなんて。
は、と小さく笑う。
「これでは3年後に彼らに会えないのが寂しくなってしまいますね」
「自らの接触を禁じる。シェイルはどう考えても簡単な抜け道を残してるよ」
「それは……妖精の守人たちから接触されれば罰には触れない、という事ですか」
「そ、シェイルだからね。抜け道を通った事に関して何か言う事はないと思うよ」
ソファから立ち上がり、体を伸ばす。
「では、彼らとしっかり別れをしてくる事にしますよ」
長い時を生きていて、ここまでスッキリしたのは始めてかもしれませんね。
これから、どのようにして過ごしていくか、牢の中でじっくり考える事にしますか。
「え?何言ってるの?まだ返すわけないじゃん。言いたい事はまだまだあるよ」
取り敢えず、これからの事ではなく今どうすればこの状態を切り抜けられるか考えますか……。
私が書くとこういう話になります
領主さんは悪い人じゃないです(2度目)
というか悪い人だって見方を変えれば善い人になるんですよね
次話2章最終話です




