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神々の箱庭  作者: チャーリー フール
第2章 はじまり
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50話 さまよう

シェイル視点です

長文&鬱展開が来ます

苦手な方、ご注意を!

 暗い、湖の底にいるような感覚。

 上下も左右もわからない。


 ただ、重たい何かを感じる。

 それだけ。


 この感覚には覚えがあるわ。 魔力を限界まで放出、循環させて、生命力と一緒に魂が削れてしまっているあの時と、同じ。

 酷く体が重く感じるわね。


 静かに意識を閉じる。






 次に気付いた時、私は赤茶色の、レンガに似た材質でできた石畳に足をついていた。

 けれど、足の裏から伝わってくる感覚は酷く心許なくて、宙に浮いているような感じ。

 まるで夢────。


 肌がビリビリするような膨大な魔力。

 それには覚えがあった。


 あぁ、これは夢ではないわね。

 これは──私の記憶の中。


 そして、あの魔力の持ち主は──私。


 今見ているのは、7年前の事なのね。


 騒ぎの方に歩く。

 1人の少女が、自分より5、6歳年上に見える少女を抱いている。


 私の家で、4歳になったばかりの私が、1人の精霊と契約してしまった事で、私は力を制御できなくなってしまったの。


 暴走状態で偶然召喚したアンジェ。

 偶々来ていたおばあちゃん。

 父様と母様。


 4人がかりで何とか私の暴走を止めることができたわ。

 1人でもかけていたら、被害は何十倍にもなっていたでしょうね。


 私がこの時殺してしまったのは当時、私の側仕えになったばかりの、隣にいたセクル。

 意識をすぐ取り戻した私は、セクルの亡骸を見つけた。

 そして────


 幼い少女は、呼吸をしていない少女の体を抱きながら哭く。

 その少女の口は無意識に言葉を紡ぐ。

 転生神へ向けて詠う、祝詞のようなもの。


 禁術、完全蘇生。


 それは、禁術とはあるものの、制約が厳しく、転生神ラインキャラナ以外、行使不可能だったわ。

 ラインキャラナ──キャナとの契約で、転生の際に、私が転生神の系統の神となったため、行使の条件を満たす人物が2人になったの。


 その少女の祝福により、年長の少女は瞼を開き、対照に、幼い少女はその場に倒れ伏した。


 同時に、私のいる空間が、闇に飲まれていく。


 詠唱の段階で、私はそれが禁術の類いである事はわかっていたわ。

 それでも私は行使した。

 良心の呵責を無視して。


 自分勝手な願いのために、1つの生命を……冒涜したのも同然だったわ。











 暫くして、また暗闇になかに景色が浮かび上がる。

 薄暗い岩壁に、ランプの影が伸びる。


 ここは……王都の近くにあるダンジョンね。


 私の視界に入るのは、鎧を着た、少女とも女性とも言える美女と、傷だらけの少女。

 その2人の周囲には、生きも絶え絶えの冒険者たちが転がっている。


 全員生きている。

 それだけが、その少女を鎧の美女──戦乙女(ヴァルキリー)の前に立たせていた。


 少女は、回復魔術を何度も何度も、守っている仲間達にかける。

 でも、鎧の美女の攻撃一つですぐ瀕死になってしまう。

 大規模な結界を展開していれば、必ず何人かは死んでしまう。


 そんな時、鎧の美女は大分大人びてきた少女に言う。

 仲間を見捨てれば、お前は生きられる。


 私はそう言われた時、迷った。

 迷ってしまったのよ。


 一瞬の隙で私は致命傷を負い、地面に縫い付けられてしまったわ。


 何人かに魔術をかけるのを止めれば、攻撃に割くMPを用意できる。

 その分、その何人かは確実に死ぬ。

 でも、守りだけで、中々攻撃できていなかったが故に、迷ってしまったのよ。


 その少女は鎧の美女に嬲られ、痛め付けられる。

 自分を傷つけた罰だと。


 視覚が奪われる。

 聴覚が奪われる。


 腕の骨が折られる。

 足の骨が折られる。


 腹部を切られる。

 手足の腱を切られる。


 右手の小指から、薬指、中指と順々に骨を折られる。


 とてつもない激痛に、その少女の悲鳴が洞窟中に響く。

 光も、音もない。

 その冷たさが、感覚を鋭くさせ、一層伝わってくる痛みを上乗せさせていた。


 攻撃の嵐がふと止む。

 激痛に苦しんでいた少女が、自然回復した魔眼で鎧の美女を見上げると、そこには残酷な笑みを浮かべた鎧の少女が、とても良い事を思いついた、という風に嗤っていた。


 先程まで踏みつけていた足を少女から退け、別の方向へ歩き出す。


 体を起こし、自身の傷と、周囲の仲間を癒す。

 まだ、無事。

 少女はいたぶられている間もずっと、冒険者達に回復魔術をかけていた。


 少し息を吐いた少女は、鎧の美女が消えた方向から響いた悲鳴に肩を揺らす。

 聞き覚えのある女性の声。

 慌てて少女は走り出す。


 悲鳴の元にたどり着いた時、そこには何人かの血に濡れた死体と、先程の少女と同じように痛めつけられている女性がいた。


 その顔が良い、という鎧の美女の言葉に、自分を何重にも苦しめるためだけに、伝達係として後方にいたパーティーを傷付けた、という事を少女は察した。


 戦乙女(ヴァルキリー)は私の逆鱗に触れた。


 私はその後、天災の塊も同然に、暴走をした。

 たいした時間もかけず、戦乙女(ヴァルキリー)は討伐できたわ。


 でも、天災の近くにいて無事な怪我人がいるわけないわ。

 伝達係のパーティーは全滅していた。


 蘇生の力は持っていた。


 それでも、もう一度力を暴走させるのが怖くて、私は何もしなかった。


 私は、怒りで仲間を殺したのも同然だったわ。


 闇がまた来る。






 次は何でしょうね。

 そう思いながら闇を見つめる。


 ほんのちょっと過去を見ただけでとても疲れたわ。


 ……人を傷付けてばかりの私が、意識を覚醒させていいのかしら。


「────てね、シェ──。──待っ────ら」


 誰かの声が聞こえた気がした。

 しっかりと聞き取りたい声のような気がした。


 でも、その声は次の記憶の始まりにかき消されてしまったわ。






 次の記憶の始まりは、獣の咆哮。


 私が9歳の時に人造悪魔(キメラ)に遭遇した時の事ね。


 もう幼いとは言えない少女が、彼女の父や、その父の部下や仲間と見上げる程大きい獣。

 人造悪魔の中でも、人型をとらない、稀な個体。


 悪魔は魔族に属する。

 魔法にたけた種族、魔族。

 人造であっても本能だけでいきる獣と、魔法の真髄に近い種族の合わさったその獣は、呼吸するがごとく、極大の範囲魔法を撃った。


 少女は果敢にも前に出て、その魔法を全て打ち消す。

 その隙に、仲間たちが獣に斬りかかる。

 傷は浅い。

 すぐ修復される。

 魔法が放たれる。

 打ち消される。

 斬りつける。

 …………。


 同じサイクルが続く。


 自分の道を塞ぐことに苛立ちを覚えた獣が、魔法を乱発する。

 打ち消せない。

 クレーターが幾つもできる。

 血が舞う。


 少女が魔術を打ち返す。

 獣が怯む。

 少女の父が深い傷をつける。


 互いに主導権を奪い合いながら、戦闘は続く。

 回復に気を回した少女が狙われる。


 当然ね。

 本能で生きる獣でもあるからこそ、自分と同程度の威力の魔術を扱える存在を放置しておくはずがないわ。


 その少女は1人の冒険者にかばわれた。

 その冒険者は一瞬で絶命した。


 その少女は、また、暴走した。


 理性が完全に飛ぶのを恐れて、私は4歳の時からずっと〈神力解放〉を封印していたわ。

 それを使ったの。


 魔術を使い、神力を操り、ボロボロになりながらも勝利を納めた。


 ギリギリまで獣を抑えていた冒険者が倒れる。

 少女は回復魔術を使う。

 間に合う。


 ……けど、その周りには3桁を軽く越える屍が転がっていた。


 神力を解放している状態であれば、あの禁術が使える。

 けれど、私はそれを使わなかったわ。


 これ以上非人道的な事をしてはいけない。

 人数が多い。

 時間が経ちすぎている。

 禁術だから。


 理由をつけて、人の生命の重さから──私は逃げたのだった。



 また、視界が闇色に染まった。











 それから何度も過去を行ったり来たりして、その度に罪を認識したわ。


 盗賊や、警備団の人たちを救えなかった事。

 奴隷の子達を救えなかった事。


 今回だって、蘇生をしてしまったんだもの。

 もう二度としないと決めていたのに。


 私はこんなにも汚れているのね。

 こんなのを思い出して、父様や母様、セクルやエル、おばあちゃんや……スバルと、一体どうやって顔を合わせればいいのかしら。

 ……もう、目を覚まさない方が良いのかしら。


「早く起きてね、シェイル。僕は待っているから」


 あの時の……。

 やっぱりスバルの声だったのね。




 私も起きたいよ。

 スバルに逢いたいよ……。


 ねぇ、もう、どうすれば良いの?




 そうして、意識が途切れる。
















 瞳を開く。

 淡い光が目に入ってくる。

 久しぶりに感じる眩しさに、思わず目を瞑る。

 再び目を開くと、少しずつ焦点があっていく。


 木の枠に、硝子をはめた窓から、太陽の光が入ってきている。


 知っている、天井。

 ここは、現実の、私の部屋。

 戻ってきてしまったのね。


 …………。

 あぁ、起きたのなら、リコさんとの約束を果たさなきゃ。


 そう思い、体に力をいれる。

 長い間寝ていたのかしら?

 体に全然力が入らないわ。

 四苦八苦しながら、上体を起こす。


 死者の蘇生なんてものをしてしまったのだから、スバルとはもう会わない方が良いのかしら、人の生命を軽んじる私とは。



 ふと、右手に温もりを感じる。

 不思議に思って視線をそちらに向ける。


 黒髪が目に入った。


 その黒髪が揺れ、スバルが、顔をあげる。


「おはよう」

「……」


 会わないように、と考えていた矢先のエンカウントに思わず固まってしまう。


「当主さんとエディ婆に大体の事は聞いたよ」

「っ」


 全部知られている、という事に過剰に肩が揺れてしまうのがわかる。

 じっとこちらを見つめていたスバルが、小さく息をつく。


「シェイル」

「むに!?」


 頬を引っ張られる。

 何?

 一体何!?


 慌てて頬を押さえる私を見て、スバルが笑う。


「あのね、シェイルがどんなに人を傷つけても、それで苦しんでいるんだから、シェイルは悪い人、なんかじゃないんだよ。僕はね、シェイルに生きていて欲しい。前みたいに、真っ直ぐ前を向いて」


 ね、と笑いかけるスバル。


 優しく包まれてては暖かった。



 私は、目を覚まして、この世界で生きて良いのかしら。

 その疑問の、答え。

以上!シェイルの鬱展開でした

お気付きの方いるでしょう

シェイルも無自覚でスバルが好きです


さてさて、この2人、どうなるでしょう

(見え見えの展開か……)

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