53話 交流
暫く呆然としていた領主さんだったけど、復帰して笑い出す。
壊れた?
「やはり貴女は素晴らしいですね。このような罰を用意できるなんて。……感謝をします。最後の最後本当に踏み外してはいけない最後のところで踏み止まらせてくださり、本当にありがとうございました」
「人道的な道はとっくに踏み外してたんじゃないの?」
「これは手厳しい」
ジロリ、と僕は領主さんを睨む。
罪に対する罰と称して、確実にその人の心が壊れる手段を嬉々として選んでたそうじゃん。
そんな領主さんにまさかのシェイルからの援護射撃。
「良いんじゃないの?スバル。止まる、という事ができたんだから」
「ステラ嬢ちゃんの懐の広さには感謝だわ~。極刑になってたっておかしかねぇんだからな。ルトも感謝しろよ」
「君も感謝する側だからね」
呆れ顔でケンゴに突っ込む。
「もちで解ってるぜ、これから拝むか?」
「いや、流石に拝まなくていいよ……」
「罰に関して異論は殆どありません。ただ、1つだけ減刑を願って良いでしょうか」
「何かしら?」
「冒険者としての活動を暫く休止する事を伝える余裕と、牢から出た後もそれを再開する許可をいただきたいです」
「冒険者……」
へぇ、領主さん冒険者もやってるんだ。
長い年月生きてるから登録してても可笑しくないか。
ところでシェイルが何か考え込んでるんだけど。
可愛い。
じゃなくてどうしたんだろう。
「ルト……メカルト・マール。ルト?冒険者……。え……いやでも……あれ?でもあの時……」
何かぐるぐる考えてる。
「もしかして、なのだけど……神出鬼没のSランク冒険者のルト?だったりするかしら?」
「はい、私ですよ」
「やっぱり……」
「ん?その名前聞いた事あるよ。確か最近はケンゴって言う魔剣使いとパーティ組……ケンゴ?」
「おう、それはオレ」
「マージーか~」
意外な所に先輩がいた。
「と言うかシェイル、知り合い?」
「会った事があるのよ。そう言えば鑑定をするのを忘れていたわ」
「鑑定するのを一時的に忘れさせるような魔道具を使っていたのですよ」
「へぇ、そんな魔道具もあるのね」
シェイルがちょっと嬉しそう。
むう。
……いや、シェイルが嬉しそうなのは、謎が解けてすっきりって事と、新しい魔道具の情報を得られたからって事なのはわかっているけどね。
やっぱり、むう。
「さて、では改めまして、この度は大変ご迷惑をお掛けしました。謝罪が遅れたことも含めて、深くお詫びいたします」
「どんな心境で、こんな事まで発展させたのか気になっていたし、理由が理由だから、今回は気にしなくていいわ」
「感謝します」
あ~、これで解決かな。
「いや~、万事か解決。思わぬ落とし所になったけど、良かった良かった。仲直りできてよかったなルト」
「あ~、確かに。最初は、領主さん許せるわけない!っていう風な心境だったのに」
「それは彼らの特徴が為せる技じゃないかしら?」
「あいつらほっとけばコント集団になるからな」
「その筆頭格が何を言う」
「ケンゴは敢えて空気を読まなかったりしますからね」
ケンゴの言葉を皮切りに、敵対してた人たちが、普通に話し出す。
これがケンゴの特徴?なんだろうね。
「あぁ、そう言えば、牢に入ったら貴族位は剥奪されるわね。何と呼べば良いのかしら」
「ステラ嬢ちゃんもルトって呼ぶか?」
「その手があったわね」
「む、じゃあ僕も」
「スバル……お前心狭いな」
何とでも言え。
「ん?そういやルトもそうだけど、ステラ嬢ちゃんも貴族じゃなくなるんだよな」
……そうだね。
実は、シェイルはリコさんと、もう2度と蘇生はしない。万が一してしまったら、貴族位を返上してこの街を出ていくっていう約束をしてたんだ。
シェイルの前に山積みになっている書類の中には、その約束を遂行するための資料とかもある。
「んじゃあ、シェイル嬢ちゃ……わかった。わかったからスバル。止めるから睨むの止めれ」
「ミワで良いわ」
「それ、前世の名前か?」
「ええ」
「じゃ、ミワ嬢で」
「私もそう呼ぶことにしましょうか」
何か、互いの呼び名を変えるだけで親しくなったような気がする。
人との巡り合わせ、出会い、それでもって生まれる絆っていうのはこういう風な物なんだね。
人との出会いと繋がりには、良い物と悪い物がある。
コウキとの出会いや繋がりが、悪い物なんだとしたら、最初は嫌っていても、ルトやケンゴとの出会いは良い物なんだと思う。
人の感じ方なんて、接することで日々変わるものだもの。
シェイルへの想いは変わんないけどね!
「じゃ、館の方の後始末しに戻るわ」
「ちょっと持て、うん、待て。どこから出ていこうとしてる。せめて帰りくらいは正面から行け」
「ん?いいの?じゃお言葉に甘えて。あ、ついでに隣の奴等連れてくわ」
「あ、助かる」
「あいつ等引きずんないと帰んないだろうな。さてどうしてやろう」
「玄関までなら僕も引っ張るよ」
「お、サンキュー。じゃ、行こうぜルト」
「ん~、ちょっとルトは置いていってもらえないかしら、ケンゴ」
さあ邪魔も……隣の部屋にいる人達を玄関に運ぼう、とドアの方を向いたらシェイルからストップがかかった。
「あぁ、そういう事か。良いぜ、暫くミワ嬢に貸しとく」
ほら、行こうぜスバル。と言われて、渋々隣室にいく。
超特急で終わらせよう、うん、そうすべきだ。
スバル「くっ、幾ら2人で話すべき話だからといってシェイルと2人っきりにさせるなんて!」
ケンゴ「お前なぁ……。独占欲強すぎ」
スバル「良いじゃん。シェイル可愛い。シェイル最高。シェイル……」
ケンゴ「あー、はいはい」




